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2022/10/13 国別対策

【城崎ぷちたび】EVモビリティとセルフガイドで滞在時間と回遊性の向上を実現!信じて挑戦し続けることが成功のカギ。第3回Attractive JAPAN Award アトラクティブジャパン大賞受賞・株式会社たびぞう様

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    第3回「Attractive JAPAN Award」(※1)の受賞事業者にお話しを伺い、地域での取り組みや事業・サービスにどのような想いを持って活動されていらっしゃるかを紹介するインタビューシリーズ。今回はその第1弾です。

    「アトラクティブジャパン大賞」を受賞した、株式会社たびぞう(以下、略称「たびぞう」)の代表、大林様にお話を伺いました。

    城崎温泉周辺の自然豊かな景色を見ながら、点在する観光スポットをEVモビリティを使うことでつなぎ、タッチポイントを創出することで、地域全体の滞在時間を増やすことにも成功している、たびぞう。目指す姿は「日常に感謝したくなるくらい感動する旅を提供すること」でした。
    (※1)第3回「Attractive JAPAN Award」についてはこちら

    【プロフィール】
    株式会社たびぞう 代表取締役 大林大悟氏
    兵庫県香美町出身。大阪の観光専門学校を卒業。20歳の時のバイク事故で2週間意識不明になったものの一命を取り止め、6カ月の入院生活を経て旅行会社に就職。「スーパー添乗員」の肩書きの元、「売上を上げる社員旅行」など型にはまらない旅を次々に提案する。1400本の企画を実績に、令和元年12月「株式会社たびぞう」を起業。コロナ禍により売上ゼロを経験する中、事業転換に成功した取り組みを地域に役立てるべく、経営課題解決のアドバイザーとしても全国を巡回している。県立但馬技術大学校での非常勤講師も勤める。  

    たびぞうの経営理念に込めた想いとは

    私は旅行会社で添乗員をしたあと、2019年12月に株式会社たびぞうを設立しました。掲げた経営理念は、「旅で感動。感謝。」です。

    この経営理念ができるきっかけとなった出来事は、20歳の時に起きたバイク事故。左足を負傷して入院生活をしていた時に、喫煙所で1人の男性と出会いました。私は彼に「こんな体では社会復帰できない」と、将来への不安な気持ちを話しました。すると彼は「命があるならまだマシやん。それがおまえの運命なんやから、まず現実を受け入れて、できることをやれよ。俺の前でそんなこと言うな。」と言ったのです。後日、彼は白血病にかかって余命宣告を受けていたことが分かり、しばらくして亡くなりました。

    私は、当たり前と思っていたことに感謝する気持ちを気づかせてくれたこの彼の言葉がずっと心に残っており、「当たり前の日常に“感謝”できるくらい感動できる旅行を作りたい」という想いを込めて、「旅で感動。感謝。」を理念に掲げようと決めました。

    地域にある感動に繋がる原石を商品へ
    顧客目線を大切にした品質管理の徹底

    旅行会社に勤めていたとき、田舎の旅行会社が残っていくには、仕入れて売るだけではなく、地域にある資源を使って商品をつくる「工場」のような役割を担わなければならないと考えました。地域に商品の原石となる魅力があることは揺るぎない事実なので、地元の人たちと信頼関係を築き、地域に密着した商品を提供することでお客様に喜んでもらえると確信し、そこから商品開発に目覚めました。今思えば、当時から常に誰を喜ばせるべきか、どうしたら満足度が上がるのかと言った顧客目線を大切にした品質管理をしていたように思います。

    私が商品を考える上で大事にしていることの一つに「5秒の思い出」というのがあります。旅行した後、振り返って思い出すシーンはぜいぜい5秒程度。つまり、五感で印象に残るシーンを提供しないと、心に残る商品にならないということです。例えば癒されるような音を聞かせたり、匂いを嗅いだり、何かアクションを体験することが大事です。

    城崎の魅力を探し周る中、何気ない田んぼの横の川のせせらぎ音に注目したチェックポイントが「ぽちょぽちょポイント」です。音を売りにする商品は他に聞いたことがなかったので、これは面白くなりそうだなと直感しました。

    商品ができると次に「感動する場所をどう伝えるか」が重要になります。そこで、感動する場所をまとめて落とし込んだ「ぷちたびマップ」を制作しました。

    お客様にとって、「参加して何が得られるのか?」という視点はとても大切です。例えば、「絆が深まりまくる」、「自然を体感しまくる」、といった「~まくる」をキーワードに設定したり、知らない土地を冒険するワクワク感を出すために、あえてマップの縮尺をバラバラにして迷わせて協力させたり、など様々なアイデアを出して何度もマップをバージョンアップさせていきました。

    商品を売るためは何が必要かを考えまくった「なんで売れないのかノート」

    今では、おかげさまで多くのお客様に好評をいただいてますが、最初から売れたわけではないんです。最初の3ヶ月はほとんどお客様が来られなかったので、思いつくことをメモし続けてる「なんで売れないのかノート」を作っていました。

    そこには、「雨が降っていたからだろうか?」や「レンタルバイク屋さんと間違えられているのかもしれない?」など、その日に起こった悲しいことを一言でメモしていきました。そして、それに1つづつ対応して、消していくという作業をずっとやっていました。

    そのあとに好評をいただいたツアーについても、どうプロモーションしていくかが次のステップになりました。最初は、SNSがいいのかOTAを活用するのがいいのかなど、全くわからず、手あたり次第に全部やってみたところ、最終的に「田んぼの真ん中でバイクに乗った笑顔のお客様の写真」が一番人を呼ぶことに気づきました。SNSでの発信時でも「城崎に来てね」とは言わずに「来てくれてありがとう」だけをSNSに上げ続け、あえて宣伝しないという戦略も功を奏しました。

    実は、いまだに大手OTAでの集客は少ないです。これは、売り手と作り手が別々になってしまうからではないかと思っています。私たちのように自分たちで発信&集客し、お客様に直接プレゼンすれば、すぐに反応がわかるので、実際のお客様の声を素早く反映させることができ、満足度を上げることができるのです。

    当たり前を捨てたことで生まれた「城崎ぷちたび」

    自分の良いと思う商品をつくるには、自分でやるしかないと起業したものの、3ヶ月でコロナ禍になり、売り上げの見通しが立たなくなりました。その間もいつもどうしたらいいツアーができるかばかり考えていました。

    そんな時にふと、これまでの観光を振り返っていたところ、「ガイドの話を意外に聞いていないお客様が多いな」ということを思いました。そして、エンターテイナー性を持ったガイドを育成するのはコストもかかり、事業をスタートさせるまでの時間もありませんでした。それであればガイドをあえて無くし、自分たちで周りたい場所を発見する方が好奇心をそそられるのではないか?というセルフガイドの発想が生まれたのです。

    このように、「いかに来訪者視点に立てるか」も大事にしています。プロダクトアウトになっていくのではなく、アイデアを出す中でもマーケットインで開拓していくことこそが大切だと考えています。あとは、これまでの既成概念をいかに崩せるかというのも自分の中で重要視しています。ガイド付きという当たり前を捨てたからこそ、「城崎ぷちたび」が生まれました。変な言い方ですが、コロナがあったからこそ、このような考えや発想を考えられたんだと思います。

    地元の方々と観光客とのコミュニケーションを生み出す「あいさつルール」

    城崎温泉の魅力は、子どもから年配の方まで、あいさつしたら絶対に「こんにちは」が返ってくるところです。これはつくろうとしてできるものではなく、地域全体が共存共栄をテーマに、観光客を受け入れようという精神性が背景にあります。きっかけになった出来事は、1925年に起きた北但馬地震。一度まちが焼け野原になったところから、町民一体となって復興したことにより、「まちに貢献する」という強い意識が生まれました。また、城崎温泉には、湯治場として栄えてきた1300年の歴史があり、心からお客様を歓迎している空気があります。城崎はみんなのもの、まちづくりと観光振興が両立された町だと思います。

    私は兵庫県・香美町出身なので城崎で活動を始めた当初はよそものでした。そこで、EVモビリティに乗って出会う人みんなにあいさつをしてまわることで繋がりを作っていきました。来訪者と地域の人が仲良くなることが私の理想なのですが、来てくださるお客様にも「あいさつすると気持ちがいいのでぜひやってみてください!」とお願いしています。

    最初地元の方の中に「変な乗り物に乗られると困る」と心配される方もいたようですが、不思議なもので、ぷちたびを利用する観光客の方が地元の人にあいさつをすると「あの子らええ子や」に変わり、その心配は解消されるようでした。農家の方にあいさつをすると、野菜をくれることまであるようで、観光客と地元の人との交流が生まれています。

    もう1つ挨拶をすることの利点として、EVモビリティは音が静かで気付きにくいため、ぶつからないよう、安全性・危険回避の意味もあり、「こんにちはー!後ろ通ります!」とあいさつしながら声をかけるようにしてもらうと、自然と軽やかな気持ちになりますし、それを横で見ている人も気持ちが良くなります。

    地域ブランディング研究所との出会いと伴走サポート

    吉田社長との出会いは5年前。前社に勤めていた時に城崎温泉まで来てくださり、私が企画したインバウンド向けのサイクリングツアーについて相談に乗ってくれたことがきっかけです。

    目の前のお客様を喜ばせながらも、事業として進化し続けないといけない中、地ブラの地域ソリューションサポートでは、リサーチから根拠を立てて状況を整理いただいたり、モニター企画からプロモーション販売まで広く協力いただき、客観的且つ、自分ごととして僕らの事業の成功に向けて常に伴走してもらえることにとても価値を感じています。

    弊社のサポートを担当してくださっている関西担当の駒込さんは、私が伝えたい事ややりたいことをいつも上手に整理&軌道修正してくれますし、自分の不得意な部分を補って伴走してくれるのでありがたく思っています。

    「アトラクティブジャパン大賞」受賞で得た、揺るぎない自信

    私たちは、これまで「お客様を喜ばせる」ことだけをやってきました。時には、上手くいかずに車のなかで悔し涙を流しながら帰路についたこともありました。しかし今回の受賞で、第三者の方から評価をいただいたことで、今までやってきたことが間違いではなかったというスタッフの自信にもつながりました。

    お客様を喜ばせようと一生懸命取り組んでいる事業者さんは全国にいて、結果が出ないこともたくさんあると思います。しかし、それでも信じてやり続けることがとても大切なのだと改めて感じました。

    今回の受賞を機に、多くの方から評価をいただき、大きな功績となりました。地域ブランディング研究の吉田社長からトロフィーや賞状を授与いただき、当日の表彰式では豊岡の副市長や観光協会様、旅館組合様など地域観光事業でお世話になっている方々もお集まりいただき、城崎のみなさんが来てくださり、思わずうれし涙が出そうになりました。

    たびぞうの目指すこれから

    地域の資源を商品化することは簡単なことではないないので、少しでも他の地域の企画もお手伝いできればと思い、今後はBtoBのサポートやコンサルティングを他の地域にしていきたいと考えています。

    現在は、伊勢ぷちたびの導入と販売に向けたプロジェクトをスタートしており九州、沖縄、関東地域への展開を考えています。また、その他にもインバウンドに向けた商品開発やガイドが遠隔からぷちたびをサポートする「ガイドシェアリングサービス」という新しい取り組みも行っていきたいと考えています。

    取材を終えて

    アトラクティブジャパン大賞を受賞した、たびぞう様が地域全体の滞在時間を増やし、回遊性拡大や関係人口の増加を実現した背景には、顧客目線を大切にし、常に試行錯誤してきた地道な努力がありました。また、コロナ禍においても自分たちの取り組みを信じて挑戦し続け、新たな道を切り開いていく姿勢は非常に印象的でした。とにかく人を喜ばせたいという熱い信念を持ち続けた行動が大賞受賞につながったのだと思います。

    排ガスを出さず、音も静かなEVモビリティを活用したサステナブルなツアーは、観光業界で注目度が高くなっています。今後は、城崎温泉にとどまらず他地域においても、それぞれの地域にある資源を使って、インバウンド回復を見据えた新たな商品開発に取り組まれるとのことで、これからのたびぞう様の活躍に期待が高まります。


    今回のインタビューで紹介をした「サステナブルなEVトゥクトゥクで天然記念物コウノトリ×玄武洞のキセキを巡る 、城崎ぷちたび」の体験ツアーはこちら

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