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2022/10/28 国別対策

長寿の里・大宜味村の人と自然、空き家を生かした民泊で、地域の独自性を掘り起こす。第3回Attractive JAPAN Award 地域アイデンティティ賞受賞・NPO法人おおぎみまるごとツーリズム協会様

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    第3回「Attractive JAPAN Award」(※1)の受賞事業者にお話しを伺い、地域での取り組みや事業・サービスにどのような想いを持って活動されていらっしゃるかを紹介するインタビューシリーズ。今回はその第2弾です。

    「地域アイデンティティ賞」を受賞した、NPO法人おおぎみまるごとツーリズム協会の代表、宮城様にお話を伺いました。

    世界自然遺産にも認定された大宜味村で地域の人々とふれあう民泊事業に取り組まれている、おおぎみまるごとツーリズム協会。目指す姿は、「地域の魅力や独自性を追求し、サステナブルなツアーを提供する」ことでした。

    1)第3回「Attractive JAPAN Award」についてはこちら

    【団体概要】
    NPO法人おおぎみまるごとツーリズム協会 
    「健康長寿のいきいき輝く文化の村」を村の将来像として基本理念に掲げ、2010年に設立。地域の活性化と発展を目標に地域間交流や沖縄県内・外の都市や農村漁村と相互の連携・交流・民泊体験等を実施している。地元住民とのふれあい、大宜味村の自然の美しさを伝えるプログラムを提供する。

    空き部屋の利活用で教育旅行民泊事業へ

    おおぎみまるごとツーリズム協会は「健康長寿のいきいき輝く文化の村」を村の将来像として基本理念を掲げ、2010年にNPO法人として設立しました。前身である地域協議会の立ち上げからNPO法人の設立に至るまで、行政と一緒になって大宜味の自然や地域のアイデンティティは何か、また、それをどうやって観光に生かそうか、いろいろな専門家の意見を聞きながら考えました。

    大宜味村は、やはり高齢者が非常に多く、子どもたちも独立すると村外へ出てしまうことから家に空き部屋が出てしまいます。そこで、その空き部屋の利活用ができないかと考えて、教育旅行民泊を本格的にスタート。これを主幹事業としてモニターツアーなども行い、これまで取り組んできました。

    大宜味村は、沖縄本島にありますが中心地から遠く、田舎のイメージを持たれていることが多いです。お客様に来てもらうにはどのように魅力をアピールすればいいかを考えて、大宜味村だけではなく、国頭村と東村のやんばる3村の行政と民間が一体となって地域の活性化に取り組みました。おかげで、今では関西や関東から数十校の中高生が来てくれています。

    大宜味村の地域特性がわかる「4つのキーワード」

    大宜味村には4つのキーワードがあります。
    まず1つ目は「長寿の里」。世界5大長寿地域(ブルーゾーン)の一つとされています。代々受け継がれてきた食文化は非常に独自性があり長寿の秘訣となっていて、外国人観光客などもそれを目当てに来てくれます。

    2つ目は、特産品でもあるシークヮーサーというグリーンの、酸っぱい柑橘です。沖縄では在来柑橘として昔から親しまれています。肝機能の強化や認知機能の改善など、いろんな健康効果があるということで一躍有名になりました。今では二次製品もどんどん製造販売されて、広く発信しています。

    3つ目は、「ぶながや」です。沖縄ではキジムナーという精霊(妖怪)が有名ですが、ぶながやはこの村に伝わる平和と自然を愛する精霊です。髪と体が赤く、子どものような姿をしていて、森に住んでいるけれど、たまに里でいたずらしに降りてくるという伝承があります。この妖怪を通じて村おこしをしたり、自然と平和の大切さを子どもたちに伝えています。

    4つ目は、国の重要無形文化財である「芭蕉布織」です。300年以上の歴史がある沖縄の織物です。バナナの仲間の糸芭蕉という繊維を使います。糸芭蕉は3年ぐらいかけてやっと採集でき、1本の糸芭蕉からとれる繊維はわずかです。加えて、窯で焼いたり色を付けたりと23の製造工程があり、ゆっくり時間をかけてつくり上げていく織物です。非常に軽くて肌ざわりがさらりとした織物で、高温多湿の沖縄では欠かせません。これを長年研究され、保存してきた染織家の故・平良敏子さんは人間国宝に選ばれています。

    やんばる地域は世界自然遺産になりましたが、大宜味村は山、川、海、里、滝があり自然が豊かで魅力的な場所なんです。文化や歴史、食は上手く発信できていると思うのですが、まだ自然を活かしきれていないと気づきました。民泊で食文化、歴史、人との出会いをしっかりと伝えると同時に、自然を活かした体験を提供できれば、もっといいプログラムになると思っています。

    大宜味の魅力をまるごと体感できるプログラムへ

    教育旅行民泊は人との触れ合い、農業、自然などの体験の中で学ぶことが一つの大きな目的です。ただ、個人の旅行者も誘致していくにはそれだけでは物足りないと思うところもあって、もっと地域の方々と触れ合う時間や、新しくて革新的なプログラムが必要だと考えました。

    おおぎみまるごとツーリズムという名前の通り、さまざまな方に、大宜味をまるごと体感してもらいたいという想いがあります。そんな想いを込めて、「よんな〜大宜味」の商品開発を行いました。

    「よんな〜」とは「ゆっくり・のんびり」という意味です。商品を作るにあたり、地域にお金が落とせる仕組みとして、体験・滞在・交流を全てセットにした体験にして、お客様には大宜味をまるごとゆっくり体感してもらえるような工夫を盛り込んだプログラム作りを意識しました。

    コロナを機に気づくことができた新たな可能性

    コロナ禍になって約3年、一番危惧したのが受け入れ民家さんが減ったことです。サステナブルに事業をいかに継続していくかが考えるべきポイントだと思いました。

    いろいろな支援をいただきながら、何とか継続している状況ではありますが、コロナ禍で「今何をやるべきか」と考える時間ができたことで、私たちは今回、新しい商品開発に着手することができました。

    教育旅行民泊はようやく経済が回復している兆しが見えてきたので、今後に期待しています。団体向けと一般旅行客の方への企画の棲み分けもして、経済とサステナブルのバランスを取りながら、事業を継続させていきたいです。

    また、コロナを機に、一つの事業だけではダメージが大きいので、さまざまなお客様のニーズに応えて、地域の方々と連携しながら、いろいろな可能性を模索してつくり上げていくことが重要だと改めて考えさせられました。

    みなさんの力を借りて新しい商品を開発し、拡大していけたのは良かったことだと思います。これは、時間があったからこそできたことです。私が大切にしているのは、決断と実行。「ここで成し遂げれば絶対結果が返ってくる」という自信もありました。もちろん私一人ではできないので、関係者みんながそういう気持ちを持って取り組んできました。

    意識改革につながった地域ブランディング研究所との出会い

    地域ブランディング研究所の吉田社長の「稼げる形にしていきましょう」という言葉で意識が変わりました。また、関わるスタッフの意識改革もプランをつくっていく上で非常に重要な要素なのだと実感しました。地域ブランディング研究所の方々が一緒になってスクラムをしっかり組んで、ベースをつくってくれたからこそ、今があります。地域や我々のスタッフと意志疎通をはかりながら、地域一丸となって動いてくれたので、私も決断と実行に踏み切ることができました。

    私が非常に感銘を受けているのは、ビジョンとして掲げていらっしゃるとおり、「まちの誇りの架け橋」として真剣になってお互いにブラッシュアップ、ステップアップしながら、取り組んでいただいたことです。

    これまでいろんなコンサルタントの方々と取り組んできましたが、ある程度までアドバイスをして終わってしまうというスタンスを感じる部分がありました。ですが、サステナブルツーリズムを実現させていく上で、持続させていくことが重要な中で、そのスタンスでは成し遂げられません。地域ブランディング研究所は、非常に熱意と信頼を感じますし、持続可能なまちづくりに向けた施策を一緒に考え、伴走してくださるので、サステナブルにつながるいい方向に進んでると実感しています。

    「地域アイデンティティ賞」受賞を受けて

    Attractive Japan Awardで地域アイデンティティ賞をいただき、地域ブランディング研究所の広報の方のご協力もあり、琉球新報と沖縄タイムスにも大きく掲載していただきました。

    コロナ禍で制約がある中でも、今回、賞をいただけたことで、大宜味村のためにしっかり活動しているという実績やおおぎみまるごとツーリズム協会の存在を知っていただけるきっかけになりました。反響も大きく、いろいろなところで「新聞記事を見ましたよ。がんばってください」と声をかけていただきましたし、大宜味の地域観光活動が今回の受賞で評価されたことが広まったことについて、村長をはじめ、観光協会や地元の方々などからも電話でお祝いの言葉をいただきました。

    みなさんに見ていただいて、うれしく思いますし、元気が出ました。その応援に負けないようにしっかり取り組んでいかないと、と改めて感じました。

    NPO法人おおぎみまるごとツーリズム協会が目指すこれから

    この受賞がきっかけなのかはわからないのですが、東京開催の「ツーリズムEXPOジャパン2022」に招待され、この出展に際しても、地域ブランディング研究所にサポートいただきました。今後も、こういった新しい事にどんどんチャレンジして、ピンチをチャンスに変えていきたいです。

    「よんな〜大宜味」の新しいプランでは、目の前に美しい海が広がる公民館の施設を利用して、地元食材を使ったバーベキューをしながら地元の方々と交流し、夜はキャンプを楽しむことができます。そして翌日の午前中には、地元ガイドと一緒にe-bikeを使って集落を巡るサイクリングを体験。また、ビーチクリーニングを通してSDGsに貢献していただいたり、自然体験やものづくりのオプションも準備しています。

    これらをパッケージにして、一つの目玉商品として20〜40代のファミリーを対象に積極的に販売していきながら、コロナ収束に向けた受け入れ整備にも対応していきたいと考えています。さらに、WEBサイトやカタログのリニューアル、インバウンド回復を見据えた多言語対応などPRの強化もしていき、一皮向けたおおぎみまるごとツーリズム協会を展開していきたいです。
    「よんな~大宜味HP」

    取材を終えて

    豊かな自然や食文化、歴史、地域の人との交流など、地域にすでにある魅力的な資源を存分に詰め込み、商品化することで、「ここでしかできない」強い地域アイデンティティを生み出すことに成功し、今回の受賞につながったのだと思います。ピンチも前向きに捉え、決断と実行を繰り返しながら新しい取り組みにチャレンジし続けるからこそ、可能性を広げ、チャンスを掴んでいけるのだと実感しました。

    サステナブルやウェルネス、ウェルビーイングなどトレンドになる要素が盛り込まれ、新しいプランの開発やPRも拡大されるとのこと。NPO法人おおぎみまるごとツーリズム協会の今後の展開に期待が高まります。

    今回のインタビューで紹介をした「長寿の村で三線の音色と焚き火に揺られる地元おじいおばあ交流&滞在プラン」はこちら

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