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2022/12/20 体験プログラム紹介

コロナ禍をきっかけに新たな食文化体験に挑戦!金沢を先導するサステナブルな会社を目指して。 第3回Attractive JAPAN Award サステナブル賞受賞・株式会社こはく様

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    第3回「Attractive JAPAN Award」(※1)の受賞事業者にお話しを伺い、地域での取り組みや事業・サービスにどのような想いを持って活動されていらっしゃるかを紹介するインタビューシリーズ。今回はその第3弾です。

    「サステナブル賞」を受賞した、株式会社こはく(以下、略称「こはく」)の代表、山田様とチーフプロデューサーの谷口様にお話を伺いました。

    古民家の活用や金沢の地元食材を使った食文化体験など、地域の魅力を伝える複数の事業を展開されている、こはく。目指す姿は、「金沢の地域全体を先導するサステナブルな会社になること」でした。

    (※1)第3回「Attractive JAPAN Award」についてはこちら

    【お話しを伺った お2人のプロフィール】
    株式会社こはく 代表取締役 山田滋彦氏 

    京都の大学を卒業後、総合商社でアフリカ、中近東等の海外の自動車事業開発や管理、米系総合コンサルティングファームで、製造業向けの事業計画立案からトランスフォーメーションの実行を支援に従事。京都で町家再生などの活動をしたのち、2018年に金沢へ移住。株式会社こはくを創業。古民家再生や金沢の食文化に関する着地型体験の企画の他、通販・ギフト商品の開発などさまざまな事業を展開中。町家の保全・継承を推進する、一般社団法人金澤町家推進機構の理事も務める。

    チーフプロデューサー  谷口直子氏
    金沢と麻布十番で料理教室を主宰。料理家である母、谷口雅子の下、「食を通じて、心も体も豊かにする」ことを日常的に学ぶ。2016年テレビ局を退社後、母の料理教室の後を継いで料理教室を主宰、金城大学短期大学部非常勤講師、スーパースイーツ調理師専門学校講師、企業レシピの考案等を行っている。

    きっかけは海外経験!そこから見えた日本の魅力と課題感

    (山田)地域の魅力を伝える現在の仕事に至ったきっかけは、海外での経験を通して改めて気付いた日本の魅力を発信したいという想いでした。高校時代から海外留学やボランティア等に参加し、商社時代の仕事でも海外と接点を持ってきたことで、日本の地域が持つさまざま資源の素晴らしさを再認識することにつながりました。

    しかし、現状として日本国内ではまだその魅力に気付いている人が少なく、国内外に伝えきれていないことに強い課題感を抱いていました。良いものがたくさんあるのに伝えられていない。そのもどかしさが原点となり、「誰でも気軽に楽しめる体験提供を通じて世界に誇る日本文化を広く発信」という現在の弊社のビジョンが生まれました。

    金沢での起業や移住を決めた3つの理由

    (山田)初めは、地元である京都で個人事業として空き家の再生や着地型体験などに取り組んでいましたが、さまざまな土地を訪れる中で自分がやりたいことや想いを実現するには、金沢がとても自身に合う地域だと感じ、2018年に会社を設立して、拠点を金沢に移しました。

    金沢での起業や移住を決めた理由は3つあります。

    1.  観光のマーケットがある
    北陸新幹線が開通したことで訪日旅行客のルートにもなりやすく、観光地としてのマーケットがあったため。

    2.  観光資源が多く、コンパクトにまとまっている
    金沢市内には、一日でまわれる観光地(兼六園や金沢21世紀美術館美術館など)が多く密集していることに加え、観光資源が多くあり、将来性があると感じたため。

    3.  地域性が自分に合っている
    他の地域もたくさん周ったが、一番、地域の人や風土、文化などの地域性が自分に合っていたため。

    京都時代から地域ビジネスで活動してきて、自分1人だけではその地域で何かを変える活動ができないという経験をしていたので、協力してもらえる人がいるかということは、大きな指標になりました。

    弊社は、私以外みんな金沢が地元の方です。よそ者として地域に関わっていくためには、地域の人を巻き込み、力を借りなければ何も形にできません。古民家再生においても不動産の方や設計士などの協力も得て初めて成り立っているように、どの事業においても地域の人たちと一緒に動くことが大切になってきます。

    金沢に何度か訪れる中で、観光協会など観光に携わる人たちとの関係を築くことができたり、現在一緒に事業を行っているチーフプロデューサーの谷口をはじめ、事業を進めていく上で協力していただけそうな人たちに出会えたことで、直観的に自分とこの地域は合うなと感じていました。他にも、行政が制度面で移住者に対して支援を積極的にしていることも大きかったですね。

    (谷口)起業する3年ほど前に共通の知人を通じて何度か会っていた中で、「町家を生かして何か事業を始めたい」という相談をもらいました。山田を含め、そのグループには金沢出身者がいなかったということもあり、金沢出身で地元で活動していた私に声がかかりました。山田は私が主催するイベントにも顔をだしてくれ、「古い町家を残していけないのはすごく惜しいし、僕がやらなくちゃいけないと思っている」と熱心に語っていて、そこに私も共感しました。その町家は築100年近い建物で、宿泊は提供できないことから、まずはお料理体験のプログラムを始動。もともと私は自宅でお料理教室をやっていたので人と接することが好きで、金沢の文化を継承していきたい・体感してもらいたいという想いもあり、自分にぴったりだなと感じました。

    食文化や多様な人々との出会いなど、
    豊かなライフスタイルが魅力の金沢の特徴

    (山田)金沢の地で実際に暮らしてみて魅力の一つとして感じるのは、豊かなライフスタイルです。というのも、京都や東京のような大都市で生活しているとなかなか接点を持てないような多様な人々との出会いがあります。市長さんや地元で活躍するアーティストさんとも街で出会ったりしますし、それらの多様な出会いが日々の生活を彩り、今の事業につながることもあります。こういったことは大都市では組織ごとに分散してしまいますが、金沢は規模が小さい組織同士がちょうどよく混ざり合い、連携しやすい環境があると言えます。

    また、金沢の人たちは、幼少期から文化や芸術に関わる機会が多い環境にあるからか、そういった業種の仕事に特化していない一般の方でも文化についての教養が深いと感じることも多いです。

    私たちが提供している食文化の部分では、地場でとれる魚や野菜の種類が多いという特徴もあります。金沢に来てみると聞いたことのない名前の魚など豊富な種類の海産物が見られたり、加賀野菜も特徴的なものが豊富です。

    (谷口)金沢には、古い文化が今もそのまま残っています。守り継がれてきた工芸品や古い建物の1つ1つに職人さんが関わっているので、そういったところもぜひみなさんにみていただきたいです。

    また、お料理もその土地その土地で違うので、金沢ならではの食を味わい、そして、体感してもらいたいです。例えば、こんかいわし(いわしを糠、麹、唐辛子で漬けた発酵食品)やふぐのぬか漬け、いしる(石川県奥能登で作られる魚醤)などの発酵食品は金沢らしい料理の特徴の1つだと思います。また、お酒や魚、加賀野菜など地のものが一番と、地産地消にこだわる人が多いのも金沢の魅力です。

    コロナを機に体験のオンライン化やEC事業、
    コワーキングスペースにも注力

    (山田)コロナ前までは、古民家再生と食文化の発信拠点としてIN KANAZAWA HOUSE(※)での食文化体験や芸者さんとのお座敷体験、近江町市場ツアーと併せて、鮮魚や地元野菜を使ったクッキング体験などの着地型体験事業を主に展開してきました。

    その後、コロナを機にこれまでの近江町市場の食体験や料理体験をオンライン化、EC事業にも力を入れていき、地元食材を生かしたお取り寄せグルメ事業「イチバのハコ」、”贈る”をテーマに想定した「カタログギフト」への参入、そして2022年4月からは古民家を改装したコワーキングスペースも始めました。

    また、事業ではありませんが、教育にも力を入れて関わっています。地域の魅力をボトムアップで発信していくために、豊かな発想力と発信力がある子どもたちとの交流を通して、地域資源の魅力を再定義しています。地方では社会と教育が断絶されているように感じており、社会が教育に関わることに対してCSR活動や地域貢献などの印象をもたれることが多いですが、もっと自然的なもので対等な関係で行われるべきだと考えており、社会と教育がもっとつながっていけるよう働きかけています。

    (※) IN KANAZAWA HOUSE
    元染物店の風情がある金沢町家の風情あふれる空間で、地元出身の料理研究家である谷口氏が料理のコツや食材について説明しながら金沢の食文化体験を外国人の方向けに提供します。

    より「市場性」を意識した取り組みへ

    (山田)コロナ禍における変化においては、「市場性」を意識して事業に取り組んできました。大きな変化の1つは、メインターゲットが訪日客から国内客に変わったことです。コロナの影響を受けて、これまでの事業が観光や訪日客に頼りすぎていたことを反省し、事業のポートフォリオとして、観光に依存しない複数の市場にまたがった事業展開を意識して取り組んでいます。

    また、時代の流れに合わせて新たな試みを繰り返す中で、展開する事業や商品の価値の再定義が必要であると考えました。着地型体験としての市場ツアーをただオンラインに移行するのではなく、オンラインでやる価値を追求する点に、こはくの事業展開の秘けつが隠れています。

    日本国内で多くの市場がある中でどうやってお客様に選んでもらえるか。わざわざ金沢を選んで商品を買ってもらえるのか。そのために他にはない魅力づけを意識して取り組んでいます。例えば、市場に料理教室を併設することで他の地域にない差別化をはかることや、カタログギフトの展開も競合が少ない市場を狙い、意図的に商品を作っています。

    その中でも、地域ブランディング研究所にもご協力いただき、実現できたのが、近江町市場での買い物や料理体験を伝えるオンラインツアーでした。

    オンラインツアーで実現!
    金沢の「食」がつなぐ、お客様と地域の双方向のコミュニケーション

    (谷口)コロナ禍は本当に大変でした。それまで金沢には国内外のお客様がたくさん歩いていたのに、街中から人がいなくなってしまって。近江町市場も閑散としていて、本当に元気がないなという印象でした。

    コロナ禍でも発信を続けていればきっとお客様も戻ってきてくれるだろうと思い、お取り寄せグルメ事業「イチバのハコ」とオンラインツアーを始めました。金沢をはじめ、石川県の魅力を伝える上で、金沢の食文化を支えてきた近江町市場は欠かせません。そこで、まずは近江町市場からはじめようと決めました。

    EC事業では、お客様と主にメールや手紙でのやりとりになるため、一方通行だなと感じていました。その点、オンラインツアーでは、実際に国内外のお客様とお顔を見てお話できますし、何よりみなさんに知っていただきたい金沢の食材や商店をたくさん紹介することができるので、「この手があったのか!」と思いましたね。今では対面のお客様も増えてきましたが、「ツキのハコ」で定期購入していただいている方に向けて、毎月1回、オンラインでの買い物体験や料理体験を提供しています。魚屋さんもオンラインツアーの日は、大きいあんこうやカジキマグロの頭などいつもより気合いの入った仕入れをしてくれるので、市場も盛り上がっています。

    地域ブランディング研究所には、オンラインツアーの際のタイムスケジュールの作成や、近江町市場の歴史や私たちのコンテンツをどう魅力を付けて発信したらいいか?などのアドバイスを丁寧にしていただいたりなど、たくさんサポートに入っていただきました。そのほかにも商品のブラッシュアップをはじめ、あらゆるサポートをしていただき、本当に感謝でいっぱいです。

    サステナブル賞」受賞を受けて

    (山田)今回、Attractive JAPAN Awardで「サステナブル賞」をもらえたことで、自社のスタッフや市場の皆さんなど関わる人全員のモチベーションにつながりました。また、サステナブルを事業の中心に据えようと昨年から考えており、商品造成などに取り組んでいたため、そういった活動を後押しいただいている気持ちでうれしく思います。

    世界的にみると常識になりつつあるサステナブルな観点は、必ず日本でも問われるようになってきます。少しずつ観光業界等では重要性が認識されてきていますが、まだまだ実感できず取り組めていない日本人が多いことが現状です。

    (谷口)受賞についてSNSに投稿したら、皆さんに「おめでとう!」と言ってもらえたり、反響もたくさんいただいて大変嬉しかったです。会社のメンバーも、「やり続けてよかった」という思いが強くなりました。これがきっかけなのかはわかりませんが、国際連合大学のパネルディスカッションのパネリストとして呼ばれたり、持続可能な観光の取り組みとして、コロナ禍でのこはくの取り組みを金沢市長にも認知いただき、会議に出席したりと、仕事の幅も広がりました。

    こはくが目指すこれから

    (山田)私たちは「サステナブルといえば、こはく」と言われるような存在を目指したいです。CO2削減やフードロスなどについても環境省と連携して取り組み始めていますが、表面的なものではなく、観光以外でも地域全体をサステナブルなものとして捉えて広げられるような存在になっていきたいと考えています。

    現在、国際認証であるトラベルライフで上位ランクを取得すべく手続きを進めています。今年中には取れる予定ではありますが、認証をとった後にどのように事業につなげていくか、商品の見せ方やプロモーションについても考え始めています。

    例え、こはくがサステナブルな会社だと知名度が上がっても、地域全体がそういった印象を持たれなければお客様はこの土地に来ませんし、実際の事業にどのようにつながっているかを実例として見せていかないと取り組みの重要性を理解してもらえません。

    私たちの会社の存在意義を常に考える中で、同じことをやっていても価値が出せないため、他の会社や団体が実践できていないところを自分たちが筆頭になり動くことで、多くの人がサステナブルな活動に関わっていけるような雰囲気を地域に作り出していきたいと考えています。

    取材を終えて

    サステナブル賞を受賞した、こはく様がどのような視点でこだわりをもって事業やサービスを展開されていらっしゃるのかがよく分かりました。地域の魅力を伝えていくために多くの人と連携していく姿勢、サステナブルな事業展開に取り組む上でも地域全体に波及していくためにどうすればいいかを考え行動に移されている点が非常に印象的でした。

    観光業界でも注目されている「サステナブル」をキーワードに、金沢全体、ひいては日本の文化としての地域の魅力を再定義し発信していくことで、地域全体に還元していこうとするこはく様の今後のさらなる活躍に期待が高まりました。

    今回のインタビューで紹介をした「お家で見て、選んで即購入!明日のおかずを食の宝庫金沢で、ただいま大人気のオンライン近江町市場お買いものツアー」はこちら

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