東京 | 浅草エリア
浅草に根づく「職人のまち」というアイデンティティ
落語や歌舞伎など、江戸時代から大衆娯楽を求める人でにぎわっていた浅草。「庶民文化の歴史が残るまち」として認知される一方で、実は浅草はものづくりの伝統が息づく「職人のまち」でもある。「染絵てぬぐい ふじ屋」も、浅草の地で親子三代にわたって一点一点手染めで仕上げる伝統を紡いできた手ぬぐい工房のひとつだ。文化の発信地として、職人のまちとして、常に勢いのあった浅草だが、2020年に世の中はコロナ禍に突入する。「雷門から浅草寺まで、歩くのが大変なほど観光客でにぎわっていた仲見世商店街のいつもの風景が変わってしまった。突然、観光客が一人としていなくなってしまったんです。これからどうなってしまうのか、先が見えない状況でした」と「ふじ屋」三代目の川上さんは当時を振り返る。ふたたびお客様でにぎわう浅草を取り戻し、その価値を未来につないでいくためのアクションをいかにつくるべきか。「不安を抱えながらも、浅草観光連盟として何か動かなければと思いました」。
浅草のものづくりの伝統を、世界へ
人々が声をかけ合い、助け合う文化が根づいている浅草。地ブラも創業期以来、長年この地で活動を続けてきた。この地の気風を理解している地ブラは、地域の事業者のコミュニティに溶け込みながら、対話を重ね、気持ちをつなぎ、それぞれの目線を合わせていく。そして、事業方針の決定や行政との連携など、さまざまなサポートをおこないながらアフターコロナに向けて各事業者の事業をサポートし、コロナ禍を乗り越えた。ふたたび観光需要が戻ってくる中、さらなる取り組みとして、地ブラの担当者・中澤は、改めて「ものづくり」という浅草のアイデンティティに目を向けた。「三社様や浅草寺を中心に栄え、温かみのある“粋”な暮らしの中で紡がれてきた歴史が浅草の誇り。それらを支えてきたものづくりの価値を世界のお客様に伝えることが、地ブラの使命だと思いました」。そして2024年、訪日外国人向けに浅草エリアのものづくりの伝統を体感できる「Asakusa The Gate」プロジェクトを立ち上げた。


地域の風土をよく知る“仲間”として伝統をつないでいく
「地ブラさんは浅草の風土や伝統を大切にしながらも、客観的な視点でお客様のニーズを教えてくれる。自分たちの当たり前が、国内外の方を魅了できるポテンシャルを秘めているとは気づきませんでした」と川上さんは語る。
唯一無二のものづくり技術を持つ職人と、訪日インバウンド市場をつなぐことが「Asakusa The Gate」の目的。職人が手掛けた10種の作品を厳選して展示し、旅行事業者を招いた商談会も開催した。
中澤は職人や浅草エリアで活動するクリエイティブ事業者と連携しながら、「Asakusa The Gate」のコンセプト設計から伴走した。今後は規模拡大をめざしつつ「ものづくり」という浅草のアイデンティティがより魅力的に伝わるアプローチを模索している。「地ブラさんは浅草にとって、欠かせない“仲間”。これからも新しい視点をもたらしてくれることを期待している」と話す川上さんに、中澤は力強くうなずいた。浅草の伝統とその価値を未来につなぐために、地ブラは今日も汗をかき続ける。
地域の価値を広げていくためのさまざまなサポート
- ・地域の気風を熟知した最適な伴走支援
- ・意見集約や方針決定、行政の連携までサポート
- ・地域の伝統を再定義するプロジェクトの立ち上げ
- ・魅力や価値を世界へ届ける展開
川上 正洋さん
東京都出身。1947年に浅草で創業した「染絵てぬぐい ふじ屋」の三代目。2007年に父である二代目の川上千尋氏に師事。「江戸モダン」をコンセプトにした自由なアプローチからなる手ぬぐいを中心としたプロダクトの展開で国内外に多くのファンを持つ。
