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漆器、蔵、日本酒…喜多方に息づく 伝統を“面”として楽しめるように

●日本屈指の「ラーメンのまち」に隠れた課題
山脈に囲まれた自然豊かな福島県西部・会津地域。とりわけ北部に位置する喜多方市は、ラーメンのまちとして全国的な知名度を誇っているエリアだ。市内には100軒以上のラーメン店が軒を連ね、人口当たりの店舗数では日本屈指となっている。名物の「喜多方ラーメン」を求めて訪れる観光客も少なくない。
その一方で喜多方には課題があった。ラーメンという強力なコンテンツはあるが、一杯を食べ終えたら観光客は旅の目的を達成してしまい、すぐに帰ってしまう。多くの観光客が訪れているにも関わらず、滞在時間が短く、他の地域産業への波及効果が限られていたのだ。
「ラーメンのほかにも喜多方には多くの魅力があるはず。地域資源を活かした新たな観光のあり方を提案したい」。そんな想いから喜多方では、自治体や地域事業者が新たな体験型観光コンテンツの開発に取り組もうとしていた。

点在していた地域資源を ひとつのストーリーとして体験できるように

400年以上の歴史を持つ伝統工芸品「会津塗」、重要伝統的建造物群保存地区に指定された「蔵」、全国新酒鑑評会で多くの金賞を受賞する「日本酒」といった豊かな地域資源が眠っている。しかし、それらは“点”の活動となっており、“面”として展開できていなかった。「もともとお互いの絆が強い地域だが、いざ事業をつくるとなると、わからないことも多かった」と話すのは、「大和川酒造店」社長の佐藤さん。
そこで地域ブランディング研究所(以下、地ブラ)が動き始めた。滞在時間を延ばす鍵になる温泉旅館「山形屋」の瓜生さん、室町時代から続く会津塗専門店「北見八郎平商店」の北見さん、そして「大和川酒造店」の佐藤さん。地域のキープレイヤーとなる彼らと徹底的に議論をかわしながら、点在していた地域資源をひとつのストーリーとして体験できる観光商品として“編集”していく。
「ここまで膝を突き合わせてくれる会社は初めて」と佐藤さんは話す。細やかな調整の末、「山形屋」での宿泊プラン、会津塗の酒器で日本酒を味わう体験、地元食材を活かした料理と日本酒のペアリング体験など、喜多方を“点”ではなく“面”で楽しめるコンテンツが生まれた。

「喜多方が大好き」。自らもワクワクしながら取り組む

「それぞれの事業者さんの想いをつなげ、現実化させるのが私たちの役割」。地ブラの担当者・山下はそう話す。観光商品の開発にあたっては、それぞれの事業者の意向や実現可能性のバランスなどを鑑みながらプランを磨き上げたり、モニターツアーやイベントの企画・実施を担ったりと、さまざまな面で伴走した。
佐藤さんも「自分たちだけではできないことや苦手なことをサポートしてくれて、とても心強かった」と話す。「大和川酒造の日本酒も、喜多方の人や風景も大好き。仕事だけど仕事じゃないようなワクワクする感覚で。地域の人たちの『こんなことをやりたかった』という声は何より嬉しい」と山下は振り返る。
喜多方のブランディングはまだ始まったばかり。商品のブラッシュアップや誘客など取り組むべきことは多くある。「今後も新たな視点をもたらしてくれることに期待している」という佐藤さんの声に応えるために、地ブラは汗をかき続ける。

地域の“想い”を“現実”に変える さまざまなサポート

  • ・現地訪問による密接なコミュニケーション
  • ・自治体事業による長期的な関係性を構築
  • ・観光商品造成をあらゆる面からサポート
  • ・地域愛を持ち、ワクワクしながら伴走

佐藤 雅一さん

寛政二年(1790年)創業の老舗酒蔵・大和川酒造店社長。地域に根づく酒造りの伝統を引き継ぎながら、喜多方の魅力を多くの人に伝えようと尽力している。