第5回「Attractive JAPAN Award」（※1）の受賞事業者にお話をうかがい、地域での取り組みや事業・サービスにどのような想いを持って活動されているかを紹介するインタビューシリーズ第3弾です。

今回は「サステナブル賞」を受賞した村上水軍商会の村上泰弘さんにお話をうかがいました。

村上水軍商会は、鞆の浦で唯一のシーカヤック体験を提供。初心者から上級者まで楽しめる多彩なツアーを展開し、瀬戸内海の美しい景観や豊かな自然を楽しむ機会を通じて地域の魅力を発信しています。

（※1）第5回「Attractive JAPAN Award」についてはこちら　

【プロフィール】村上泰弘さん
広島県福山市の鞆の浦で「村上水軍商会」を経営するシーカヤックのベテランガイド。20年以上のカヤック経験を持ち、2000年に自身の会社を設立。瀬戸内海を何度も横断した経験から豊富な海洋知識を有しています。気さくで物腰柔らかですが、いざという時には頼れるガイドとして地元での信頼も厚い存在です。

メディア業界から海の世界へ転身

大学を卒業後、広島で深夜のラジオ番組に関わっていました。その後、知人の紹介でテレビ制作プロダクションに就職し、AD（アシスタントディレクター）の仕事を始めました。取材や番組制作の仕事はとても面白く、17年ほど携わっていましたね。しかし、当時はアナログ編集からデジタル編集に移行する過渡期だったので、一人でオペレートから編集までこなしていて、仕事に追われるようになり、メディアの世界から離れることにしました。

もともと趣味でシーカヤックに乗っていたこともあり、退職後にシーカヤックの体験の提供を始めました。最初は広島市でやることも考えたんですけど、やっぱり地元の福山でやりたいという気持ちが強くて、ここで始めることにしました。

ホームページを活用した集客で事業をスタート

事業を始めた時期に、ちょうどパソコンやインターネットが普及し始めたので、自分でホームページをつくって情報を発信し、集客をしていました。そのおかげで多くのお客様に来てもらえました。最初の数年はとても忙しかったです。その後、アクティビティサイトが増えてきてから、さらにお客様が増えました。当時からインバウンドにも興味があって、私が海外で経験したような楽しい思い出を、日本にきてくれたお客様にもつくってもらえたらいいなと思っていました。

体験を通じた「出会い」を大切に

今はシーカヤックをメインに、地元の方たちと触れ合える体験もツアーに組み込んでいます。例えば、漁港に寄ってその日に獲れた魚を見たり、海苔の養殖を見学してもらったりしています。特に、海のない国からのお客様にはとても喜ばれますね。観光地化されていない自然な良さが感じられると、地元の方とのふれあいを楽しんでいただけています。

そして、地域の方々のサポートがありがたいですね。私が炊飯器を持参し、市場の方に協力してもらって、海鮮丼をつくったこともあります。タイやイカなど、地元らしい白身の丼が完成しました。タイミングが合えば協力してもらい、地元の方々とお客様の出会いを大切にしていきたいと思っています。

海外からのお客様も安心して参加できる環境を整備

以前は、体格の大きな海外からのお客様はカヤックに乗れないということがありましたが、地ブラさんのサポートもあり、補助金を活用して大きなサイズのカヤックを準備することができました。そのおかげで、どんなお客様にも快適に楽しんでもらえるようになり、心配事が減りました。

また、ヴィーガンやベジタリアンの方々が増えてきたので、対応には気を配っています。ナイトカヤックではおにぎりとおばんざいを提供していますが、おにぎりの中身だけでなく、使用している出汁なども事前にしっかり確認をしています。

サステナブル賞受賞で得た大きな反響

今回の受賞をきっかけに、プランについて詳しく話を聞きたいという問い合わせが入ったり、昔付き合いのあった方や行政関係者から連絡をいただいたりしました。新聞も3社が取材に来てくれましたが、地ブラさんがメディアに働きかけてくださったおかげで、多くの方に認知してもらえる機会が得られたと思っています。今回のプロジェクトでは商品造成だけでなく、プロモーションや販売まで総合的な支援を受けていて、地ブラさんがプロモーション活動に奔走してくださったことを改めて実感しました。現場で忙しい私にとって、地ブラさんのサポートは本当に助かっています。

また、受賞には母も喜んでくれて、私の載っている新聞を切り抜いて大切に保管してくれています。取材に来てくださった新聞記者さんとも新たにつながることができてよかったです。このつながりを大切にして、今後もメディアに掲載してもらえるよう、私自身も力を入れていきたいと思っています。

広島市内には多くのアクティビティがありますが、福山にはまだ少なく、点と点がうまく結びついていないので、将来的にはもっと連携を図っていきたいです。私のことを知らない方も多いので、今回の受賞をきっかけに知ってもらえればと思います。地ブラさんには、福山全体を盛り上げてくれることを期待しています。そして、相談事を聞いてもらったり、客観的な意見をいただける存在がいるということはとても心強いと感じています。

今後の展望と地域への想い

これからも地域を支えながら、観光と環境保全の両立を目指していきたいです。瀬戸内海の美しさや、このまちの方々とのふれあいを、もっと多くの方に体験していただきたいです。海外からのお客様も多くなっていますが、地元の方々にもこの地域の魅力を再発見してもらいたいですね。今後は、さらに多様なお客様に対応できるサービスを展開していきたいです。

海外からのお客様に来ていただくには、地道な努力が欠かせません。ワークショップの参加や名刺交換などを通じて情報を得ながら、着実にアプローチを重ねています。こうした積み重ねがなければお客様が来てくれることはないと思っているので、これからも努力を続けていくつもりです。

私の目標は、福山という地域をもっと広く知ってもらうことです。観光だけでなく、この地域に暮らす方々の文化や生活を多くの方に知ってもらいたいです。地元の漁師さんや農家さんとも協力しながら、地域全体を盛り上げていければと思っています。そして何よりも、海での体験を通じて多くの方に楽しい思い出をつくってもらえたら嬉しいですね。

また、中四国の県境をあまり意識せず、香川や愛媛、岡山と県をこえたつながりを築けたらと考えています。松山や高松などにも足をのばし、ボーダレスな地域交流ができることを願っています。

取材を終えて

今回のインタビューを通じて、村上さんが心から地域に寄り添い、その魅力を発信し続けている姿に感銘を受けました。村上水軍商会は、シーカヤック体験を提供するだけでなく、地元の文化や人々との触れ合いも大切にしており、地域全体を包み込むような温かみを感じました。

また、メディア業界で活躍されていた中で、シーカヤックに出会い、地元での体験ツアーをゼロから立ち上げるという情熱に驚かされました。自らホームページを立ち上げ、インバウンド観光の重要性を早くから意識されていたことは、村上さんの行動力と、柔軟で先見の明がある姿勢を示していると感じました。

村上さんが語ってくださった「瀬戸内海の美しさや地域の方々とのふれあいを伝えたい」という想いは、単なる観光業の枠をこえて、地域全体を活気づけたいという強い願いが込められています。また、県境をこえたボーダレスな地域交流を目指す村上さんの姿勢には、日本各地にあるローカルの魅力をつなぐ可能性を感じました。

今後の活動を通じて、村上水軍商会がさらに多くの方にとって「福山の魅力を知るきっかけ」になり、地域が活性化していくことを心から期待しています。村上さんの地域と人をつなぐ取り組みが、国内外の多くの方々に響き、瀬戸内海の美しい風景が世界に広がっていくことを願っています。

今回のインタビューで紹介したツアーは、以下よりご覧いただけます。
「ジブリやハリウッドの舞台となった海でシーカヤックツアー(半日コース)」

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