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2024/11/08 体験プログラム紹介

太鼓を通じて諏訪地域を世界に発信!新たな市場を開拓し、文化継承に取り組む 第5回Attractive JAPAN Award 地域アイデンティティ賞受賞・御諏訪太鼓興業有限会社 様

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    第5回「Attractive JAPAN Award」(※1)の受賞事業者にお話をうかがい、地域での取り組みや事業・サービスにどのような想いをもって活動されていらっしゃるかを紹介するインタビューシリーズ。今回は「地域アイデンティティ賞」を受賞した、御諏訪太鼓興業有限会社 小口佳澄さんと山本麻琴さんにお話をうかがいました。

    御諏訪太鼓興業有限会社は、長野県諏訪地域に伝わる御諏訪太鼓の文化を受け継ぎ、次世代への継承に取り組んでいます。御諏訪太鼓は諏訪大社にて奉納される神楽を起源にもち、一度は途絶えかけたものの、戦後に宗家・小口大八氏によって再興されました。以降国内外で高く評価されてきましたが、演奏機会の減少や後継者不足などの課題に直面。新たな演奏の機会を設けるべく、小口氏を祖父にもつ山本氏を中心に、訪日外国人に向けた自然信仰と御諏訪太鼓の演奏を組み合わせた高付加価値のツアーを造成し、文化芸能従事者が活躍できる仕組みを生み出しました。

    (※1)第5回「Attractive JAPAN Award」についてはこちら 

    【プロフィール】 小口佳澄さん
    御諏訪太鼓興業有限会社・代表。太鼓暦41 年、御諏訪太鼓宗家小口大八の娘で、国内のみならず十数ヶ国で父の宗家小口大八、息子の麻琴らと演奏活動を積極的におこなってきた。7種類もの鳴物を巧みに使い分けて演奏する高度な奏法は神業と評価されており、国内外で絶賛を博している。

    山本麻琴さん
    長野県岡谷市で御諏訪太鼓の家元に生まれる。宗家である祖父と奏者である両親のもと、2歳より太鼓を始める。現在は御諏訪太鼓の演奏・指導・制作をおこない、御諏訪太鼓の普及に励んでいる。 

    コロナで文化継承の危機。起死回生をかけた新しいプログラムの造成

    山本)元々、御諏訪太鼓は諏訪地方に伝わる神楽が起源です。太鼓を通じて、諏訪の神様に豊作祈願や豊作への感謝などを伝えたのがはじまりだといわれています。戦国時代には戦で味方の兵を鼓舞する役割を果たすなど、御諏訪太鼓は諏訪の歴史と深い関係性をもっています。御諏訪太鼓は明治時代初頭に途絶えてしまいましたが、戦後に祖父の小口大八が復元。これが諏訪地域内だけでなく他の地域や海外にも広がり、観光の一コンテンツとして観光客への演奏が頻繁におこなわれてきました。

    しかしバブル期を過ぎると、地元ホテルでの演奏機会は減少していきました。加えて、これまで太鼓の演奏機会として定着していた地元企業の催事や地域・家庭での祝いごとなども時代とともに減少し、担い手も減ってしまいました。これは御諏訪太鼓に限らず、全国の太鼓文化全体に共通していたことだと思います。

    この状況に追い打ちをかけたのがコロナ禍です。「このままだと、一定数から大きくは増えない演奏機会を全国の太鼓奏者で取り合ってしまう……」そんな危機感を覚え、独自に新たな演奏機会を生み出そうと、訪日外国人観光客向けのプログラム造成へと取り組むことになりました。地域ブランディング研究所(以下、地ブラ)にサポートしてもらいながら、観光庁「観光再始動事業」と「インバウンドの地方誘客や消費拡大に向けた観光コンテンツ造成支援事業」の2つの補助金に採択され、3つのプログラムを造成。諏訪の地に訪れてもらい、現地のストーリーや空気を感じてもらいながら、御諏訪太鼓を体感いただくプログラムが生まれました。

    現代の文脈に合わせて伝える。心強い地ブラの存在

    山本)正直、私一人だけではここまでできませんでした。地ブラさんが補助金の資料や書類作成からプログラム造成、PRなどを丁寧に伴走してくれたおかげです。担当スタッフさんは地域への想いが強く、コミュニケーションを重ねて双方の価値観をすり合わせ、事業を進めることができました。本当に心強いですね。

    私たちは伝統文化を「継承」していますが、それを現代の文脈に合わせた「発信」をすることに課題を感じていました。地ブラさんに、今の時代に合わせたブランディングを手がけていただけたので「若い世代や海外の方々など、御諏訪太鼓を知らない層にも伝えられるんだ」という希望をもちながら活動しています。

    小口)地ブラさんは物事を吸収して理解し、実行するスピードがとても速くて驚きました。地ブラさんとつくったツアーはすべて誰でも楽しめるものなので、諏訪を沢山の方に知っていただける機会になると期待しています。

    最上級の御諏訪太鼓の楽しみ方を、より多くの人に

    山本)「諏訪の地に来て、御諏訪太鼓を聴く」ことは、他の地域や国で行うコンサートでの演奏を超える特別な体験にしたいと考えています。諏訪地域でしか味わえない空気感、ここに住む人々の息遣いや営んできた歴史、風土まで全身で感じていただける。「最上級の御諏訪太鼓の楽しみ方」ですね。

    私は海外でも御諏訪太鼓を演奏してきましたが、どこであっても太鼓を打つときは諏訪地域の神様、風土、景色を想っています。海外の方々が太鼓を通じて諏訪の地に思いを馳せ「こんな風景なのだろうか」「いつか訪れてみたい」という気持ちになってほしい。そう願っているので、海外ですでに御諏訪太鼓を聴いたことがある方々にもぜひツアーを体験していただきたいです。

    今回、地ブラと造成した体験ツアーは3つあります。1つが諏訪大社・佛法紹隆寺・御諏訪太鼓を組み合わせたものです。これは諏訪を代表する2つの寺社にて諏訪信仰の世界観を体感していただいた後に、諏訪大明神の御前で奉納演奏するところを観ていただくものです。2つ目が諏訪大社・本陣岩波家・箏(こと)演奏を組み合わせたものです。諏訪大社やその隣で江戸時代から続く岩波本陣を訪問し、大名が宿泊した格式高い部屋にて美しい日本庭園を見ながら箏の演奏を体験いただける内容です。そして3つ目が白樺湖と御諏訪太鼓の演奏を組み合わせたものです。自然信仰への理解を深めた上で、白樺湖を舞台に奉納演奏を聴いていただき、実際に太鼓を打つ体験もご用意しています。諏訪の大自然を体感しながら太鼓を楽しんでいただけるツアーです。すべてこの地域の文化や自然を体感しながら演奏をお楽しみいただき、御諏訪太鼓の「真髄」を感じていただける内容になっています。

    外へ発信し、自分たちも価値を再認識

    山本)2023年には海外のお客様向けにツアーを実施。諏訪大社や仏法紹隆寺などの見学を通じて諏訪の文化をご紹介した後、太鼓の奉納演奏を観ていただきました。演奏後にはハグしてくれる方や、あえて通訳を介さず自分の言葉で感想を伝えてくれた方も。「諏訪に来ないと体験できない経験だった。ぜひ知り合いに伝えたい」「初めての体験で、とても新鮮だった」など、非常に嬉しい感想をいただきました。私たちが諏訪で習慣的におこない継承していることを、海外の方々が「自分たちにはない価値観」として捉え、新たな体験をしていただけて良かったです。

    ツアーを造成し、実施することは、私自身が諏訪の地と御諏訪太鼓を改めて学ぶ機会にもなりました。海外の方に諏訪の文化や御諏訪太鼓をすべて伝えようとすると、すごく情報量が多いんですよね。これを凝縮して簡素化して伝えるのではなく「彼らの文化や価値観の文脈で理解してもらう」ことにこだわりたい、と思ったんです。表現の精査をしていくなかで「本当に伝えたいこと」が見えてきて、これまでの歴史と今この瞬間をつなげ、御諏訪太鼓の価値を感じてもらうために必要な言葉を磨き上げていきました。すると、海外の方々だけでなく、日本人にもよりわかりやすく御諏訪太鼓を伝えることにつながりました。

    諏訪地域全体をつなげる取り組みに

    山本)ツアーを通じて諏訪地域でしかできないことを体感してもらいたい……そんな想いで地域の方々を巻き込みながらプログラムを造成していきました。そのため「地域アイデンティティ賞」の受賞はとても嬉しいです。ここからやっていくしかない、と後押ししていただいている気持ちです。また、地域の組合の方々や他の地域で太鼓を演奏している方からは「何か一緒にやれたら嬉しい」「いい刺激をもらっている」などのメッセージをいただき、私が行ってきた活動の「点」が「線」としてつながっている感覚です。

    小口)「地域アイデンティティ賞」の受賞はとても嬉しいですね。宗家の小口は「世界中に御諏訪太鼓の弟子をつくりたい」「いつか世界中の方々を諏訪大社にお呼びして、みんなで奉納演奏をしたい」と話していました。まだ道のりは長いですが、実現に向けて着実に歩みが進んでいると感じています。

    1000年後も続く文化の継承に向けて

    山本)諏訪大社に奉納する御諏訪太鼓。先祖代々、続けてきたことを教わり、継承し、伝えていく。これが私自身の根幹にあり、担い手として次の世代に伝えていきたいです。ツアーでご紹介する佛法紹隆寺は、1200年以上前に開基したお寺で諏訪大明神様を守っています。1200年以上も諏訪に在り続けていること自体、奇跡だと感じています。こうした諏訪の地にある歴史、伝統、文化を現代だけで終わらせず、100年、1000年後に残していきたい。そんな気持ちで文化継承に取り組んでいます。

    次の世代に文化を残していくためには、今回のツアーを通じて諏訪や御諏訪太鼓を体感する人を増やすことが大切になってきます。ツアーを重ねていくなかでよりよい内容に磨き上げ、ニーズに応じた新たなオプションプランなども生み出していきたいです。また、御諏訪太鼓のアクションが盛り上がることで「自分も地域独自の魅力を伝える担い手になりたい」という人が増えたらいいなと思っています。

    取材を終えて

    御諏訪太鼓を通じた文化継承の取り組みやそれに関わる方々の想いをうかがうなかで、太鼓という一つの文化芸能が伝えるものは地域の風土や文化、人々の想いや歴史など、沢山のストーリーなのだとわかりました。諏訪の寺社や自然と御諏訪太鼓を組み合わせることで地域全体の文化を伝えるという取り組みは、単なる観光ではなく、地域の「真価」を体感いただけるものだと確信しました。
    地域の伝統や歴史を大切にしながら現代に合った発信をおこなうことや、聞き手の文化・価値観も尊重しながら体験を提供することは、文化芸能の継承において非常に重要だと感じます。より多くの方が諏訪の地で御諏訪太鼓を体感し、地域や太鼓文化の発展につながることを期待しています。

    今回のインタビューで紹介したツアーは、以下よりご覧いただけます。
    【諏訪大社と佛法紹隆寺を巡り諏訪の信仰・精神性を体感する本格的な御諏訪太鼓の奉納演奏体験ツアー:こちら
    【白樺湖に響き渡る御諏訪太鼓! 神に供される「音と響き」を楽しむ特別時間:こちら
    【日本最古級の諏訪大社と28代当主が守る本陣岩波家をめぐり文化・精神性を堪能する特別プライベートツアー:こちら

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