SDGs:欧州人が旅先で求める「サステイナブル・持続可能な観光」とは?
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こんにちは!地域ブランディング研究所のフランス人スタッフ、ジュリです。
最近、日本のメディアでも目にしない日はないという程、重要なテーマとなっている「サステイナブル」「SDGs」。前回の私の記事~ニューノーマル時代の体験型コンテンツは【サステイナブル×○○】欧米客は付加価値を探している!~でも、ターゲットの傾向からSDGsに特化した体験プランの造成について紹介しました。
今回は、日本よりも先をゆくと言われている欧州での「サステイナブル」「SDGs」における意識の違いやその背景について、具体的な事例を紹介しながらお伝えしていきます。
フランスでのサステイナブルな教え
フランスの一般的な裕福な中流家庭に生まれ育った私は、小さい頃から両親に食事の残り物を再利用して生ゴミを出さないようにする方法や、庭で刈り草や生ゴミを使って自分たちで堆肥を作り、トマトやブドウ、カボチャなどを育てる方法を教わっていました。
また、両親は私たちの冒険心を満たすために、古着や本を買ってくれました。新品を買うお金があっても、ガレージセールで理想的なアイテムを探すことの楽しさや、新品を買う前に壊れたものを修理することの大切さも教えてくれました。そして母が家中の電球を少しずつLEDに変えていったり、夏には窓のシェードを閉めて熱量の調整をしたり、水辺で過ごしたりして工夫をしていたのを覚えています。ある意味、日本の昔ながらの生活はサステイナブルだなと感じることがあります。
これらのエピソードからも私は、サステイナブルな意識という点では少し先を行っていたかもしれませんが、欧州の消費者の最近の行動の中では例外ではありません。2017年、Unileverによる新しい国際的な研究によると、消費者の3分の1(33%)は彼らがそのポリシーを信じるブランドから購入することを選んでいることも明らかになっています。
サスティナブルな活動(BIO商品)
農業大国としても知られているフランス。環境や身体に負荷が掛からず、持続可能なBIO(オーガニック)を推進する動きがスタートしたのは1950年代のことでした。欧州では、この大きなムーブメントはすでに今から20年以上前の2000年代に始まっています。
フランスではスーパーマーケットの至る所でBIO商品を取り扱っています。農場全体が有機ラベルを取得して顧客を説得し、政府はより環境に優しいエネルギーシステムに資金を提供。生態学者の活動家は環境破壊の影響を考慮し新しい空港の建設に反対していました。
このような社会全体を巻き込んだコンセプトは、欧州人の精神と行動にすでに深く刻まれています。世代を超えた食と健康への意識の高さだけでなく、国を挙げた支援が地域の雇用、経済、流通を促進する新たな取り組みへと発展しています。
フランス人にとってエコフレンドリーな(環境配慮型)ホテルとは?
さて、観光ではどうでしょう? フランス人には旅行をするときに滞在するホテルを選ぶ際は、エコフレンドリーな宿泊施設を選ぶようにする人が多くいます。自分たちが旅行先で使うお金で、何を応援できるかを知りたがっています。例えば、宿泊先を選ぶときには “少し高くてもSDGsの取り組みをしっかりしている場所を選択することで、応援したい” のです。
フランスの宿泊施設では、節水や省エネ、ゴミの分別など、より良い未来のために地球を保護するための環境に優しい取り組みを採用しています。
もう少し具体的なことをお伝えしましょう。
例えば以下のようなものがあります。
- 社員は公共交通機関のみを使って通勤
- 客室の清掃に欧州エコラベルの付いた製品または天然材料の製品を使用
- 電気はLED電球で省エネ
- 再生可能エネルギーによる暖房を採用
- バスアメニティもエコ認定製品
- フェアトレードコットンを使った羽毛布団
- 蛇口は節水のフィルターに交換
- 朝食やミニ・バーは、地元の食材やBIO食品(オーガニック)
- タクシーの送迎は、相席で
- キッチンのウェースト管理(バイキング禁止、チャリティー、コンポスト作りなど)
- ごみの分別、リサイクル(布団、シーツなどもチャリティに寄付)
- 使い捨て商品なし
欧州では、取り組みが単体ではなく全体的にSDGsとしてマネジメントされているのが特徴です。そして旅のプランを考える旅行者も、エコフレンドリーな宿泊施設を選ぼうと意識する人が増えています。実際にフランスでは、環境に責任のある宿泊施設のオンライン予約プラットフォームも登場しています。
このように、これまでお伝えしてきたような社会全体が環境問題に取り組んできたという背景もあって、自らの行動を通して社会問題の解決につながるような旅行への関心が高くなっているのです。
そして待ちに待った海外旅行へ再び行けるときには、そのサステイナブルを求める視線は必然的に海外の旅行先、宿泊施設などの取り組みにも目が向けられていくでしょう。
SDGsと観光との関わり
ここで、簡単にSDGsについておさらいしましょう。
SDGsは、Sustainable Development Goalsの略で持続可能な開発目標のことです。
観光業は世界のGDPの10%を創出し、つまり世界で働く10人に1人が観光に携わっているという、大変影響が大きい産業です。観光業は環境のみならず、社会、経済にも大きな影響を与えています。
国連世界観光機関(UNWTO)は持続可能な観光を以下のように定義しています。
訪問客、業界、環境および訪問客を受け入れるコミュニティーのニーズに対応しつつ、現在および将来の経済、社会、環境への影響を十分に考慮する観光
SDGsの17の目標のうち、観光分野での役割が示されたのは「8 働きがいも経済成長も」、「12 つくる責任 つかう責任」、「14 海の豊かさを守ろう」の3つ。
これは、観光が有形・無形の文化遺産や自然環境に配慮しつつ、地域の雇用や収入を生み出し、その持続可能な発展の推進力となることへの期待を表すものです。
UNWTOは、観光は移動・学び・運動・食・宿泊・購買などいくつもの行動を含むため、17の目標すべてに直接的・間接的に関わる力がある、としています。
2017年当時の事務局長は観光は経済的な側面のみならず社会や貧困、自然・環境、文化・遺産、相互理解や平和の創出といった分野においても大きく貢献できるとも述べています。
まとめ
今回は私が育ったフランスと欧州の動向を中心に、SDGsの取り組みの意識の違いやその背景、SDGsと観光との関わりについてお伝えしました。
コロナ時代の新しい観光の在り方を模索するなかで、「サスティナブル(持続可能性)」はヨーロッパだけではなく世界共通のキーワードとなっています。
テレワークが進んだことをはじめ、社会的課題が自らの生活に影響をもたらしていることを改めて自覚するようになりました。この経験は、私たちに今まで人類がつくり上げてきた経済や社会システムやその基盤である地球環境との向き合い方について問いかけています。
過去のAJラボの記事でも、日本でのSDGsの取り組みも紹介しています。是非チェックしてみてください。
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