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子どもたちが帰ってきたくなる島へ 持続可能な観光事業を根づかせる

2021年、世界自然遺産に登録された西表島。そんな西表島の白浜地域で、体験型ツアーなどの企画を行う一般社団法人シラハマコイナの発起人のひとりが屋良誠一さんだ。
西表出身で東京からUターンした経験を持つ屋良さんは、集落の現状に課題を感じていた。家業である商店の売上や、公民館が運営する民宿の集客。加えて集落内で働く先が少なく、遠くの地域まで働きに出ているシニア世代の姿を目の当たりにして「もっと地域の中で産業をまわしていくべきだ」と強く思うようになった。そして、公民館長として地域自治を担うかたわら、集落の仲間たちと営利を目的とした任意団体を結成。補助金による観光体験事業を実施した。
しかし、現実は慣れない作業ばかりでやるべきことに打ち込めない状況が続く。集落を盛り上げていくための事業は、継続的に実施できる体制が必要不可欠。
この経験が、持続可能な事業展開について構想するきっかけとなった。

地域のアイデンティティに根ざした事業を

地域ブランディング研究所(以下、地ブラ)は屋良さんと同じスタンスだった。「地域が無理なく続けられるのがベスト。そのためのサポートを行いたい」と伝えたことで意気投合。代表の吉田と屋良さんが同年代ということもあり、2人はすぐに打ち解けた。
まず地ブラは、シラハマコイナのメンバーを集めて、地域の理想を語り合うワークショップを実施。各自の想いを紐解きながら、共通認識をつくっていった。
「熱い想いはあるけれど、どうすればいいか分からないことばかり。地ブラはそれをうまくまとめて、僕たちが自走できるように導いてくれる」と屋良さん。
白浜地域は、手つかずの自然環境とアットホームなコミュニティが特徴のエリアだ。そんな地域のアイデンティティこそお客様に楽しんでもらうべき価値であり、持続可能なかたちで提供できるものではないか。そんな提案から民宿を拠点にしたカヌー体験や、活きの良い魚と島民との語らい”ゆんたく”を楽しむBBQなどのツアーを磨き上げた。

上の世代と共に、西表の魅力を未来につないでいきたい

「西表を大切に守ってきた“おじぃ・おばぁ”の世代と想いをすり合わせながら、集落をより良い場所に発展させていく…地ブラは、僕が思うシラハマコイナの理想像を一番分かってくれている」と話す屋良さんに、地ブラの担当者・米山は誇らしげな笑顔を見せる。東京からは片道6時間。それでも頻繁に通い対話を続けた米山への信頼は厚い。
今、地ブラは地域住民とのコミュニケーションを深めつつ、プランの誘客やWebサイト、パンフレットの制作、情報発信、新企画の提案など、あらゆる面からサポートを行っている。また、関係者同士をスムーズにつなぐのも米山の役目。フランクに、時には酒を飲み交わしながら、まるで島民のような距離感で向き合っている。
屋良さんが島を出る時、父親からは「帰ってきても仕事はないから、帰ってこなくて良いよ」と言われたそうだ。「僕らの子ども世代が大きくなって働く場所を考えた時、西表を選びたくても選べないのは悲しい。そうならないために、この集落を盛り上げて未来につないでいきたい」と力強く語った。
その熱い想いを受け止め、地ブラはこれからも伴走し続ける。

熱い想いを受け止めて、エリアの魅力を高めていく

  • ・他事業者とのご縁からの継続的関係を構築
  • ・島民の想いを受け取り、持続可能な提案
  • ・他地域経験を活かした観光商品造成サポート
  • ・世代を超えたつながりで魅力ある島の未来へ伴走

屋良 誠一さん Yu-na

一般社団法人シラハマコイナ事務局に所属。東京でシステムエンジニアとして活躍したのち、西表・白浜地域にUターン。白浜公民館長としての顔を持ちながら、地域の発展に尽力する。