新潟県 燕三条エリア

新潟 | 燕三条エリア

現場をどう見せ、どう共感してもらうか ファクトリーツーリズムのその先へ

世界有数の金属加工品の産地、新潟県・燕三条エリア。三条市は江戸時代から鍛治と問屋のまちとして知られ、燕市は銅器製造や洋食器のまちとして有名だ。近年はものづくりで栄えてきた他のエリアと同様に、機械化や製品の低価格化、流通の変化などにより需要の減少、職人の後継者不足や工場の閉鎖など、さまざまな課題に直面している。
そこで「現場を見せることが、この地に伝わってきたものを次世代にバトンタッチしていく一番の近道」と、2013年にスタートさせたのが工場見学のイベント『燕三条 工場の祭典』だ。訪れた人が思い思いに興味のある工場をめぐり、職人と交流することができるとあって毎年大盛況。コロナ前の2019年には4日間のイベント期間中、のべ56,000人が訪れた。しかし、人の来訪がこの期間中のみに集中するという課題もあった。『燕三条 工場の祭典』実行委員会のメンバーであり、株式会社玉川堂の番頭、株式会社つくるの代表取締役、山田立さんは工場見学を日常の風景にしていくことを次のステップと考えている。小規模ツアーを開催するなど新しい形を模索しており、地ブラは、そのサポートを担っている。

観光客も、地域の人も、燕三条のファンに

実際に現場を見て、触れてもらえれば、長年培われてきた職人の技術と受け継がれてきた思いを感じることができる。地ブラのエリア担当者は燕三条に通い詰め、これからどうなっていきたいか、そのためには何をするべきか、地域と議論を重ねていった。その中で聞こえてきたのは、職人たちの本業に支障が出てしまっては本末転倒だという声。地域の魅力を観光客にうまくお裾分けしながら、お互いが満足できるような仕組みづくりが必要だと考えた地ブラは、地域の事業者がやりたいことに専念できるように予算獲得や環境整備をサポートしつつ、モニターツアーを実施して観光客の心に刺さる体験とは何かを徹底的にリサーチした。

刺さるツアーで、関係人口を増やす

現在進めているのは、顧客属性やニーズに合わせた滞在性の高いツアーの提供だ。燕三条でつくられる食器やキャンプ用品をテーマにしたスペシャルツアー、お客様一組一組の要望やこだわりに応えるオーダーメイドツアーなど、訪れる人に合わせて商品価値やストーリーを共有すれば、燕三条や職人を深く理解し、応援してくれるファンも増えていく。そうして地域の人々と継続的に関わってくれる“関係人口”を増やしていけば、地域住民の誇りにもなるはずだ。「燕三条のあるべき姿をめざして仕組みをつくり、地域で事業を回していける状態をつくるのが私たちの仕事です」と、現在のエリア担当者、坂井亮太は話す。
「地ブラさんはマーケティングに強く、全国的な事例やネットワーク、全体を俯瞰する視点があるので助かっています。今後は見た目だけじゃなく、使い勝手も良いWebサイトの完成も楽しみです」と山田さんは期待を寄せる。
地域の歴史、道具、技術、思いを受け継ぎ、ものづくりのDNAを絶やすことなく未来につないでいく。燕三条と地ブラの挑戦は始まったばかりだ。

伝統を次世代につなぐため
“関係人口”を増やしたい

  • ・運輸局の欧米豪向けコンテンツ造成がご縁のはじまり
  • ・観光庁事業の2年連続採択もサポート
  • ・ターゲットのカテゴリーを3つに分け、それぞれの軸で企画を整理
  • ・地域の観光客受入れ基盤の整備などにも尽力

株式会社玉川堂/株式会社つくる 山田 立さん

百貨店勤務を経て、鎚起銅器の老舗「株式会社玉川堂」の番頭となる。『燕三条 工場の祭典』実行委員、株式会社つくる代表取締役などを務めながら、燕三条の発展に尽力している。