【開催レポ】観光庁:誘客多角化等のための魅力的な滞在コンテンツ造成実証事業全国シンポジウム『第3セッション 持続的な地域経営・ファンづくり』
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第3セッション概要
『withコロナの持続的な地域経営・ファンづくり』をテーマに、コロナ期の旅行スタイルの中でも、魅力的に映るコンテンツの造成に力を入れているお二方の事例を基に、観光のカリスマである山田桂一郎さんを交えてディスカッションを行いました。
今後各地域が自走していくために必要な持続的な仕組みや仕掛けなどについて議論が繰り広げられました。モデレーターは、地域ブランディング研究所の吉田博詞が務めました。
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株式会社DMC天童温泉 鈴木誠人氏
天童を起点として楽しめるツアーコンテンツを造成。その中でも『朝摘みさくらんぼツアー』は人気。宿泊客を確保しやすくするために早朝や夜のツアーに注力するという工夫もされている。
一般社団法人八ヶ岳ツーリズムマネジメント 小林昭治氏
民間から財団法人、財団法人から県に出向、そこから指定管理会社へと運営会社を転籍しながら、丘の公園という県の施設に長年にわたり関わり、さらには、指定管理者受託企業の代表取締役としても活躍している。合意形成を大切にした地域づくりを進めている。
JTIC.SWISS 代表 山田桂一郎氏
政府認定の観光のカリスマであり、スイスのツエルマットを拠点にDMOのノウハウを持つJTIC.SWISS 代表。日本ではDMOの促進、人材育成など、知見を活かした講演などの経験を多数されてきた。
持続的な地域経営とファンづくりに必要なものとは?
<withコロナ時代の誘客環境の変容、必要な要素>
・宿泊予約だけでなくその他の体験関係においてもオンライン予約が加速
・マーケットはマスからニッチへのターゲットシフトが求められるように
・コアなファンを獲得していく
・リピーター化していく
・ゴールを明確に設定して事業を回していく
・他産業との連携、地域住民の理解
吉田:
商品・担い手・仕組み。この3つのどれか1つでも不足してしまうと持続的な観光地経営が難しくなってくると思います。専門家目線ではいかがでしょうか。
山田さん:
持続的な地域経営とファンづくりは密接な関係にあります。観光のための地域づくりではなく、地域経営における観光産業の位置付けや産業連携のあり方、そしてどういう成果・結果をださなければならないのか。しくみや体制化と共に計画的な落とし込みを考える必要があります。事業者の商品・サービス化だけでなく、行政としての総合計画や総合戦略の計画の立て方など、このセッションを通して持続的な観光地経営を考えていただきたいです。
株式会社DMC天童温泉の事例紹介
鈴木さん:
天童温泉には11軒の温泉があり、そのうちの7軒の温泉のオーナーが出資して作った着地型の旅行会社です。天童温泉に宿泊していただくお客様を増やすことはもちろん、この地域の中でどれだけ消費を生み出せるのかという点にも挑戦しています。
当事業は、様々な課題を抱えている地場産業と地域観光の関係者が一緒になって新しい滞在型コンテンツを造成し、持続的な観光開発を模索するという検証事項で推進してきました。
コンセプトは「一生ものに出会える旅」です。
リアルツアーとして造成していましたが、コロナの影響によりオンラインツアーとして実施しました。
今回のオンラインツアーは、参加者が70名、ツアー申し込み者が312名いらっしゃいました。アンケートの結果も好評が多く、大変満足が85.3%、満足が14.7%、それ以外はなかったという状況でした。通常の見学だけではなく、非公開の場所の案内、各社の製品に実際に触れていただくという要素を盛り込むことで高付加価値の体験型ツアーができたと思います。
新たなプロモーションツールになり得るという新しい気づきもありました。参加者のアンケートでは「アフターコロナで天童温泉に訪れたい」という方が100%に近い数字で出ております。
一般社団法人八ヶ岳ツーリズムマネジメントの事例紹介
小林さん:
withコロナ期によって集客範囲が狭くなったことから近距離圏内でもしっかりと誘客できるプログラムであると共にwithコロナ期、アフターコロナを見据えた安心・安全な集客体制プログラムを計画し計4つのプログラムを造成しました。
・八ヶ岳の資源を取り入れること
・観光の消費額を上げること
・アウトドア、プライベート要素を組み込むこと
・コロナ対策を徹底すること
以上の4つのポイントを意識して造成しました。
<パネルディスカッション>
地域を巻き込んでいくプロセスにおいて心がけること
鈴木さん:
事業者側のメリット、事業の効果を明確に提示することを意識しています。また、課題解決として観光は優位なのかどうかを考えるようにしています。ただ、お客様と地域とを結びつけることに観光はメリットがあるのではないかと考えています。
小林さん:
観光というものはすごく広いですので、プログラムを進めるにあたって、農業や漁業などその他の業界の人達を一堂に会する戦略会議を月に1回開催し、合意形成を図りながら協力を得ながら進めています。こういったプログラムをやるから協力してくださいと伝え、どのように地域の消費があがるかという所を念頭において、徹底してプログラムを造っています。地域の消費が上がり、それがファンづくりにつながるとも思っています。地域全体で取り組んでいます。
山田さん:
どちらの事例も関係者が合意形成出来る環境がしっかりしているところがポイントですね。域内の多様な産業関係者から、自分たちがいかに必要とされているのかというところをしっかりと抑えておくことが、持続的な地域経営につながると思います。今後の地域経営における将来ビジョン・理想像を聞かせていただきたいです。
今後の地域経営としてのビジョン・理想像
鈴木さん:
旅行者の方が山形に来て、「山形は本当に素敵なところだね」と言ってくださることもさることながら、それと同時に地域にいる我々が、「自分たちの地域って本当に最高だよね」と言える、それを旅行者にも伝えられるという状況が理想的だなと思っています。
また、ガイドの話を通じて地域の理解が深まり魅力を再発見していただき、誇りに思えるようになれればと思っています。
小林さん:
ガイドが付いて魅力を伝えない限りはファン作りやリピーターには繋がらないので、一貫してガイド付きのツアーのプログラムを造成し、地域全体を活性化するということを目的に事業に取り組んでいこうと思っています。
山田さん:
コロナ禍で県外からのお客様が来られないという中で、近場の方や地域住民の方々が地域の良さに改めて気づく、これはまさに自信や誇りにつながると思います。地域内で連携を取り、もっと横展開を強めながら地域全体に繋げていくとおのずと地域経営という形になっていくと私は感じました。
リピーターファンを作るためのポイント
鈴木さん:
満足度をしっかりと高めていくのも大事ですが満足させないという仕掛けも必要だと思っています。また、次の仕掛けも用意し紹介するという継続的な関係を意識しながらやっていくことでリピートにつながっているのではないかと考えています。あの地域は素敵だから何回でも行きたくなるよねという空気感をこちら側で作っておくことも必要だと思っております。
小林さん:
住んでいる方が自分たちの地域を誇れない限りは来た方にはリピートしていただけないので、まずは自分たちの地域を誇れる人口が増えていくことを意識しています。ガイドが魅力を伝えることもそのうちの1つだと思っています。
山田さん:
顧客満足度の推進はとても大切です。今後の顧客生涯価値を考えた時、満足度の提供だけではなく、それを超えたお客様との繋がり、つまりCRMが大切となります。生涯に渡るお客様との繋がりを自分たちが主導権をもって続けることが重要です。地域の将来に対して共感を得られるコンセプトでないと長期的なスパンではお客様から協力を得られません。今、様々な地域がCRMに取り組み始めています。天童も八ヶ岳もトップランナーを追い越す勢いで活動を進めてほしいです。
最後に
山田さん:
お客様がその地域に来て幸せを感じる、住民もお客様を受け入れる側として幸せを感じる。このような「誰もが幸せを感じる観光地」を是非目指していってほしいなと思います。そうすればおのずと持続可能な地域経営になっていくと私は信じております。”感幸地”を目指す地域が全国的に1つでも多くなればと願います。ありがとうございました。
(レポート:三枝里緒)