全国体験観光オンラインシンポジウム【第2部 パネルディスカッション①】
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はじめに
つづいて、『withコロナの観光地づくり・プレミアム化』をテーマに、世界を旅する富裕層のマーケットを熟知するお二人をお迎えしてパネルディスカッションを行いました。最新のトピックをお聞きしながら、今、実際に何が求められているのか、それを観光業にどう活かすかなどの実りあるトークや議論が繰り広げられました。
ゲストパネラーのプロフィールはこちら。
「観光のカリスマ」山田 桂一郎 さんは、スイスのツエルマットを拠点にDMOのノウハウを持つJTIC. SWISS 代表です。日本ではDMOの促進、人材育成など、知見を活かした講演などの経験を多数されてきました。
(株)クリル・プリヴェ founder & CEO 髙野 雅臣 さんはラグジュアリー・トラベル・グローバルネットワーク “Virtuoso“ の日本初の加盟メンバー。Virtuosoなどソサエティのつながりで各国の経営者の方と連携をとりながら、状況を共有し、ホテルや旅館のコンサルティングとしてもご活躍されています。
日本はどう見られている?
世界のインバウンドで最初に戻ってくるといわれている富裕層。
高野さんによると、富裕層の間では、日本は新型コロナウイルスによる死亡者数が伸びていないことが幸いし、比較的安全な国として認識されています。富裕層にとって、収束後の旅行先として日本は、依然として安心・安全・特別感があるとのこと。これは非常に明るいポイントですね。
安心・安全を求める声は?
今までに寄せられたお問い合わせ例:
「日本に行きたいけど、地域の抵抗感など鑑みて、いつ行ったら良いか?」
「COVID-19が収束するだろう秋口から行きたい」
「できれば抗体検査を受けているドライバーさんやガイドさんなどを手配してほしい。」
「安全・安心・上質な旅が提供できる自社と同じ価値観・質感のある旅行会社・パートナーと仕事がしたい。」
トラベルアドバイザーなどは抗体検査を受けていることが多い。
(自分たちが感染したくないだけでなく、させたくないため)
➡今後は検査の有無などが安心安全の第1ステップに。
求めるコンテンツや商品の変化は?
髙野さん
富裕層マーケットは元々、自分だけの特別な体験・空間を楽しむ方が多かった。地域の魅力を発信し、それらをつかみ取っていく良いチャンスです。
山田さん
商品やサービスの付加価値を上げる前提などはコロナによって少し変わったと思います。しかし、コンテンツを作るにあたって本質的・重要な部分はあまり変わっていません。旅行先として日本に来てもらうためには、1対1でのお付き合いにおいて、この人たちはどのような価値づけをすると来てくれるのか、という基本の姿勢は変わりません。
➡コロナ前後で大きな変化はない傾向。
プレミアム化に必要なことは?
すぐには海外の観光客が戻ってこない状況で、国内対象のツアーについても価格を上げていかないと、密を避けながらの運営はなかなか難しいですが、どのように単価をアップしていくと良いでしょうか?
山田さん
新規の顧客獲得は難しいですが、既存の客、信頼のある客の中で単価を上げていくというのは交渉によって可能です。コミュニケーションを取って単価を上げていくという発想です。
➡オフシーズンに単価を上げて十分なサービスをする、という発想が必要。季節による変化で、プレミアム化も。お客様との信頼構築は非常に大事。
リピーターのために必要な信頼の構築とは?
山田さん
お客さんとどれだけコミュニケーションが取れているか。
怖いのは、忘れられてしまうこと。より1to1に近い形でサービスを作っていくことが大切です。お客さまと絶えず関係を構築し、生涯、価値をもっと提供してほしいと思ってもらえるような信頼構築を目指す。商売のやり方としては王道ですね。
髙野さん
単なる高価格帯の商品ではなく、価格に基づく独自のストーリー・提案力などをどう磨いていくかが大事です。
山田さん
知らないことを解説してもらえると、その人を信頼するきっかけになります。
髙野さん
行動だけでなく価値観・ライフスタイルをもって、この人に合うか、いろいろな所の中から、なぜその場所に行くか、「行く価値のある旅先」となる必要がある、という理由付けができます。
山田さん
誰にでもお気に入りの場所があります。
その土地は助けたいと思うし、そこに、「困っている。助けてほしい」と言われたら助けるしかありませんよね。各地域のファンクラブの中でも上位20%は熱狂的な人がいます。
何かあった時のクラウドファンディングについても、ファンが良い効果を出してくれます。
➡信頼構築を重要視するビジネスモデルに変化
日本でこれから求められるガイドとは?
ところで、ガイド料金は日本と海外ではどのくらい違うと思いますか?
海外に行くと、ガイドに100ドル以上が当たり前。対して日本では、500円などの低価格や無料のボランティアがまだ主流です。
このように海外に比べて、日本はガイドの認識がまだまだ薄いのですが、世界全体としてガイドが評価されるにはどうしたらよいでしょうか?
髙野さん
自分で回るよりも上質なガイドさんの話を聞いていると、旅行の深みが増す。本当に地域の魅力を語れるガイドさんでないと、お客様の期待値を上回る感動商品の価値・クオリティは提供できません。
山田さん
安いからボランティアガイドを使うという旅行会社の流れがありましたが、近年は良いガイドさんの需要が高まってきています。最終的に生き残るのは質の良いプロのガイドです。
➡本当にサービスが良くて素晴らしいガイドなら、値段が高くても確実に売れる。世界各地の運営のサービス力を参考にするとよい。
Go To トラベルを活かすチャンスとは?
【 Go To トラベルとは 】
新型コロナウイルス感染症の流行が収束した後を見据え、 観光庁から出された 観光業や飲食業などの官民一体型の需要喚起・地域の活性化に向けたキャンペーンのこと。7月22日からスタートの予定です。概要はこちら↓
https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001351403.pdf
このGo To トラベルをきっかけに、withコロナ時代に対応すべきこと、できることは何でしょうか?
山田さん
Go To キャンペーンの中で、旅行会社は宿や旅館などとセットにして質の良い宿泊プランを作っていくべきです。しっかりと話し合い、どのようなサービスを出すか話し合い、客単価を上げられないか考える。他の事例を参考にして、体感しながら進めていく。マーケティングをしっかりやっても1000のうち4,5当たるかどうかです。1つやって終わりではなく、継続してブラッシュアップしていくことが大切です。どのような人に本当に来てほしいか、来てくれるなら本気でもてなす、という姿勢も大事。今、頑張れば、あとから単価を上げられるチャンスです。これまでと同じプランを単純に値上げしてGoToに合わせるのではなく、サービスの質を上げて同じ値段で提供するのがいいでしょう。
髙野さん
少しずつ旅行業の進化を発信していく必要があります。旅行者は、対面や近接のコミュニケーションの価値を改めて認識しています。合理的に出来ることは、デジタルを利用し、情報を収集し、本物の旅には地域を熟知したアドバイザーを活用し、ハイブリッドの旅を見つけることだと考えています。旅行者がタビアトに発信できるような仕組み作りをしていく。日本のインバウンドの伸びは観光庁・JNTO移住などの努力も一因です。成熟した海外ゲストの方に対してしっかりと上質な旅のメッセージが届くように情報発信をしていきましょう。
➡Go To トラベルはただのキャンペーンではなく、地域と宿泊事業者、体験事業者などが連携して旅行プランと情報発信を試していく大きなチャンス。
まとめ
第2部 パネルディスカッション①『withコロナの観光地づくり・プレミアム化』
ここでのまとめを編集部が振り返ります。
- 富裕層にとって日本は新型コロナウイルスによる死亡者が伸びていないことが幸いし、「比較的安全な国」として認識されている。
- 訪日は、依然として特別感がある。求めるコンテンツや商品の変化はコロナ前後で大きな変化はない。
このようにターゲットの傾向が把握できたことにより、今後に活かせるポイントが見えてきました。
- 安心安全の第1ステップとして「検査の有無などが重要」になってくる。
- 商品のプレミアム化には、「コミュニケーションと十分なサービス」が大事。
- 「信用信頼の構築がより重要視」され、リピーター獲得にもつながる。
- 金額だけでなく、高額に基づくストーリー、提案力などをどう磨いていくかが重要。
- 質の高いガイドなら、確実なニーズがあり付加価値も上がる。
- GoToトラベルは地域と宿泊事業者、体験事業者などが連携して旅行プランと情報発信を試していく大きなチャンス。
この時期を地域を再評価する良いチャンスととらえ、ホンモノ志向を目指して具体的な行動に移していけば、これからの観光を変えていけるかもしれません。