【1人60万円】なぜ日南市のインバウンド体験コンテンツは、驚きの高単価を実現できているのか?
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シンガポール人に超人気な町が宮崎県にある。
近年、増えつつある訪日観光のリピーター客。
定番の観光地巡りでは飽き足らず、より深く日本文化と接したいという彼らの間でにわかに人気を集めているのが、宮崎県・日南市です。
プロ野球の広島東洋カープ、西武ライオンズのキャンプ地
として国内で知られている日南市ですが、なぜ外国人のリピーター客に人気なのでしょうか?
国内向け観光で栄えた九州の小京都
宮崎空港から車で約1時間。
宮崎県・日南市は、江戸時代に飫肥藩の城下町として栄えた雰囲気を今なお残しています。
(出典:日南市 観光にちなんの旅)
プロ野球のキャンプ地の他に
「九州の小京都」という一面も持ち合わせていたのです。
そんな日南市はかつて
南国情緒を感じられることから「日本のハワイ」して新婚旅行先として人気を誇っていました。
海外旅行の一般化により国内観光客が減少
しかし海外旅行が身近になり、それに合わせて観光客も減少。
現在ではほとんどを県内旅行者が占め、旅行消費額が伸びず地域経済にとって苦しい状態が続いていました。
そこで、これまで培ったノウハウを生かしながら地域経済を活性する方法として考えられたのが、
アジアからの観光客を呼び込むことだったのです。
訪日リピーター客を引きつける「濃い地元コンテンツ」
用意されたコンテンツは下記の通り。
- 伝統民謡や、地元のお祭りで踊られる舞踊を披露
- 用意されたレンタカーを、カーナビを使って自ら運転する
- 非農業国のシンガポールでは体験できない、日向夏やミカン狩り体験
- 取れたての伊勢海老を地元の伝統的な食べ方で頂くプログラム
その地域でしか味わえない濃い体験型ツアーです。
3か月に1度の頻度で提供されるこの個人向けツアーは、
家族連れが中心で、毎回10組20~30名程度が参加しています。
驚くべき客単価
このツアーはシンガポール人富裕層をターゲットにしているのですが
驚くべきは、1人60万円~という高価格帯。
「より深く日本文化に接したい」というシンガポール観光客のニーズに応えた結果、訪日リピーター客を中心に口コミでじわじわと人気を集めており、
旅行会社からの評判も上々。
今では九州を周遊する20万円~60万円の高価格なツアーにも訪問地として組み込まれています。
地域のルールに基づいて進めたことが成功の秘訣
では高単価でも人気の日南市観光プログラムはどのように作られているのでしょうか?
外国人が苦手とする生食への配慮や、宗教対策等はもちろんですが、その最大の秘密は、地元有志による運営。
例えば、
- 城下町を手作りの甲冑を着て歩く人
- 観光ガイド
- 観光通訳
そのほとんどがボランティア。
こうした積極的な協力体制の背景には、地元の理解がありました。
日南市商工会議所をはじめ、地元の権力者との丁寧な話し合いのもと、地域のルールにのっとったプログラム作りを進めることで、
- これまでの暮らしを維持したい地元住民
- ありのままの暮らしを知りたい訪日リピーター客
双方のニーズを満たす「win-win」な関係の観光産業が実現したのです。
今後の日南市インバウンド産業の展開
今後の日南市インバウンド産業はどのような展開を見込んでいるのでしょうか?
日南市・商工政策課 マーケティング推進室 マーケティング専門官 田鹿倫基氏は、その新たなターゲットに、
「台湾や香港、そして中国からやってくるクルーズ船ツアー客を考えている」
と語ります。
古代から貿易地として栄え、今なお多くの漁港を抱える九州には、アジア最大級の港湾を誇る博多や、発着料の安さで知られる八代等を利用したクルーズ船が多く来航しています。
クルーズ船は一回当たりおよそ3,000人が乗船するため、消費額も多く新たな商機としても期待できるからです。
さらに、クルーズ船客のほとんどは初訪日ですが、日南ならではの新しい体験型プログラム
(例:日南の美しい砂浜でBBQ)
を提供することによって新たな訪日リピーターを獲得することが期待できます。
まとめ
かつて栄えた観光地が、インバウンド産業を契機に
既存の資源を活かしながら低コストで再興することができました。
訪日観光客は毎年堅調に増えていますが、急いで集客のために莫大な投資をしてコンテンツを作るのではなく
今あるものに目を向けて、じっくり作り込んでいくことが、リピーター獲得において重要であることを日南市の事例は教えてくれます。
今日の一句
”背伸びしない 地道な取り組み 人を呼ぶ”