【人口1億人】中国広東省エリアの2大都市 広州・深センをインバウンド集客視点で分析する。
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中国は広すぎるので分解して見るべし
訪日外国人全体の約3割を占める中国人観光客。しかし中国は広すぎる故に具体的なイメージを描くのが困難です。そこで、4月中旬に広東省出張時に撮影してきた現地写真を具体的なマーケットデータを踏まえながらご紹介致します。
(出典:baidu map)
広東省のマーケットデータ
訪日数中国国内第3位
まず広東省からの訪日数は、中国国内でも第3位と上位を占めています。2016年の訪日中国人が約640万人でしたので、単純計算で約64万人が広東省から訪れていることになります。これはタイ人訪日観光客の約7割に相当するボリューム。つまり1つの行政区で1国分ものインパクトを持っているのが広東省なのです。
(出典:中国旅行研究院・Ctrip「2016年上半年中国出境旅行者報告」)
人口が中国最大の行政区
約14億人もの人口を抱える中国ですが、広東省は人口数で頂点に立っています。その数なんと1億800万人。一方行政区の面積は日本の約半分。日本と同じくらいの人間が日本の国土面積の半分に収まっていることを想像すると、人がかなりひしめき合っているエリアであることが想像できます。
また、2005年→2015年にかけての人口増加率も+18%と省単位ではトップの伸び率。どんどん人が集積している成長エリア、それが広東省なのです。
(出典:中華人民共和国国家統計局)
GDP(国内総生産)最大の省
また省別のGDP(国内総生産)でも中国最大です。特に近年はアップルの生産拠点をはじめとした様々な工場が建設されており、急速に経済発展が進んでいる地域です。
(出典:中華人民共和国国家統計局)
1人あたりの可処分所得は約45万円
1人あたりの可処分所得額も中国の中でも高水準。ちなみに北京・上海が際立って高いのは、都市部のみに絞られている&金融業が盛んなためです。
(出典:中華人民共和国国家統計局)
2大都市広州・深セン
広東省には中国都市別人口ランキングTOP10にランキングする都市が2つも存在します。
- 2,800年もの歴史を持ち食文化が豊かな広州
- 近年エレクトロニクスの集積地として急速に発展している深セン
です。
順位 | 都市名 | 管轄省 | 人口 |
---|---|---|---|
1 | 重慶市 | 重慶市(直轄市) | 28,846,200 |
2 | 上海市 | 上海市(直轄市) | 23,019,148 |
3 | 北京市 | 北京市(直轄市) | 19,612,000 |
4 | 成都市 | 四川省 | 14,047,625 |
5 | 天津市 | 天津市(直轄市) | 12,938,224 |
6 | 広州市 | 広東省 | 12,700,800 |
7 | 保定市 | 河北省 | 11,194,379 |
8 | 哈爾浜(ハルビン)市 | 黒竜江省 | 10,635,971 |
9 | 蘇州市 | 江蘇省 | 10,465,994 |
10 | 深セン市 | 広東省 | 10,357,938 |
(出典:中華人民共和国国家統計局 2010全国人口調査結果)
特に深センは約30年で30倍も人口増加している急成長エリア。グラフで推移を見ていただくとその成長スピードに驚かされます。
(出典:深セン統計局)
アクセスは香港経由が安い
広東省2大都市である広州・深センですが、香港から地理的に近接しています。広州・深センと日本間ではそれぞれ直行便が出ていますが、LCCが就航し発着数も多い香港経由のほうが利便性が高いです。
香港国際空港から深センまでは鉄道以外にもリムジンバスが出ており、広州⇔深セン間は高速鉄道で約50分で結ばれています。裏を返せば、広州・深センの方にとっても、香港を経由すれば日本は行くのにそれほどハードルが高くない国であることが分かります。
広州の様子(1日目)
まず初日は広州の旅行会社さんから周りました。その合間に撮影した街の様子をお伝えします。
広州人はちゃんと並ぶ
これはショッピングセンター中のカフェの風景なのですが、尋常ではない数の方が並んでおります。中国人というと我が強く列に並ばないというのは偏ったイメージであることがこの写真からお分かりいただけると思います。それにしても店内にいるお客さんが感じられる心理的圧力はどれほどのものなのか気になります・・・。
立ち並ぶ高層ビル
高層ビルが多く立ち並んでいます。歴史ある地域柄なのか、かなり年季の入った建物も散見されます。
街にあふれる日本文化
広州市街の至る所で日本を感じるものがありました。ユニクロやセブンイレブン・イオンといった日本を代表する商業施設はもちろん、東野圭吾原作の容疑者Xの献身が中国版として映画化されていたり
ちびまる子ちゃん的なキャラクターが中華レストランのメニュー表に記載されていました。私たち日本人は広州にあまり馴染みがありませんが、広州の方は日本を身近に感じてくれているのかもしれません。
広州旅行会社から聞いた日本旅行のトレンド
昨年までの団体中心からFIT(個人旅行者)への変化が著しいのが広州マーケット。
初回訪日時に訪日マルチビザを取得した人も多いため、旅行会社を使わず自分でインターネット手配する人が増えてきているとのこと。
FITに人気なエリアは、東京、大阪、京都といったメイン観光地であり、地方への問い合わせはまだまだ少ない模様。現在FIT化が急速に進行中の香港や台湾の訪日マーケットの3,4年前のような様相でした。
広州⇔深セン間を結ぶ高速鉄道の様子
広州での旅行会社まわりを終えて、夜深センへ向かったのですが、驚いたのはその尋常じゃないくらいの混み具合。自動券売機に長蛇の列ができています。このような光景、日本では見たことありません。
また切符を買った後もすぐにホームに入れるわけではありません。出発時刻を迎えるまでゲートが開かないためしばらく待つ必要があります。1時間に3本のペースで発車しているため、10-15分は待つことに。
こちらが車内の様子。日本の新幹線を思わせる内装。約1時間弱電車に揺られた後、深センに到着しました。広州深セン間は距離にして約140kmですのでなかなかのスピードです。
深センの様子
新しい高層ビルが立ち並ぶ
人口が急激に増加してこともあって、深セン市街には高層ビルが次々と建設されていました。ちなみに人口密度は上海や・港を上回っています。
中心市街地はこの通り非常にきれいな町並みです。雑多な印象はありません。深センでは最近政府の後押しもあって様々なIT会社スタートアップが誕生しているのですがその片鱗を感じました。
また、日本のことは知ってるけど日本人との接点はほとんどないようで、道行く人に話しかけたところ驚かれました。
急速に開発された名残
急速に開発されたせいか、ショッピングセンターの奥側には緑地が残っています。数年後また訪れた際には別の施設ができているかもしれませんね。
巨大秋葉原
深センはエレクトロニクス産業の集積地だけあって様々な電子部品が売られています。広さにして秋葉原30個分ともいわれるこの電気街エリア。部品を買い集めればiPhoneが組み立てられてしまうほどパーツが揃っているんだそうです。
深セン旅行会社から聞いた日本旅行のトレンド
広州と同様の状況で、昨年までの団体中心からFITへの変化が著しいマーケット。
初訪日のお客さんには、ビザの手配だけではなく、ホテルとエアーのセットで販売しているため、交通パスやテーマパークチケットなどのFIT向け商品の需要は高かったです。
FIT化が進行するにつれて体験コンテンツや地方での着地型観光コンテンツは今後伸びてくることが予想されます。
香港の状況
台湾と並ぶスピードでFITが進行している香港。広州・深センより地理的に近いため香港の旅行会社も訪ねてみました。
香港旅行会社から聞いた日本旅行のトレンド
完全にFITのマーケットになっていました。募集型団体をやめ、FIT向けのパッケージやチケット類の商品を展開しているところが多く、多様化するFITのニーズに合わせて、商品もバリエーション豊かに。
主要観光地だけでなく、鳥取など地方でも直行便があれば、着地型観光ツアーの商品を取り扱ったりなど、ますます日本全国どこにでも行くようになっている印象。また、富裕層向けにクルーズの取り扱いが増えている旅行会社もありました。
信州松代まで足を伸ばす香港人
下記写真は香港を拠点にする旅行会社EGLツアーの受付フロントなのですが
GW中に訪れた長野県松代(真田信之の本拠地)の信州松代ロイヤルホテルではこのマークをした香港人観光客を多くみかけました。
▲受け入れるホテル側もお風呂場の整髪料に至るまで多言語対応
私達日本人にとって特別メジャーな観光地ではない信州松代まで香港の方は足を運ばれているのです。
おまけ:どこでもレンタルサイクル
広州・深セン両方で頻繁にみかけたのがこのシェアサイクル。スマートフォンで電子決済することでロックが外れその場で使えるようになります。使っている様子をみると、どこでも乗り捨てして良さそうです。中国の決済文化はここまで進んでいるのかと目を丸くした光景でした。
まとめ
中国有数の都市広州・深センを統計データと現地写真合わせてご紹介しましたが、思いの外発展している地域でした。FIT化が急速に進行する香港とも経済的な結びつきが強く地理的に近いため、FIT化の進行も早いでしょう。さらに香港人口約700万人に対し、広州・深センは合わせて約2,300万人にものぼる巨大市場。潜在的な可能性を大きく感じた広東省出張でした。
今日の一句
”ポテンシャル 第二の香港 広東省”