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2022/01/11 国別対策

JIFオンラインセミナー・レポート『着地企画で月間500人の集客回遊~兵庫県豊岡市城崎(きのさき)のぷちたび・EVバイクの取り組み~』

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    JIF(日本インバウンド連合会)によるセミナー『着地企画で月間500人の集客回遊~兵庫県豊岡市城崎(きのさき)のぷちたび・EVバイクの取り組み~』がオンラインで開催されました。

    今回は、兵庫県豊岡市城崎のぷちたびを運営する株式会社たびぞう代表取締役 大林大悟氏に、インバウンドの先進温泉地である城崎温泉の取り組みについてお話いただきました。

    withコロナ時代の「今、できること」を考える

    吉田:城崎と言えば、温泉街として有名な城崎温泉があり、様々な人が訪れ、回遊するイメージがありますが、滞在時間が短く、交通手段も限られているという課題があります。そんな中、大林さんは二次交通の活用に先進的に取り組まれており、withコロナの中で、「今、できることはないか」を考えて、短期間で新たな着地型観光のあり方を作ったフロントランナーでいらっしゃいます。

    そんな、withコロナの時代に培ってきたノウハウや今後に向けた展望について、お話いただきたいと思います。それでは宜しくお願いします。

    若者に大人気!「城崎ぷちたび」とは?

    大林さん:早速ですが、弊社の城崎の企画についてご紹介させて頂きます。信じられないかもしれませんが、城崎温泉のはずれにあるただの田んぼの真ん中に、「凄い」とか「こんなの初めて」といった若い女性の声が響いています。そんな、ただのあぜ道で集客させていただいたのが、12ヶ月で2,000名以上。弊社は、田舎町の景色を商品化することに成功したと思っています。

    まずはじめに、弊社の成り立ちについてご紹介します。私はサラリーマンを経て、2019年12月に株式会社たびぞうを設立しましたが、わずか3ヶ月でコロナ禍になりました。当時は売上ゼロ、人の流れもゼロ。弊社は社員旅行や団体旅行だけを取り扱っていたので、致命的な打撃を受けました。そこで、私は勇気を出して一旦それらを諦め、「旅のセルフ化への価値創造」にチャレンジしました。分かりやすく言うと、これまでの提供側と供給側のミスマッチを改善してみた、ということです。ご存知のように、どんな状況でも売り上げを確保しなければ、会社は存続できません。だからこそ、この決死のチャレンジが生まれました。

    「提供側の都合」と「顧客側の欲求」の見直しがカギ

    コロナ禍で開発された城崎ぷちたびは、「提供側の都合」と「顧客側の欲求」がこれから必要とされるのではないかと考え、徹底的に見つめ直しました。イノベーション理論に基づいて、バリューイノベーションを活用し、旅の形を再設計する上で差別化と低コストを同時に実現したのが今回の事例だと考えます。

    再設計する際は、「取り除く」「減らす」「付け加える」「増やす」の4つのアクションを行いました。この中で1番大事だったのが、「取り除く」でした。具体的には、着地型観光で最も重要とされる、地域の魅力を伝えるガイドさんを「取り除く」という決断をしたのです。

    元々、私は城崎温泉で外国人向けのサイクリングツアーをやっており、チラホラお客様にお越しいただいていたのですが、すぐにコロナ禍になったので、一旦ツアーをゼロから見直そうということで、外国人の方が喜ばれていた当たり前の景色を、日本人の若い方にお見せしたのです。まず、原風景に価値を加えて、人の通らない道を魅力的に伝えるために、移動ツールを変えて、地域の魅力の伝え方や見せ方を工夫しました。

    代表的なものの一つ目は、移動ツールとしての電動モビリティーです。これは、エンジン音などの音がなく、誰でも乗れて可愛いため、インスタグラムで映えて、自然と集客してくれるきっかけになっています。

    二つ目は、弊社で開発した「ぷちたびマップ」です。お客様だけで冒険いただくことをコンセプトにした新しい旅の形「城崎ぷちたび」。弊社では、セルフガイドツアーと呼び、こちらのマップを作成しました。マップの中には、田舎らしい仕掛けや四季折々の見所が満載です。

    秋には、「ススキが見頃ですよ」など、弊社のスタッフから具体的な見所もご紹介しています。例えば、川のせせらぎが島に当たって、ポチョポチョ聞こえるところ。一年前までは観光客がゼロでしたが、「ポチョポチョPOINT」と名付け、「水の音を聞くと、すごく癒されますよ」と伝えるだけで、大人気のインスタスポットになりました。また、田舎すぎて周りに民家もない下り坂。ここで足をパーっと広げて「あ~!」ってみんなで叫ぶと、学生の頃を思い出せて楽しい、というような仕掛けも入れました。これが「あ~の坂」です。みんな城崎温泉の近くでやっています。

    このように視点を切り替えて、田舎だからこその物語として伝えることで、商品化に成功してきました。視点を変えれば、様々な何ともないものが、地域資源になっていく。こうした地域資源の発掘のやり方が弊社のノウハウだと考えております。この度、2021年11月に平仮名で「ぷちたび」で旅行業における商標登録を取らせていただきました。

    withコロナにおける集客のための3つの工夫

    withコロナにおける集客のために大事だと考えていることは、「商品開発」「情報発信」「事業推進」の3つを自社でやることです。お客様の生の声を実際に聞いて、それを活かし、事業を運営しています。

    コロナ禍のどん底な状態からスタートしましたが、今ではお客様もすごく多くなりました。1番嬉しかったことは、「城崎の新しい楽しみ方が増えた」と、地域の方々やお宿の若旦那さん、観光協会さんにお喜びいただけたことです。現在は専門家としても、各地に行かせていただいており、地域の資源を発掘するお手伝いをするBtoBの事業もさせていただいています。

    SNS活用以降の観光の変化

    城崎温泉自体には年配の方々が多くいらっしゃっていますが、弊社には20代前半から30代前半ぐらいまでの若いお客様が多いです。ご予約については、事業を推進していく中で比率が少しずつ変わっていったのですが、最初は当日申し込みの方が7割、事前予約の方が3割ほどでしたが、今は半々ぐらいで、事前に予約される方が増えています。

    発地型の集客とは営業のやり方が全く異なり、現在集客の9割以上がインスタグラムを見たという方で、その半数ほどのお客様はトップページに貼っているURLからお申込みいただいています。城崎温泉に置いている電動バイクモビリティーに気付く人は、だいたいインスタグラムを見ている方ですね。

    インスタグラムも2020年7月に始めて、誰にもやり方を教えていただくことなく、どうやったら売れるかなど、0フォロワーから考えてやりました。SNSでは、フェイスブックやツイッターなど全て試しましたが、うちはインスタグラムとの相性が良かったです。インスタグラムのハッシュタグからの検索なども、城崎温泉にお越しになって、「何かないかな?」とお客様が思われた時に、絶対にうちのバイクに行き着くように工夫しています。

    インバウンドに向けての展望

    吉田:貴重なお話をありがとうございます。今回はJIFインバウンド連合会ということで、インバウンドに向けての展望もお聞かせください。

    大林さん:今までもインバウンドの方々向けに、電動モビリティーを使った事業をしてきました。城崎温泉では、コウノトリの生息地域を保全する活動と観光の融合「コウノトリツーリズム」というエコツーリズムを行ってきましたが、インバウンドの方々向けには、そうしたエコに関するストーリーを深めていったり、山陰海岸ジオパークという自然が溢れた所をアピールしています。

    同じエコに関するストーリーの観点で言っても、地域として「エコツーリズム」という一貫性を持って商品を作っていきたいと思っています。また、城崎温泉は元々そういった地域でしたが、今後は城崎温泉以外の日本の原風景も、1つでも多く商品化して、インバウンドの方々に素敵な日本の自然を体感いただけるような商品を作っていきたいと考えています。

    最後に

    吉田:今ある地域の魅力を再発見し、しっかりとプログラムに落とし込む。そして、今、国内のお客様向けにやっていることが、未来のインバウンドに繋がっていく。そんな、未来が開けていくような素晴らしいお話をいただきました。

    これから、観光業に携わる多くの皆様が新たな取り組みをされようとしていらっしゃいます。そんな中で、大林さんのこのチャレンジや実績を伺うと、コロナ禍の今でも色んな事にチャレンジしていくことで、状況を変えていけそうだという希望をいただけたように思います。とても重要なポイントの詰まったお話をありがとうございました。

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