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2021/08/05 国別対策

JIFオンラインセミナー『インバウンド復活に向けたチャレンジ2021』。Attractive JAPAN大賞の受賞者による「今の、そしてアフターコロナ期のサスティナブルな体験観光」をレポート

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    JIF(日本インバウンド連合会)によるセミナー『インバウンド復活に向けたチャレンジ2021』がオンラインで開催されました。第一部の実践トークライブでは弊社吉田がモデレーターをつとめ、第2回Attractive JAPAN大賞を受賞した方々に「今の、そしてアフターコロナ期のサスティナブルな体験観光」をテーマにお話しいただきました。

    スピーカー:
    福井五大 氏(八ヶ岳アドベンチャーツアーズ)
    山田立 氏(株式会社つくる/代表取締役)
    村田隆昭 氏(津和野町商工観光課/課長補佐)
    楠木泰二朗 氏(琴平バス株式会社/代表取締役)
    森高一 氏(NPOエコツーリズムセンター/共同理事)

    モデレーター:
    吉田博詞(地域ブランディング研究所)

    サスティナブルな体験観光を目指して

    吉田:Attractive JAPAN大賞は、全国の体験アクティビティを紹介している弊社サイトの中で、予約件数の伸び率、口コミの評価が高い、新たな取り組みをしている、地域貢献度といった項目に対する評価及び審査員の評価を総合して選出しています。

    今回のJIFセミナーでは、それぞれの受賞団体の皆様から取り組み概要のお話をいただいて、どのようなところを工夫されているのか、地域の持続性を担保されているのか、などのお話を伺っていきます。まずはAttractive JAPAN大賞を受賞されました八ヶ岳アドベンチャーズの福井様、よろしくお願いいたします。

    マイボトル持参、この地域特有の自然について学びの要素も取り入れ

    福井さん:長野県白樺湖の出身で、幼い頃から30歳までフリースタイルスキークロスの選手をしていました。高校卒業後しばらく神奈川県の会社に所属し、2年前に白樺湖にUターン。両親が湖畔でペンションを営んでおり、二代目を引き継いでいます。標高1450m、一周4kmの白樺湖を利用し、自然体験を含めたガイドツアーもやっています。2008年からやっているカヌー体験は、年間来場者数が約4000人です。

    e-バイクツアーは昨夏にスタートしました。湖畔には、車道とは別にサイクリング&ランニングロードがあるので、そこを走ったり、展望台へ上がって景色を見たりします。天候によってはビーナスライン雲海ツアーも行っています。

    ツアーではサスティナブルを大事にしていて、マイボトルを必ず持参していただきます。地下200mの湧き水を汲んで、水分補給に使います。見るだけでなく、自然と触れる機会を増やすことで、自然への敬意を持ち、環境に対して敏感になれると思います。湧き水ボトルをきっかけに、まちでもペットボトルではなくマイボトルを使う習慣を普及できたらいいなと思っています。ツアー中の休憩ポイントでは、高山植物など、この地域特有の自然について説明し、学びの要素も取り入れています。

     e-バイクは新しいデンマークブランドのファットバイクを利用しています。ビーナスラインは大型バイクや車は走りやすいと評判ですが、歩道が少なく、多少路面が悪い場所もあります。太めのタイヤの自転車なら、お客様もより安全に楽しめると思います。

    今後の展望として、サイクリングと別の文化体験を掛け合わせたツアーもすごく面白そうだなと思っています。例えば、森林体験、野鳥観察、夜だったら星空観察を組み合わせたり。この辺りは製造業も盛んなので、クラフトビールの工場見学なども展開していけたらと思っています。

    吉田:続いて、地域アイデンティティ賞を受賞されました株式会社つくるの山田様、よろしくお願いいたします。

    土地の技術を次の世代にバトンタッチしてくために観光とつなげる

    山田さん:本業は、銅板を叩いてやかんや急須を制作する町工場の営業責任者です。長年、職人の作業現場を見学するツアーを行っています。それをエリア全体に広げようということで、2013年から「燕三条工場の祭典」という4日間のイベントを毎年秋に開催しています。去年はコロナで開催できませんでしたが、一昨年の第7回目は4日間で5万6000人ものお客様が訪れました。ただ、祭典は1年に4日間だけの打ち上げ花火みたいなもので、残りの361日の集客が課題となっていました。

    年間を通してお客様を迎える体制が必要だと感じ、株式会社つくるを新しく立ち上げ、昨年の5月に地域限定で旅行業の免許を取りました。通念で見学できる工場は、エリア全体で20数軒あります。普段は非公開の作業現場も特別に案内し、食なども絡めながら、私たちだけができる地域密着型のガイドをしています(オープンファクトリーと呼んでいます)。

    コロナ禍ということもあり、昨年の秋からまだ15件ほどのアテンド実績しかありません。大人数を迎えられるキャパシティもないし、ガイドの人数も少なく育成もまだまだで試行錯誤しています。そんな活動を少しずつ積み重ねていくことが結果として、この土地ならではの技術、こだわり、あるいは職人そのものを伝えられるのかなと思います。オープンファクトリーを一つの手段として、この土地の技術を次の世代にバトンタッチしていきたいなと考えています。

    私たちや現場の職人のガイドで制作体験をし、火花が散るところを間近で見学していただきます。熱を感じたり、薬品の匂いを嗅いだり、五感で楽しむことができます。3、4軒の工場を周った後には、農家や古民家で地元の食事を提供し、飽きない工夫をしています。

    燕三条の最大のアドバンテージは、食に関連する商品を作ってることだと思います。例えば、カトラリー、包丁、鍋、釜、さかのぼれば鍬や鍬などの農耕具を盛んに作っています。調理器具を作る現場を見た後に農家に移動し、それらを使って試し切りや収穫体験、試食など、食が関連するとお客様の興味関心が広がってきます。お客様がすでに持っていたり、欲しかったアイテムをたくさん作っているので、親近感を持って参加していただけていると思います。一般的に、目玉となる工芸品は一つか二つのアイテムに集約されると思いますが、燕三条では金属を様々なアイテムや素材に加工しているので、何軒まわっても飽きることがないと思います。 

    できあがったばかりの活動に評価をいただいてありがとうございます。今後の展望は、少人数のツアーを地道に実施し、この活動を認知していただくことです。結果として商品の売り上げにつなげ、職人志望の移住者が増えていくような活動をしていきたいなと思ってます。

    吉田:続いて、SDGs賞を受賞されました津和野町商工観光課の村田様、よろしくお願いいたします。

    地元ガイドが案内し地元食材を提供、地域の良さを伝える

    村田さん:津和野町は島根県の西端で、山口県との県境付近に位置しています。津和野町の観光客数は年間約120万人ですが、団体客がバスで訪れ、1~2時間まちなかを見て次の地域に移動するという観光スタイルがほとんどです。津和野ファンをしっかり獲得して、滞在時間を伸ばし、高付加価値の観光にシフトしていくことが大きな課題です。

    観光庁誘客多角化事業の中で、津和野町は電動自転車を使った8つのコンテンツを開発しました。アフターコロナを見据えて、屋外で楽しめる、人気の高い自然体験がいいのではないかと考えました。

    津和野は城下町だったので、その地に根差したものがしっかり残っています。150年前、森鴎外が少年時代に見ていたであろう、津和野の風景を描いた絵が100枚残っています。日本遺産の「津和野今昔百景図」は、その絵と今の津和野を見比べて歩くことができ、ほとんど変わらない当時の姿を今でも見ることができます。町民が不断の努力で守ってきたことを、このツアーを通じてみなさんに是非知っていただきたいです。

    「城跡の登山ツアー」は地元のネイチャーガイドが案内しています。シンボルである津和野城はもう石垣しか残っていませんが、そこから津和野のまちを俯瞰することができます。まち全体が赤褐色の瓦(石州瓦)の屋根で構成される景色が見られます。ガイドは津和野町の自然と歴史、伝統を伝えるとともに、環境にも配慮し、ゴミは持ち帰り、植生の植物を大切にしようという説明をしています。ガイド単価についても一定の設定をしております。朝ごはんは「うずめ飯」という特産で、全て地元の食材を使っています。これらがSDGs賞に選んでいただいた要因だと思います。津和野の雰囲気、食、体験、そうしたものを一体的に体験できる点を評価いただき、非常に嬉しいです。

    このほかのコンテンツも、さらに質の高いものに磨き上げていこうと考えています。まずはガイドの教育システムを構築すること、次にYu-naという新しいツアーをブランド化すること。津和野の方言でゆっくりしてくださいねという意味で「ゆうにしんざい」と言います。それを文字ってYu-naというブランド名にしました。ゴールデンウィークに自主企画を行い、方向性も見えてきました。SDGs賞に恥じないよう磨き上げて、官民一体でより良いツアーにしていきたいと考えています。

    吉田:最後に、地域イノベーション賞を受賞されました琴バス株式会社の楠木様、よろしくお願いいたします。

    オンラインからリアルへつなげたい、世界中からファンが集うバスツアー

    楠木さん:コロナ禍で会えないお客様にどうしたら会えるだろうと考え、オンラインバスツアーができました。元々は地元のお客様を対象に始めたのですが、様々なメディアでご紹介いただき、今では全国からご参加いただいています。一番最初は島根県の石見神楽を見にいくツアーでした。付き合いのあった島根県の仲間が相談に乗ってくれて、現地中継をお願いしたのがきっかけでした。約50コース用意し、募集ツアーと団体貸切りツアー合わせて約5000人に参加していただきました。インバウンド向けの英語ツアーはアメリカのIACE TRAVELさんと提携しています。これまでに四国や鹿児島、京都などを案内しました。

    全てのサービスに共通して「創客」にこだわっています。創る客という造語で、ファンやリピーターを作るという意味です。ツアーを企画する際には、一回限りではなく何回もきてくれるお客様を作ることをテーマにしています。その中で大事なのは、やはり人と人とのコミュニケーションだと思います。例えば40名様のバスツアーだと、40対1のコミュニケーションではなく、一対一のコミュニケーションを×40人とする「One to Oneのコミュニケーション」、「Only youのおもてなし」をいかに作っていくかが大事になると思います。オンラインバスツアーの定員は15名。しっかりとコミュニケーションの取れる範囲内で人数設定しています。

    オンラインバスツアーで完結ではなく、実際に地域に足を運んでいただくことを目指して取り組んでいます。現地ガイドさんとのオンライン上でのコミュニケーションをきっかけに、将来落ち着いて旅行に行けるタイミングが来たら、そのガイドさんを尋ねて地域を訪れていただくことが一番のフックになると思っています。自分が何度も訪れ、本当に思いを寄せる場所には、友達や親しい人など会いたい人がいます。オンラインバスツアーが関係人口をつくるきっかけになればと思います。

    先日公開された「竜とそばかすの姫」というインターネット上の仮想世界がテーマ映画を見て、オンラインでの可能性ってまだまだいろいろありそうだなと感じました。将来バーチャルツアーもできるかもしれないなと思います。ちなみにこの映画、ちょこっとだけ琴バスが映っています。

    まとめ

    吉田:発表いただいた4つの地域の皆さま、ありがとうございました。

    今回受賞された事例に共通して言えることは、ウィズコロナで先が見えない1年間に、1人ではなく地域を巻き込んで活動されていたことです。熱気があり、いろいろな人が想いを持ちながら、地域のネットワークでいろいろな活動がどんどん生まれています。地域の持続性は、地域の方が地域の誇りを持つことで実現できると思います。今できることを準備していれば、感染が少しでも抑えられた時に、非常に面白いものになっていくのかなと感じます。

    ご紹介させていただいた体験は、弊社のサイトでも予約できます。感染対策もしっかりと展開していただいています。緊急事態等で動きづらい部分もあるかと思いますが、地域から地域の移動で経済をまわしていくことにご興味がある方は、ぜひ次の時代の参考にしていただき、各地訪ねていただければ幸いです。

    (レポート:菅 陽子)

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