【観光立国フォーラム2017レポ】インバウンドは「公共圏」を回復させる
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2017年11月17日、日本橋にて弊社が理事を務めます日本インバウンド連合会(JIF)主催の観光立国フォーラムが開催されました。
今回はその内容をご報告いたします。
観光庁が考える観光立国の意義
基調講演は、観光庁 審議官 瓦林康人氏。
観光立国の意義は四つがあります。
- 力強い経済を取り戻すための、成長戦略
- 観光客流入による地域発展
- 国際社会における日本の信頼性・地位向上
- 日本人自身の誇り再認識
具体的には下記の通りです。
①訪日外国人旅行消費額は傾向的に上昇し、2016年は3兆7,476億円と電子部品の輸出額を超える規模となっています。2030年の推計は15兆円となっており、自動車産業の生産額を超え、日本の基幹産業そして日本の観光先進国化が期待されます。
②我が国は現在、少子高齢社会に陥り、東京一極集中もあいまって地域の衰退が深刻化しています。地方に訪日観光客を呼び込むことで、雇用や新規に企業を創出し、地域社会の再生・経済発展が実現できます。
③また、単に経済発展だけでなく、心情面でも日本を理解してくれる方が増えることで日本の国際社会における地位が向上します。
④さらに海外からの評価によって自分たちにやっていることに誇りが生まれます。
観光立国は我が国に良い循環をもたらしてくれるのです。
ただ、公衆無料Wi-Fiの不足や、英語でのコミュニケーションが図りにくいなど、ハード・ソフトの両面で改善点を抱えております。
観光庁は平成28年に「明日の日本を支える観光ビジョン」を策定。制度面から、日本の観光先進国化をサポートしています。
インバウンドが「公共圏」の復活に寄与する
続いての講演は日本インバウンド連合会(JIF)理事長 中村好明氏。
少子高齢化に直面し、地縁や血縁が失われつつある日本では、公共圏が希薄化し子どもの貧困の連鎖という問題が起こっています。
具体的には、日本の相対的貧困比率は先進国の中ではワースト1位です。
(出典:OECD統計データ 貧困率2012)
こういった問題の突破口が、インバウンドによる地域振興。
私が定義するインバウンドとは、観光に留まらず日本に集まるヒト・モノ・カネ・情報と広い概念となっています。
日本をより世界へ解放し、これから産まれてくる”22世紀の”世代のために、社会を変革していくことが肝要です。
インバウンドが貧困家庭を救う
今回のフォーラムではインバウンドとは一見関連のなさそうな業界の方にも登壇いただきました。
講演者は特定非営利法人キッズドア 理事長 渡辺由美子氏です。
キッズドアは貧困家庭の子どもの学習支援を行う非営利法人です。
中村会長が前述したように、日本は子どもの相対的貧困率が深刻。
具体的には日本の子どものうち、実に13.9%が貧困状態にあり、OECD加盟国平均13.3%を上回っています。
(出典:NPO法人キッズドアHP)
内訳をみると貧困にある子どもの8割が母子家庭。
親が非正規雇用のために安定した収入を確保できず、さまざまな悪影響を生み出しています。
その最たるものが貧困の連鎖。
経済的に困窮する世帯は家計全体における教育費の割合が低く、高等教育を受けることができないために、親同様に子どもも非正規雇用となるなど、貧困からの脱出が難しい状況にあります。
私たちキッズドアは貧困を抜け出す支援の1つとして彼らに英語教育や場合によっては留学までのサポートを行い、将来のインバウンド事業の担い手の育成機能を担うことで貧困の連鎖を断ち切りたいと考えています。
ハコではなく人材をつくる
一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス 代表理事
エリア・イノベーション・アライアンスは公的資金に頼らず、民間資金のみで地域振興を担う人材を輩出し、事業を起こしていくかを信条としている企業です。
従来の自治体主導の地域振興は、需要の見込みがないのにも関わらず大規模なハコモノを作り、資金を無駄にするだけという採算性のない手法がほとんど。
真の地域振興策はハコを作るのではなく、ハコで活躍する人材の輩出が必要であると考えます。
地域の振興は大規模なハコモノを作るだけでは好転しません。
ひとつひとつは小さくとも、着実に利益をあげ再投資をすることが地方創生の真髄です。
トークセッション:解決策を考える
最後は関係者によるトークセッション。
パネリストは下記のとおりです。
- 司会進行:中村好明氏
- 特定非営利活動法人 キッズドア 理事長:渡辺由美子 氏
- 株式会社ジェイイノベーションズ 代表取締役社長:大森峻太 氏
- 観光カリスマ JTIC.SWISS 代表:山田桂一郎 氏
英語ができることでアクセスできる情報が増え、異文化交流の機会が増えます。
この体験こそが良い人格の醸成につながります。
また、英語を使うことで、地域資源の魅力を深いところまで外国人のお客様に伝えることができます。
そうすることで地方創生にプレミアムな価値が生まれ、観光消費額をさらに増やすことができるのです。
貧困家庭の子供たちも英語習得によりインバウンド経済効果の恩恵を受けることができるでしょう。
インバウンドのインパクトを通して、いかに地縁・血縁が希薄化した社会に新しいネットワークを創るか、そして貧しい人も含めて社会を豊かにするかが重要です。
まとめ
インバウンドといえば経済効果がまず第一に浮かんできますが、今回のフォーラムでは子供への教育機会に与える影響や将来のインバウンド産業を支える人材といった幅広い分野まで話題が波及。
目先の消費額だけでなく、それらがもたらす文化・精神面への好影響を考える契機となった2017年観光立国フォーラムでした。。
今日の一句
”インバンは 教育格差も 解決す”