【イギリス在住25年のスタッフが語る】イギリスのクリスマス事情と旅行
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はじめまして、地域ブランディング研究所の佐藤です。
私は、2020年11月まで25年間、英国・ロンドンで暮らしていました。今回は、長年過ごした英国を中心に、欧米のクリスマス事情、旅行などについてお話しします。
日本とイギリスの習慣の違いから、イギリスをターゲットにする際に気をつけた方がよい点やトレンドなどについても、ポイントをお伝えしたいと思います。
「クリスマス休暇」と「イースター休暇」は一年で一番大切な休暇
みなさんは、年末年始休暇はどのように過ごされましたか?このコロナ禍においては、自宅で過ごされたという方が多かったかもしれませんね。
ご存知のとおり、日本人にとって年末年始は特別な時間です。学校や多くの会社が休みになり、例年ですと新年に合わせてたくさんの人が帰省する期間でもありました。大掃除や年越しそば、初詣、おせち料理など日本独自の文化も数多くあります。
イギリス人にとっても、この年末年始休暇は一大イベントです。
実はあまり知られていないかもしれませんが、イギリスの祝日は日本と異なり、年間での祝日の数は少ないのが特徴です。日本では法律で定められた祝日は年間15日あるのに対して、イギリス(例えばイングランド)では、年間で8日しかありません。そのため、クリスマス休暇はイースター休暇(3月終わりから4月終わりにかけての4日間)と並んで、一年で一番大事な休暇と言っても過言ではありません。
また、イギリスは、イングランド・ウェールズ・スコットランド・北アイルランドという4つの連合王国から成り立っているため、その地域によって祝日が微妙に異なっています。例えば、イギリス統一の祝日もあれば、地域によって異なる日もあります。スコットランドでは伝統的に新年の祝いを重要視しており、各都市でホグマニーという大きなイベントを行うほか、2日も祝日としています。
イギリスのクリスマス期間は12月25日から1月6日までだが、1月2日から通常通りに
クリスマス期間は、12月25日から1月6日まで。クリスマス・リースもこの日まで飾られます。クリスマスシーズンの終わりを告げる、最終日の夜を「十二夜」と言います。イギリスの劇作家シェークスピアの喜劇に、同名のものがありますね。
しかし実際は、1月2日(もしくは1日から一番近い月曜日)から通常通りとなります。元日は、日本とは違って大して重要な日ではなく、事実として英国では、1973年までは平日だったほどです。
日本では、お正月期間を元日から7日(関東中心)、または15日までとしています。正月に飾る松飾り(門松)を立てておくため、「松の内」とも呼びます。
クリスマスメッセージを送ることは有効な手段
日本で年賀状を送るのと同じように、英国でもクリスマスカードを送る習慣があります。昨今はSNSで済ませる人が増えており、カードを送る全体の量は減る傾向にあります。
決定的な違いは、年賀状は元日以降に届くのが一般的なのに対し、クリスマスカードはクリスマスイブ(25日は郵便が休みのため)またはそれよりも前に届かなければいけない、とうことです。12月以降なら早くても構わないのですが、遅くなっては絶対ダメです。
この時期にインバウンド訪日客向けに、クリスマスメッセージを送ることも効果的です。カードを送る場合は、到着時期を考えて早めに準備しておくことが大事です。
クリスマス前は大事な商談は避けて
クリスマスは欧米人にとって大切なイベントです。最近では、10月終わりごろから(欧州で夏時間から冬時間に変わる時期)クリスマス関連の商品が売り出され、11月半ばにはクリスマスのイルミネーションが飾られます。
12月になるとクリスマスイベントが各地で催され、12月2週目以降になると街も彼らの意識もクリスマス一色になります。この時期になると、大人もまるで子供に戻ったかのように浮わついた気分になるので、10日過ぎ(2週間前)から仕事は滞ります。クリスマス直前には、欧米人には決して大事な仕事を依頼しないようにする、というのも大事なポイントです。直前には契約の話など、あまりシリアスな内容には持って行かない方が良いでしょう。
休暇は基本的にカレンダー上の休みは12月25日・26日及び1月1日の3日間です。ただし、多くの人がクリスマス直前の週末から1月1日に一番近い日曜日まで休むので、オフィスも閉めてしまうところが多く、営業中の場合でも社員の多くが不在にします。
クリスマスはキリストの生誕を祝う日(誕生日ではない)ですが、イギリスでも宗教的な意味合いは年々薄くなっています。クリスマスに教会に行く英国人は、この最近10年間の平均で、毎年250万人ほどだそうです。英国の人口は約6,700万人なので、割合でいうと全体の約3%しか行かない、ということです。
これに対し、日本のお正月の初詣はどうでしょうか。明治神宮・川崎大師・成田山というTOP3の神社では、それぞれ参拝客が300万人以上いることを考えると、日本のお正月の方が宗教色の強いイベントと言えるかもしれませんね。
クリスマス休暇に人気の旅行先は暖かいエリア
一般的に、英国人はクリスマスを家族で過ごし、メインイベントはイブの夕食で七面鳥を食べるのが定番です。元々、親子が離れて暮らす習慣のある英国では、クリスマスは家族親戚一堂が集まる、年に一度の一大イベントです。ですので、今回のコロナ禍による移動制限、一度に会合できる人数制限は、かなり深刻な影響を与えました。
クリスマス期間の祝日は25日と26日(ボクシングデイという祝日です。スポーツのボクシングではなく、プレゼントの箱(ボックス)に由来)、および1日だけですが、多くの人はクリスマス直前の週末から、1月最初の週末まで休暇をとります。その期間に2,000万人もの人(国民の3人に1人)が家族や旅行先で過ごすために移動します。
旅行先として人気のあるのが、近場ならイタリア・スペイン・南仏などの地中海沿岸。遠くならカリブ海諸国とタイなどの東南アジア等、暖かいエリアです。
ちなみに元日(というよりも年越し)は、友人同士でのパーティーが多いです。これは、クリスマス=恋人同士のイベント、というイメージもある日本とは真逆と言っても良いかもしれませんね。
クリスマス期間中は公共交通機関もストップする
このように、クリスマスは家族で過ごすためのイベントで、またイギリスでは数少ない宗教に絡んだイベントでもあるため、クリスマス(25日)は、公共の交通機関からスーパーに至るまで、全ての活動がストップします。テレビも基本的に特番と映画だけになります。
本場のクリスマスを体験したい、という日本からの旅行客が何もやることがなくなってしまった、という話をよく聞きますが、このためです。かつての日本も、お正月はお店も閉まっていていましたし、テレビも特番ばかりで初詣をする以外に他に何にもやることがなかったのと一緒ですね。
26日は祝日ですが、25日とは扱いが違って日曜日と同じような営業時間となりますが、お店は開いています。また、伝統的に冬のセール開始日です。今はブラックフライデーなどの普及でかつてほどのインパクトありませんが、結構な掘り出し物もあります。
”Merry Christmas”から”Season’s Greeting””Happy holiday”へ
なお、移民が増えた現在では、ムスリムのように非キリスト教徒人口も増えています。このため、クリスマスのあいさつで”Merry Christmas”と言いますが、”Season’s Greeting”(年末年始のご挨拶)のような言い方に変えたりしているようです。ユダヤ教徒の多いアメリカでは、”Happy holiday”という言い方もするようですね。
クリスマス休暇中でも、ムスリムの人々が経営しているお店は開いているので、食べるのに困る、ということは無いようです。(蛇足ですが、中東の方がやっているケバブ屋はおすすめです。)
例年1月は旅行の繁忙期
クリスマス休暇中出かけなかった人たちは、その期間を使って旅行の計画をしているとも言われています。この旅行の時期の多くは、イースター(3月下旬から4月下旬のいずれか4連休)か夏休みで、期間は大体1~2週間が多いようです。行き先として人気なのは、地中海諸国やアメリカとなっています。
そのため伝統的に1月は、旅行会社にとって繁忙期となっています。特に1月最初の週末の新聞は、旅行関係の特集で例年賑わいます。
しかし、現在はコロナの影響もあり、通常の年明けとは違った過ごし方をしているエージェントが大半だと思います。本来ならエージェントにとっては、忙しくて暇がないくらいの時期でした。
まとめ
年末年始、クリスマス休暇の過ごし方について、日本と欧州(特にイギリスを中心に)を比較しながらご紹介しました。例年であれば、年に一度の貴重な時間を大切な人と過ごしたり、イベントと共に盛り上がったりという休暇となっていたはずです。
しかしながら、新型コロナウイルスの感染拡大により世界各国で年末に向けて出された、外出制限、移動制限、会食の人数制限など、重要なイベントである年末年始やクリスマスの過ごし方が大きく変わってしまった年となりました。このような状況だからこそ、改めて人とのつながりの大切さに気付かされた方も多いかと思います。
これからはニューノーマルな時代として、限定的な移動や分散型が求められるなど、年末年始の過ごし方や旅行のスタイルも変容を遂げていくことになるでしょう。