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2021/02/15 国別対策

イギリスの修学旅行事情とは?目的地として日本を選ぶ理由から、観光コンテンツをより魅力あるものにするためのヒントを読み解く

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    こんにちは。地域ブランディング研究所の佐藤です。

    安全性が高く教育素材も豊富な日本は、教育旅行の訪問地として人気の国でもあります。

    フライト直行便で約12時間もかかる、日本から遠く離れたイギリス。日本を修学旅行先に選ぶ理由は、どのようなところにあるのでしょうか?

    英国を含めた欧州からの「訪日教育旅行」は増加傾向 ※コロナ前

    実は、日本と海外の修学旅行では、その位置づけが異なります。

    日本の修学旅行は、学習指導要領に規定の「特別活動」の一つに位置づけられた「旅行・集団宿泊的行事」として実施されています。

    一方、英国を含めた多くの海外の国による「訪日教育旅行」は、学校内で日本に関心を持つ希望者を募集したり、日本語学習者(クラス)単位で来訪したりという形態が多いのが特徴です。そのため、英国から日本に来る修学旅行生は、必ずしもみんなが同学年というわけではありません。

    英国における人気の修学旅行先は、期間や費用の面からも近辺の欧州諸国が圧倒的に多いです。一般的には修学旅行訪問地としての日本は、高嶺の花と思われています。

    全国の国立・公立・私立等の中学校・高等学校を対象とした、中学校・高等学校の訪日教育旅行の受け入れに関する調査では、英国含めた欧州からの訪日件数は23校、418人(2019年公益財団法人 日本修学旅行協会による訪日教育旅行調査)でした。

    このデータによると、ここ5年間では年々増加傾向で、人数は約2.8倍にもなっています。最近では主に富裕層の私立高からの訪日を中心に増えているとも言われています。

    訪日教育旅行で来ている英国人とは?その特徴とは?

    訪問先(国)を選ぶときの条件

    ①予算(費用)

    平均で一人当たり約2000ポンド、現在の為替レートで約30万円です。(英国からの往復フライト込み)この価格は一般家庭には高額かもしれません。事実、修学旅行先を企画する際、担当の先生が複数の目的地から選定しますが、価格面から日本ではなく、まだ物価の安い中国もしくは東南アジアを選ぶケースも見受けられます。(極東エリアとして一括りのため)

    やはり、旅行代金が訪日修学旅行の際の最大の課題となってきます。

    ②安全面

    日本の修学旅行手配の際にもありますが、ホテルの施設等に関してかなり細かい条件があります。

    例えば、緊急時のマニュアルがしっかりあるか、AEDの設備があるかなど、多岐にわたっています。

    訪日旅行で来ている英国人の特徴

    ①グループあたりの人数/年齢層

    希望者のみ参加ということもあり小規模で、10~30人程度のグループが多いです。年齢は、概ね日本の高校生くらいの年齢(16~18歳)が多くなっています。

    ②訪日時期/滞在期間

    旅行時期として多いのは、秋の1週間または、春のイースター休暇期間です。

    旅行期間は7〜10日間が一般的です。

    私が英国で担当していた際には、4分の1は夏休みを利用(7月下旬)し、4分の3はいずれも10月下旬の秋休みを利用しました。旅行期間は10日前後でした。

    ③訪日回数

    ほぼ全ての参加者が、初めての日本訪問です。

    旅の内容

    ①訪問先

    通常の訪日に於ける観光地はゴールデンルートの東京、京都、平和教育の場所として広島等は含まれることが多いです。それ以外には、次に説明する引率の先生のテーマに沿った場所への訪問を行います。また、姉妹校交流がある場合は、東京、京都等に追加します

    日本行き選定の理由として、私が英国で担当していた際には姉妹校からの招待、生徒からのリクエストによるものが半数ずつでした。

    例としては、以下のような旅行プランがありました。

    • 経済を勉強している学生が東京滞在中、証券取引所へ訪問
    • 地学を勉強している先生の引率で、火山(那須岳)及び神戸の防災センター訪問
    • 愛知県に姉妹校のある学校が東京から京都への移動中、姉妹校訪問、及びホームステイ体験

    ②テーマ

    引率する先生が目的国を決定することもあり、テーマはその先生の担当している分野になります。このテーマは、必ずしも日本に直接関連しているとは限りません。
    例としては、経済、建築、デザイン、又は地質学など。また、その分野において日本が進んでいるものを現地で経験したい、というリクエストもあります。

    最近の例では、通常の日本旅行に加えて2019年に日本で開催されるラグビーワールドカップに併せて、現地の学校と交流試合をしたい、という案件がありました。(ただし、修学旅行というよりラグビー部の遠征の一環として)

    ③姉妹校

    これについては、既に姉妹都市関連で姉妹校を持っている学校と持ってない学校があります。持っている場合は、修学旅行中に訪問のリクエストが入ります。その際、姉妹校の指定宅へのホームステイも行われます。(国際交流の目的が第一ですが、旅行費用の負担減少と言う意味合いもあります。)

    なお、現在英国と日本の間には、14の自治体との姉妹都市提携があります。(2017年1月現在、JLGC一般財団法人自治体国際化協会)

    ただし、姉妹都市関係と関わりなく姉妹校関係を結んでいる学校も多数あります。

    英国の旅行会社における修学旅行の取扱い

    訪日教育旅行受け入れの一元窓口は日本政府観光局(JNTO)が担っています。

    海外の旅行会社や学校から教育旅行の申請を受けた後、JNTOが各都道府県の担当窓口に受け入れ要請します。その担当者から小中高等学校に受け入れを要請し、併せて海外の旅行会社や学校と具体的な教育プログラムなどの行程を調整する流れとなっています。

    自治体をはじめ、訪日教育旅行の受入・斡旋窓口となっている各地域の団体と協力していくことで、観光受け入れについて準備を進めておくことができます。

    まとめ

    英国を中心に、海外の訪日教育旅行についてご紹介しました。

    若年期の旅行経験は、その後の旅行頻度に大きな影響を与えるといわれています。また、帰国してからの家族・友人への波及効果も期待できます。学校交流や観光を通じ、地域の魅力を訴求することは、将来のリピーター層の獲得へと繋げる効果もあるでしょう。

    さらに、今後の観光需要を担う若年層との交流は、旅行者のトレンド変化を知るなど、観光マーケティングにも活かすことができる重要な機会でもあります。

    「日本の魅力ある体験コンテンツを現地で経験したい」というリクエストもあるように、希望者のみの自発的な日本訪問となる修学旅行では、通常の観光に追加する特別な体験として、より深く踏み込んだコンテンツを求める傾向にあります。

    コロナ禍において海外渡航が制限されていますが、国際交流の形もオンラインを活用するなど新しい試みが始まっています。

    インバウンド市場はニューノーマル時代に入り、引き続き厳しい状況が続いています。しかし、様々な制約の中でも実行できることはあります。

    旅行者ニーズは変化しますが、コロナ前も後も、本質は変わっていません。旅行者への理解を深めることが大切です。

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