【第1回Attractive JAPAN大賞「sokoiko!サイクリングツアー」の石飛さんにインタビュー!】
目次 [非表示]
このコーナー「コト消費の作り方」では、地域で観光事業を行う人の想いを深掘りしていきます。今回は、広島で英語ガイド付きサイクルピースツアーを催行するsokoiko!の石飛さんにお話を伺いました。
sokoiko!サイクリングツアーとは
ゲストは欧米豪を中心に、95%が外国人観光客
sokoiko!の95%は海外からのお客様。海外の中でも欧米豪が中心となっています。オーストラリアが約50%、イギリス・アメリカが10%ずつ程度で、ドイツ・スペイン・ニュージーランド・カナダ・アルゼンチン・ポーランドなど、様々な国から訪れています。アジアでは、マレーシア・シンガポール、香港からコンスタントに予約が入ります。年齢層はまちまちですが、4~50代が一番多く、子どもを連れてファミリーで参加する方もいます。
ピースツアーに参加した外国人の反応
sokoiko!のレビューでは、「3時間のコンパクトなツアーだけど、内容が濃く、広島をよりよく知ることができた」と書かれることが多いです。また、「ガイドさんの英語力、知識がすごい」というお褒めの言葉をいただいたり、「広島は美しい街だ」と言われたりすることもあります。広島は郊外に出ると、公園がたくさんあって、緑が豊か。 ヨーロッパの方は広島の川の美しさにも驚かれたりします。 平和についての考え方や地元の想いなどに興味がある方が参加される傾向が強いです。
ツアーを始めたきっかけ~こめられた想い
視点を変えれば、地域ならではの魅力に気付けるかも
広島出身のメンバーが集まり、広島に貢献できることを模索していました。元々は観光に絞っていたわけではなく、アプリを作るなどの案も出ました。
ツアーをしようと思った最初のきっかけは、 外国人の友人が広島に遊びに来た際、ぐるりと観光地を案内して、最後にご飯を食べながら、どこが一番良かったか聴いたら、彼は「広島城から移動する途中の小道や橋や川がすごく良かった」と言ったんです。宮島や平和公園じゃないんだと驚きました。平和公園以外で外国人を見たことがなかったからです。ですが、観光地ではない場所に需要があるなら、小さい道も知り尽くしている私たちが、「郊外を案内するツアー」を提供できるのではないかと思いました。
予約ゼロからのスタート
事業化するにあたっては、ターゲットや移動手段などを考えました。 電車やバス、路面電車も考えましたが駅やバス停などに縛られないフットワークがほしいと思いました。そこで、広島はコンパクトな街なので、自転車がちょうど良いんじゃないかなと思いました。また、看板が日本語しかないので、英語ガイドが必須だと考えました。そして、サイクルガイドツアーを始めたのが2016年です。当時はピースツアーではなく、郊外を案内するカスタムメイドツアーとして売り出していました。ですが、認知されていないせいか、スタート時点では予約がゼロ。最初の予約が入った時は飛び上がるほど嬉しかったです。
3,000円の格安プライベートツアーなのに予約が入らない理由
ツアー後はみなさん、素敵だね、楽しいね、日本らしいねと喜んでくださったんですが、思ったように予約が入りませんでした。プライベートツアーで1人3,000円と格安なのに、何がいけないんだろうと考えました。外国人がなぜ広島に来るか?というのを考えると、やはり、ほとんどの観光客は平和公園に行き、「平和」に興味があるんだと気付きました。そこで「ピースツアー」という広島ならではのツアーにしようと思い立ちました。主要観光地には行かないツアーにこだわっていたのですが、初めて広島に来た人は平和公園に行きたいという人も多いです。平和公園+郊外の被曝遺産を案内し、ひとつひとつの歴史を語っていくツアーに変えると、それなりに反応があり、2年目は200人を超える予約が入るようになりました。
お客さんは完全カスタムメイドツアーを求めているわけではない
自分が海外に行ったときを考えると、「行きたいところはどこ?」と言われても、きっとすぐに答えられる人は少ないでしょう。誰かにオススメを聞きたくなるでしょう。知らないからガイドを頼んでいるのに、訪問先をお客さんに丸投げしてはいけないなと思いました。カスタムメイドツアーをやめたわけではないですが、神社仏閣に特化したツアー・景色が抜群にキレイなツアー・おもちゃ屋さんに行くツアーなど、ある程度の選択肢を用意しています。完全カスタムメイドツアーは一見、良いように思いますが、お客さんの視点に立つと違うものが見えてきます。
応援してくれる人がいるから続けたい
その後、料金を3,000円から5,000円に値上げしました。それでも、採算を考えたとき、事業としてすごく利益が出ているかというと、そうとも言い切れませんでした。チームの中でも意見が分かれ、もうやめたほうが良いのかなと思うこともありました。それでも、やめなかったのは、応援してくださる人や「いい取り組みですね」と言ってくれる人がたくさん居たからです。そこで、1年待ってもらうよう、チームを説得しました。
ガイドのスキルアップで「感動」を与えられるツアーに
ツアーを初めて一番最初のときは、英語ができる方に通訳として入ってもらい日本語をいったん話してそれを英語に訳すという流れにしていました。しかしこれではコミュニケーションにタイムラグが生まれてしまうのでスムーズなツアーができないと気づき、ガイドの育成に力を入れることにしました。ガイドがフレンドリーであることは当たり前です。プラスアルファ感動させないといけません。感動させるためには、街のストーリーを深く知る必要があります。同時に、お客さんに合わせて、話す内容やテンポを変える必要もあります。例えば、年齢層が高いお客さんには、ゆっくり。若いお客さんにはテンション高く、など。そうしたことで、ガイドとお客さんの距離が一気に近くなりました。
紋切型の平和教育は語りたくない
sokoiko!のガイドは、紋切型の平和教育は語りません。私は幼い頃、学校の平和教育が正直苦手でした。 やはりショッキングな映像は幼心に恐怖を覚えてしまっていました。そういうガイドのありのままの言葉もゲストにとっては新鮮であり、また心が近づくことにもつながります。 そういった自分自身の地元エピソードをツアー参加者にそのまま伝えるんです。意外とそういったエピソードを語れるガイドは多くありません。参加者は、「なぜ広島に原爆が落とされたのか」「原爆を落とされる前はどんな街だったのか」など広島のストーリーを知りたがっています。そこで、被ばくする前の街の写真を見せてから、現在はどうなっているのか見に行こうというスタンスで案内します。 被ばくした事実だけではなくそこからの復興のエピソードをストーリー仕立てでゲストにお伝えするようにしていて、ゲストはその1つ1つに感動してくれています。
sokoiko!流の率直なガイドが好評価 予約は年間1000人に!
広島に関する様々なエピソードをガイドに話し、sokoiko!ならではの価値観でお客さんにストーリーを伝えられるよう練習を重ねました。そこから、OTAのレビューが飛躍的に伸び始めました。 レビューでも大変高評価をいただいています。お客さんは「満足」ではレビューを書きません。「感動」したからこそ、レビューを書きます。そして、感動してもらうためには、地域のストーリーを語れるガイドが必要で、そういったガイドを育成することが重要です。
今後の展望
墨田区に伝わる「職人」のストーリー
現在は、東京の墨田区でも「職人」というキーワードでツアーを提供しています。スカイツリーの技術からはじまり、かんざし、屏風などを作る職人のストーリーを案内します。例えば、かんざしが耳かきになっている理由をご存知でしょうか。装飾品が禁止されていた時代に、装飾品じゃなく見せる粋な工夫だったんです。そんな粋な話が墨田区にはたくさんあります。 この地域は震災や空襲などにより何度も大きなダメージを負っていますが 職人の技術は今にも伝わっている。ストーリーは、どの地域にもあり、sokoiko!のフィルターを通して、地域の良さを伝えて行きたいと思っています。
ツアーの全国フランチャイズ化、海外展開も視野に
今後はフランチャイズで全国展開を目指しています。なぜ、フランチャイズなのかというと、 地元の人がつくるツアーがやはり一番地域性が出るためで、私たちはそのお手伝いをするというスタンスで魅力を発信したいからです。地元の方たちと一緒に運営していきたいと思っています。そして、海外展開も考えています。例えば、タイやベトナムで裏路地のストーリーを知れるツアーがあったら、行ってみたいと思いませんか?
まとめ
「どうしたらお客さんに感動してもらえるか」をとことん追求した石飛さんのこだわりや想いが、sokoiko!の原動力になっているのですね。
外国人に喜んでもらえる地域観光で重要なのは、
- 外国人の視点から、自分の地域にしかないストーリー・魅力を探すこと
- お客さんを「満足」以上に「感動」させようとする情熱
- 地域ならではのストーリーを自分の経験と言葉で語れるガイド
の3つだということを再認識しました!
私たちAttractive JAPANはこれからも、日本各地、そして世界で観光地域づくりを目指す皆様を応援していきます!
sokoiko!サイクリングツアー予約ページはこちら↓
広島の街に残る被曝遺産を地元ガイドと自転車で巡るピースツアー
地元人の知るとっておきへご案内!オーダーメイドの広島サイクリングツアー
Hiroshima Cycling Peace Virtual Tour with Local Guide
観光戦略実行推進会議に石飛さんも参加!
観光戦略実行推進会議とは?
先日(令和2年6月19日)に首相官邸にて行われた「第37回 観光戦略実行推進会議」に、sokoiko!石飛さんが有識者のひとりとして招かれました。
観光戦略実行推進会議とは、「明日の日本を支える観光ビジョン」で掲げた目標の確実な達成に向け、重点的に取り組むべき課題を明確にし、施策等の一層の推進を図るため開催するものです。
参考情報
会議の構成は、
議 長 内閣官房長官
副議長 内閣府特命担当大臣(地方創生)
国土交通大臣
構成員 他の全ての国務大臣
というまさに日本の中枢のメンバーです。
なぜ呼ばれたの?
この日の会議は、観光庁を中心として「日本の観光の再生に向けた取組」において、観光需要の回復に向けて反転攻勢するための基盤整備として、観光資源を地域の関係者が感染症対策を含め、より安全で誘客力の高いものに磨き上げる取組に対して、滞在コンテンツの造成・商品化等を支援することで、観光地等の高付加価値化や誘客の多角化を促進したいという目的がありました。
そこで、外部の企業・専門家と連携が求められ、ガイドとして経営者として講師としても幅広くご活躍中の石飛さんにお声がかかったとのことです。
最後に
この会議で、赤羽国土交通大臣は「『ポストコロナにふさわしい滞在型旅行』の普及等の新しい課題にも取り組んでまいりたい。」としています。
また、菅官房長官からも、「内外の観光客が楽しめるコンテンツを磨くことも重要。本日はサイクリングなどのお話を伺ったが、幅広いコンテンツについて、サービスの質を確保する安全ガイドライン等の仕組み、人気のサービスを各自治体に紹介する仕組み等、観光庁を中心に工夫していただきたい。」とありました。
「日本の観光の再生に向けた取組」において、sokoiko!のような地域の方々からも愛され、世界の方もわざわざ行きたくなるような、未来に生き残る地域体験コンテンツが日本中に広がり、再び活気を取り戻す日が来ることを信じています。