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2020/07/13 体験プログラム紹介

全国体験観光オンラインシンポジウム【第2部 パネルディスカッション②】

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    次のパネルディスカッションは、『現場最前線!パイオニアのファン獲得策』というお題のもと、今まさに現場で先陣を切ってご活躍されているお三方にお越しいただきました。

    ゲストパネラーのプロフィールはこちら。

    地域振興プロデューサー(株)アーチ・ヒーロー北海道代表取締役の高橋幸博さん。
    ニセコを中心に、スキー、自転車を用いた観光プロジェクトを運営。また、全国での自転車を用いたまちづくりを県・自治体と一体となって行っている。ニセコのパウダースノーのPRを香港・シンガポールなどのアジア、オーストラリアに向けて行ってきた実績も。 withコロナにおいては、「LOCALl to LOCALS」という新しい概念を提案している。

    オンライン体験の第一人者でオンラインツアーガイドの市原佑樹さん。
    2018年から秋葉原でガイドツアーを展開。コロナ状況下でオンラインツアーを開始し、Airbnbでも高い評価を得ている。秋葉原オタクツアーでは、自身もオタク仲間の一人として、英語を交えて会話。オンラインに移ってからは互いに部屋にいながら、秋葉原のオタク文化の歴史などを解説している。

    香川発のオンラインバスツアー立役者で、コトバス(琴平バス株式会社) 企画開発部 執行役員の山本紗希さん。
    2020年5月から、世界初のオンラインバスツアーを企画・開催。実際に現地の映像などを交えながらバスツアーの雰囲気を再現。

    オンラインツアーって楽しいの?

    オンラインツアーはコロナ状況下限定の流行でしょうか? コロナ後も継続していきますか?

    市原さん

    最初は、コロナまでの一時的なつなぎだと思っていましたが、実際にやる中で、オンラインツアー自体の面白さ、良さがあることに気が付きました。今後もオンラインも続けていきたいと考えています。

    山本さん

    コトバスでは、コロナ禍での対策として始めました。単に動画を観るだけではなく、オンラインでも、人と人が、ちゃんとつながっていくことに楽しさがあると思います。

    ⇒オンラインツアーは、一時的な話題作りではなく、人と人のつながりを生むことができる取り組み。

    オンラインツアーの満足度を上げる方法

    皆様、地域やテーマの魅力を紹介する取り組みを行っていらっしゃいますが、オンラインツアーの満足度を上げるにはどうしたら良いのでしょうか?

    市原さん

    大事なスキルは、ファシリテーターとして会話を回すスキル。現地でのガイドはある程度一方的でも良かったですが、オンラインでは、より会話のキャッチボールなどを意識していく必要があると感じます。

    山本さん

    細かいディテールにこだわり、没入感を重視しています。オンラインでは、オフラインとは違ったトラブルが起きます。そういったときにも、リアルなバスツアーの雰囲気を再現することですね。例えば、通信が落ちた時も、「通信が落ちた」とは言わずに、「乗り遅れた」と表現しています。

    高橋さん

    私のツアーでは、リピーターは9割が外国の方です。長い方では15年以上お付き合いがあり、家族のような関係を持っています。リピートしてもらうためには、マーケットという見方だけでなく、人と人の純な付き合いを作っていくことが重要だと感じています。リアルな人と人の付き合いを重要視します。

    ファンをつくるための地域の魅力の伝え方は?

    市原さん

    アキバツアーという側面上、普通の人はまず来ません。アキバツアーに来る人が求めているのは、普段通りのオタク活動。自分のオタク活動などをありのまま伝えることによって、アキバの魅力や日本のオタク文化の面白さが、しっかりと伝わっているのではないかと考えています。

    高橋さん

    コミュニケーションツールの重要性を感じています。昔はEメールだけでしたが、今は世代やターゲットによって使っているツールが違いますよね。通信環境があれば世界中の方とコミュニケーションが取れたり発信できるというのはすごい時代だと思います。コミュニケーションのための英語、動画などもどんどん出て来ているので、新しいツールも取り入れていきたいと考えています。

    山本さん

    地域の魅力を伝えるのは、やっぱり「人」です。オンラインで人に会えることの価値は大きいと思います。初めて行く場所に知り合いがいるという感覚。地元の人と触れ合うというのは旅の目的としても大きいのではないでしょうか。ガイドさんや現地の方とお話ししてもらうことで、地域の魅力が伝わると思います。

    オンラインツアーのコスト感は?

    山本さん

    コトバスのオンラインツアーは、お土産付きで4890円です。継続していくためにも、収益は確保しています。現地から商品を送ってもらっているので、そこにお金を払ったり、謝礼などを払ったりできるだけの余裕はあります。今現在でも、400名ほどの参加があります。

    市原さん

    現在は1時間あたり2500円でやっています。最初は1000円くらいで収支のバランスを探ったのですが、2500円でトントンくらいだということがわかりました。オンラインツアーによる波及効果も考えています。コロナ状況下とコロナ後、両輪で考えることが大切だと思います。

    アウトドアアクティビティをオンライン開催する際の注意点

    アウトドアアクティビティでは、天候や自然環境の変化によって、オンラインツアーにも影響が出るかと思います。そういった場合の対応方法を教えてください。

    高橋さん

    天候の影響でリフトが動かないときは、食事を延ばすなど、臨機応変に行程を変更するようにしています。リスクマネジメントの観点から、危機予測をしっかりしておくことは大切ですね。行程を変えたときにトラブルにならないよう、 保険などの事前の確認やコミュニケーションは念入りに行っています。

    市原さん

    保険や状況確認はやっぱり大事ですね。ツアーの評価は8割方、催行前に決まっていると考えています。事前にゲストとしっかりコミュニケーションをとり、ゲストの好みに合わせてカスタマイズすることが重要です。例えば、事前アンケートで好きなアニメを質問したり、ツアーに何を期待しているかをヒアリングしたりします。

    密を避けたプログラムづくりのポイント 

    今後は、密を避けるうえで自然系のプログラムが人気になるのではないかと予想しています。自然系プログラムを作る中では、何を意識していけば良いでしょうか?

    高橋さん

    オーバーツーリズムは今後、無くなっていくでしょう。地域も、それは歓迎していないと思います。安全で質の高い、地域に受け入れられるツアーであることが重要です。地域の未来につながるようなツアーを、地域と連動しながら構築していく必要があります。また、ゲストは行く前にオンラインツアーで現地の様子を確認し、それで良かったら、多少値段が高くても行きたいと思うでしょう。

    また、グリーン(夏)とホワイト(冬)の季節に合ったコンテンツの提供などで、リピーターを確保していくことが重要です。リピーターからのつながりで、かなり多くの人が訪れてくれます。ガイドのコーディネート能力があれば、リピーターが増え、更なるリピーター獲得につながります。

    オンライン体験の満足度は高いが知名度が上がらない場合

    山本さん

    私たちのオンラインツアーは、日本で一番早かったので、取り上げてもらえました。また、地方のバス会社だったことも要因の一つかなと考えています。PR対策と言えば、最初はローカルのテレビに対してツアーを行ったくらいでした。

    市原さん

    Airbnb上でいうと、表示されてからゲストにクリックされるところまででだいぶ絞られると思います。この体験で、誰と会えて、何ができて、どんな話を友達にできるか、ということがゲストにわかりやすいようにすることが重要です。

    登壇者からのメッセージ

    withコロナ時代を乗り越える方策を教えてください。

    高橋さん

    ガイドには、地域の方々を結びつける役割があると考えています。まずは、地域の方の不安を解消するために知恵を絞ることが大切。オンラインツアーなど、小さい規模の取り組みから始めていくと良いでしょう。withコロナは、環境整備と概念の変革のチャンスだと捉えています。私たちは、1~2ヶ月体験観光での受け入れ滞在強化をしていく予定です。

    山本さん

    オンラインツアーなどはお試しとして広まっていくのではないかなと思います。オンラインにはオンラインの、リアルにはリアルの良さがあります。オンラインでファンを作って、リアルでお金を落としてもらう。また、オンラインだと失うものはあまり無いので、どんどん試して、今のうちにお客さんを確保したいですね。

    市原さん

    オンラインツアーでは失うものがないので、お試し感覚で始められるでしょう。モノではなく、「誰がやるか」に大きく依存するのがオンラインツアー。スキルアップにもなるので、どんどんオンラインツアーに挑戦していきましょう。

    まとめ

    第2部 パネルディスカッション②『現場最前線!パイオニアのファン獲得策』

    ここでは、より実践的な目線でそれぞれの体験談に基づく意見が交わされました。

    今話題のオンラインツアーは、誰とでも簡単につながれるため一見つながりもライトに思われるかもしれませんが、実は身近にリアルを感じられるような工夫に満ちていました。

    会話のキャッチボールを意識したり、細かいディテールにこだわり没入感を重視したり、事前にしっかりとヒアリングしていたりと、その裏側での知られざる努力が明らかにされました。今後に役に立つ事例として、それぞれの現場に求められる対応力とは何かが伝わった貴重な機会となりました。

    ひとつひとつに相手を想うプロのおもてなしを感じることができれば、それがおのずと感動体験を生み、地域にも波及する。これがこれからの時代のひとつの突破口となり得るのではないでしょうか。

    第3部 Attractive JAPAN大賞に続きます。

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