【第1回Attractive JAPAN大賞「地域イノベーション賞」 受賞 株式会社くまもとDMCさんインタビュー!】
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Attractive JAPAN大賞受賞者インタビューのコーナーでは、地域で体験観光をおこなう方々の想いを深掘りしていきます。今回は、さまざまな団体と連携して地域の魅力を磨き上げ、地域の持続的収益性を構築することを考えた事業運営をされ、「地域イノベーション賞」を受賞された、株式会社くまもとDMCの外山さんにお話をうかがいました。
くまもとDMCについて
DMC発足のきっかけ
「くまもとDMC」は熊本地震の発生した2016年12月に発足し、2020年で4年目を迎えます。熊本を地震以前の状態に戻すだけでなく、更なる発展を目指す「創造的復興」をスローガンとして掲げ、熊本県と地方銀行の出資で設立しました。2017年3月に観光庁の観光地域づくり法人(DMO)に登録され、熊本の「食」と「観光」をマーケティングする地域連携DMOとして、自治体と地元企業の架け橋の役割を担っています。
DM”C”であることのメリット
DM”C”(株式会社)として立ち上げた利点のひとつに、自由度の高さがあります。例えば、旅行商品を造成するときには、自信のあるコンテンツに絞って徹底的にその商品だけを前面に出すこともできます。そうすることでターゲットのニーズにあったコンテンツに対してピンポイントでブラッシュアップできるのです。言い換えると、いい意味で「えこひいき」ができること。公平さが求められる行政に対し、一緒に取り組んでもらえる団体や地域といち早く仕組みを作り、地域経済を回すことができるのも利点のひとつです。
くまもとDMCが独自に手がけるコンテンツ
地域を知り尽くした柔軟な発想を活かした取り組み
観光事業を盛り上げるといっても様々な手法があると思います。その中で私たちの強みが活かせて、熊本でまだ取り組みが進んでいない領域として軸を置いたのが、インバウンド観光客向けのオリジナル体験コンテンツづくりでした。くまもとDMCならではの他では体験できないようなオリジナリティあふれるコンテンツの造成に力を入れています。
長期滞在客にうれしいタビナカツアーを提供
実際にコンテンツを作る中で難しいと感じているのが、インバウンド観光客に向けたタビナカでの告知です。インバウンド観光客の旅のプランニングは、ざっくりとした旅行の日程のみをあらかじめ決めておき、その長期滞在中に「明日の午後できることはないかな」とオプショナルツアーなどを探すのが一般的です。けれども、これまでの日本国内での観光のあり方は事前申込が定番だったため、締め切りが実施の一週間前というようなコンテンツが多くなっていました。コンテンツを磨くだけでなく、タビナカでの集客にも力を入れてきました。2019年のラグビーW杯の時には、毎日ホテルにバスをつけて、朝10時にロビーに来た方は全員参加できる、というようなツアーコンテンツを提供しました。
日本の湧水に感動する欧米人
ラグビーW杯で訪日したインバウンド観光客を案内した際、パラグライダーやサイクリングなどのコンテンツも楽しんでもらえたのですが、それ以上に、日本の伝統的な慣習や文化に対する関心の強さに驚きました。ラグビーW杯期間では、これまで大半を占めていたアジア圏に加え、欧米の方が多くいらっしゃっていたのですが、熊本の「湧水」に感動されている様子が印象に残っています。日本人なら20分の滞在で済むところを、40分以上滞在されていた欧米圏の方もいらっしゃいました。水の綺麗さや水源など、私たち日本人から見るとごく当たり前のことにも強い関心を示すようです。アジア圏の方々は、乗り物や体験などのコンテンツがないとなかなか満足度が上がらなかったのですが、この経験で新たな視点を得られてすごく勉強になりました。
ガイドと一緒に地域をまるごと体感できる「食」のツアーも
熊本市内の飲食店はどこも料理のレベルが高いです。その理由は、美味しい水のある環境で育ったため味が濃いと評判の地元産の農作物を使っているからです。けれども、インバウンド観光客にとっては、事前に情報のない地元のお店には入りにくいと思います。そこで、外国人のガイドさんと一緒に居酒屋やバーをめぐる、夜のツアーも実施しています。このような食のコンテンツも今後は増やしていきたいです。
つながりを感じることでさらなる原動力に
地域の方と議論を重ねながらコンテンツを作り上げていく時間が、仕事としてとても楽しいです。また、単純なことですが、地域の方から「ありがとう」と言われることや、参加してくれた海外の方からお礼の手紙やメールをもらった時など、「嬉しい」と感じることが一番のモチベーションになっています。
コロナ禍の影響
2019年のラグビーW杯での学びや地域との連携を通してインバウンドの観光コンテンツも磨いてきたにも関わらず、現在は180度の方向転換を余儀なくされてしまいました。新型コロナウイルスの影響でインバウンド観光客がほぼゼロになってしまったからです。そこで現在は、国外ではなく、国内向けコンテンツの磨き上げにも力を入れ始めました。
具体的な体験プラン造成とは
ターゲットに対応した体験プランを
コンテンツの中身ももちろん大事なのですが、見せ方にも力を入れています。例えば、アジア圏と欧米圏の観光客では、それぞれの伝え方や見せ方も変えています。アジア圏の方は日本から近いという立地の都合もあり、リピーターの方が多くいらっしゃいます。そのため、あまり細やかな説明を必要としておらず、自分たちで車を借りるなど自由に観光される方が多いです。その一方で、欧米圏の方は初めて訪日される方が多く、ガイドやレンタカーの手配など、より手厚いフォローを必要としています。
現在は、日本人向け商品のプロモーション方法を考えています。例えば、地域ブランディング研究所さんと一緒にやってきた侍コンテンツ。インバウンド観光客へのプロモーションであれば、「侍」という言葉だけでも興味を引くことができます。しかし、日本人が「侍体験」と聞いてすぐに行きたいと思ってもらうには工夫が必要です。だからこそ、同じコンテンツであっても、どのような見せ方をすれば興味を持ってくれるのか、ターゲットごとに分けて考えています。
観光客目線で寄り添い、旅の感動体験をより彩るものへ
目的地で楽しむだけではなく、そこにいくまでの移動でも景色や文化を楽しんでもらうことを意識しています。そして、この考えは、インバウンド観光客と関わりの中でより強く意識するようになりました。インバウンド観光客はガイドさんと、列車の中から見える景色や、日常生活に関してなど、本当にたくさんの会話をされています。そのような会話に耳を傾け、ただ目的地に行き、説明をするだけでなく、そこに行くまでの過程にも目を向けてお話することが大事だと感じました。
インバウンド観光客が多いエリアを中心に情報収集をしています。そして、これらの情報収集で大事になるのが、地元の人や事業者とのつながりです。地域のキーマンとのコミュニケーションを通して、各地域のローカルな情報を教えてもらっています。そして、その情報を元に自分たちでも訪問し、コンテンツを磨いています。自分たちも実際に現場で学ぶこともあります。このような地道な作業を繰り返して、エリアに強いDMCを目指しています。
今後の展望
当分の間はインバウンド観光客の集客はなかなか見込めませんが、今だからこそできる準備はたくさんあると思っています。例えば、コンテンツの「質」を磨くこと。今後、Withコロナ/Afterコロナの世界の中で観光業をやっていくためには、「団体」よりも「個人」のお客さんにフォーカスする必要があると思います。また、飛行機の運賃を含め、様々な観光コンテンツが値上がりし、日本へ旅行に訪れる層は、より富裕層が中心となってしまうのではないかと考えています。そうすると、マーケットの規模が小さくなり、地域経済を回すための収益を上げにくくなってしまいます。そこで今最優先したいのが、より質の高い商品を作ること。商品の質を磨き、富裕層にも対応できるコンテンツを作っていきたいです。
くまもとDMCは、上通商店街という熊本市の商業の中心部に店舗兼事務所を構えており、その場所を通じてお客様と直接やりとりができます。熊本に来られる方にとって「ここにたどり着いたらいろいろなことが解決できるよね」というワンストップの窓口になりたいという展望があります。また、くまもとDMCが熊本県全域を対象とした地域連携DMOとして、自治体と地域をつなげる役割を果たしていきたいと考えています。
まとめ
今回、第1回地域イノベーション賞受賞の秘訣に迫るべく、編集部がくまもとDMCさんにインタビューを行いました。DMCの強みを最大限に活かし、地域を知り尽くした柔軟な発想で取り組まれていたことがよく分かりました。以下にポイントをまとめます。
- 長期滞在のインバウンド観光客にうれしいタビナカツアーを提供
- ガイドと一緒に地域をまるごと体感できる「食」のツアーも提供
- 国別ターゲットに対応した体験プランを造成
- 観光客目線で寄り添い、会話に耳を傾け、過程にも目を向けることが大事
- 地域との深いコミュニケーションを元に情報収集
- 今後は国内向けにも質の高いコンテンツにブラッシュアップしていく予定
くまもとDMOさんは、身近にある「気付き」を大切にしてコンテンツ造成やブラッシュアップに役立てていました。地域とのつながりの中で課題解決を行い、コンテンツに見事に活かされています。このようにして多くの観光客に愛されるコンテンツは生まれていたのですね。今後のさらなるご活躍を期待しています。
くまもとDMCさんの侍文化体験はこちら↓
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