観光を活用した持続可能な地域経営の普及・促進に関するシンポジウム 開催レポート

一般財団法人運輸総合研究所・国連世界観光機関(UNWTO)駐日事務所・観光庁は、令和3年12月8日(水)に「観光を活用した持続可能な地域経営の普及・促進に関するシンポジウム」を開催しました。

本格的な少子高齢化の進行、厳しい行財政状況、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた取り組みの実施・推進等への対応という社会的責務がある中、「持続可能な地域経営」を行っていく必要性が高まっています。持続的な地域経営への方策として、独自の地域資源活用、人口増に資する特性を有する観光分野から取り掛かることは有効であると考えられます。

そうした背景から、本シンポジウムでは、「持続可能な開発目標 (SDGs)」を達成する手段としての観光促進にも取り組んでいる国連世界観光機関(UNWTO)駐日事務所と、持続可能な観光地マネジメントを推進するための「日本版持続可能な観光ガイドライン(JSTS-D)」を開発した観光庁から、持続可能な観光地づくりの実現に向けた取り組みやコンテンツ造成等についてご講演いただくとともに、UNWTO駐日事務所や観光庁が参画・連携している一般財団法人運輸総合研究所設置の検討委員会にて令和3年度中に取りまとめる「観光を活用した持続可能な地域経営の手引き(案)」についてご紹介いただきました。また、第二部パネルディスカッションでは、「観光を活用した持続可能な地域経営」をどのように図っていくべきか等について議論し、理解を深めました。

なお、本シンポジウムは、観光庁より株式会社日本旅行が受託し展開されたもので、株式会社地域ブランディング研究所は企画運営サポートを行いました。

基調講演1「持続可能な観光の実現に向けて」
観光庁 和田浩一長官

日本版持続可能な観光ガイドライン(JSTS-D)を活用した、持続可能な観光の実現に向けた取り組みやコンテンツ造成等についてご講演いただきました。

・明日の日本を支える観光ビジョンで掲げた目標値達成に向けて、施策の一層の推進が不可欠。
・一方で、一部の観光地ではオーバーツーリズムが発生。さらなるインバウンド増加を目指すには、オーバーツーリズムを未然に防止し、持続可能な観光モデルを確立していく必要がある。
・持続可能な観光については、UNWTOが以下3要素を両立させる観光と定義する。
1)主要な生態学的過程を維持し、自然遺産や生物多様性の保全を図りつつ、観光開発において鍵となる環境資源を最適な形で活用する。
2)訪問客を受け入れるコミュニティーの社会文化面での真正性を尊重し、コミュニティーの建築文化遺産や生きた文化遺産、さらには伝統的な価値観を守り、異文化理解や異文化に対する寛容性に資する。
3)訪問客を受け入れるコミュニティーが安定した雇用、収入獲得の機会、社会サービスを享受できるようにする等、全てのステークホルダーに公平な形で社会経済的な利益を分配し、貧困緩和に貢献しつつ、実行可能かつ長期的な経済運用を実施する。
・持続可能な観光地域づくりに向けて、以下3つのステップを回すことで実現を目指す。
①地域のなりたい姿とそれを実現するための課題を明らかにする
②課題に対応した様々な指標を設定し、どんな政策を打っていくのか考える
③政策を実施していくにあたり、様々な分析をして、一部、手直しをしながら①に戻していく
・持続可能な観光を実現するためには、「地域におけるマネジメント体制の構築」「地域の負担に配慮した、その地域ならではの資源を活かしたコンテンツの造成・工夫」「オーバーツーリズム等の弊害を生じさせないための受入環境の整備」の3つの柱について、総合的に取り組むことが必要である。
・今年度から取り組んでいる「第2のふるさとづくりプロジェクト」では、「第2のふるさと」を作り、「何度も地域に通う旅、帰る旅」という新たなスタイルを推進・定着させ、地域が一体となって、地域活性化と持続性の向上を図る取り組みを展開している。

[資料] https://unwto-ap.org/wp-content/uploads/2022/01/1.pdf
[動画] https://www.youtube.com/watch?v=DbWJ_jPsBg0
引用:国連世界観光機関(UNWTO)駐日事務所 ホームページ

基調講演2「いかに持続可能な形で観光を推進するか?~コロナ後を見据えた地域での実践~」
国連世界観光機関(UNWTO)駐日事務所 鈴木宏子副代表

UNWTOの持続可能な観光地づくり実現に向けた取り組みや、UNWTO駐日事務所が奈良県庁と連携して取り組んでいる事業、そして先進地域の実践事例について、ご講演いただきました。

・コロナ禍の影響で、世界の観光動向が大きく変化。よりサステナブルな形で観光したい、また、旅行を通じて地域を支援したいという旅行者が増えている。
・UNWTOの分析でも、「持続可能な観光」がキーワードになっており、持続可能な観光を国家的課題に位置づけるべきであると提言している。
・UNWTOでは、エビデンスに基づいた政策形成の実現を目的とする「持続可能な観光地づくり国際ネットワーク(INSTO)」を世界に作っており、現在15か国・30か所が加入。日本ではまだ加入している地域はない。
・INSTOでは、地域関係者で協議会を作り、以下の5ステップで取り組みを行っている。
①取り組む目的の明確化・関係者の参画
②地域のなりたい姿と課題を明確化
③課題に応じた指標の設定
④指標を測定し、分析・公表・改善
⑤施策を実施し、更に分析・改善
・奈良県庁と連携した、持続可能な観光への取り組みを支援するプロジェクトをスタート。
・その他、INSTOに加入しているカナダの事例なども紹介。
・地域の状況に応じて、持続可能な観光を構成する「経済」「社会文化」「環境」の3つの要素のバランスをどのように取っていくか、考える必要がある。この3の要素に分けて現状分析を行うと、地域関係者との合意形成も上手く進む。
・観光活用した持続可能な地域経営への進め方や配慮すべきポイントは、手引きに記載。

[資料] https://unwto-ap.org/wp-content/uploads/2022/01/2.pdf
[動画] https://www.youtube.com/watch?v=8XT6j4W_PRk
出典:国連世界観光機関(UNWTO)駐日事務所 ホームページ

基調講演3「『観光を活用した持続可能な地域経営の手引き(案)』について ~50年、100年後も住み続けたくなる地域であるために~」
一般財団法人運輸総合研究所 小泉誠主任研究員

地域の観光を活用した持続可能な地域経営の実践に向けた取り組みを支援するために、UNWTO駐日事務所と一般財団法人運輸総合研究所が『観光を活用した持続可能な地域経営の手引き(案)』を作成しています。本手引きについて「観光活用した持続可能な地域経営を行っていく意義・重要性」「観光を活用した持続可能な地域経営を実現するための取り組み方」の2点に分けて紹介しました。

・将来にわたって住み続けたい地域であるためには、持続可能性を持った地域経営が不可欠。
・観光は、裾野が広く、地域の人材・資源・産業を有効に活用できるなどの特徴を有しており、観光の切り口として、各地域が抱える課題解決を目指す視点を持つことが大切である。
・そのため、地方自治体や地域社会が持続可能な地域経営を図っていく上で、観光を活用し、地域課題の解決を目指す意義・重要性は大きい。
・観光を、地方自治体の政策の中で重要性の高い柱の一つと位置付け、プライオリティを上げることが、観光振興に繋がるだろう。
・持続可能な地域経営においては、経済面だけでなく、社会・文化面、環境面といった、地域の全ての側面で持続可能であることが必要である。
・観光を活用した持続可能な地域経営の重要性が高いという基本的認識の下、どのように取り組めば良いか整理した「観光を活用した持続可能な地域経営の手引き(案)」を現在策定しており、今年度末までに完成予定。
・手引きを用いて、観光を活用し、地域課題の解決を図ることで、「住んでよし、訪れてよし」の持続可能な地域経営を行う。また、そうすることで、QOL(住民の生活の質に対する満足度)を高め、住民の幸せを追求していく取り組みにも繋がればと考えている。

[資料] https://unwto-ap.org/wp-content/uploads/2022/01/3.pdf
[動画] https://www.youtube.com/watch?v=FV-WvhXWtTE
出典:国連世界観光機関(UNWTO)駐日事務所 ホームページ

第2部 パネルディスカッション

第2部では、以下の参加者の皆様により、観光を活用した持続可能な地域経営について、
パネルディスカッションが実施されました。

モデレーター:一般財団法人運輸総合研究所所長 山内弘隆 様
パネリスト :北海道ニセコ町 商工観光課 参事 高橋葉子 様
      一般財団法人沖縄観光コンベンションビューロー会長 下地芳郎 様
       GSTC(世界持続可能観光協議会)公認トレーナー 高山傑 様
       株式会社 伝泊+工芸 代表取締役社長 山下保博 様

(※一部抜粋)
・サステナブルツーリズムの大原則として、観光に携わっていない地域住民の声を拾うことが重要。
・観光のための地域ではなく、地域のための観光という考え方が大事。
・観光地を巡るだけの観光ではなく、地元の人たちとのコミュニケーションや地域に根付く暮らしなど持続可能性のある視点が重要とされる時代へ。
・サステナビリティへの取り組みで、脱炭素を取り入れるにはコストがかかる。それを上手くビジネスとしてまわし、旅行者側と地域側の双方にメリットがある仕組み作りが必要。
・住民の意識調査では、観光は地域にとって大事だとされる一方で、観光により自らの生活が豊かになるという意識はなかった。これを動かすための合意形成が今後の課題。
・新型コロナウイルスによって、経済面では大きなダメージを受けている一方で、環境面では、人が減ることによって、環境への影響が緩和されたことも事実。
・地域経営において、観光と医療との連携は重要。住民が安心して生活できる環境作りのために、観光の果たすべき役割について、今一度、考える必要がある。
・環境や住民に関する指標の変化を取り組みにどのように生かすかが課題であり、重要。
・指標は、定性的な数字としてだけでなく、心で考えるものであり、地域を同じ基準で確認し合える根拠である。

[動画] https://www.youtube.com/watch?v=2swcaBSsrnw
出典:国連世界観光機関(UNWTO)駐日事務所 ホームページ

最後に

令和4年3月、UNWTO駐日事務所と一般財団法人運輸総合研究所は、観光を活用した持続可能な地域経営の重要性が高いという共通の認識の下、観光を切り口とした具体的な取り組み方や先進事例、持続可能な地域経営を実現するために必要なことなどを整理した「観光を活用した持続可能な地域経営の手引き」を公表する予定です。将来も住み続けたい地域であるためには、地域に寄り添った持続可能な地域経営が必要不可欠です。それぞれの地域の実情に合った取り組みを考える際には、ぜひ手引きをご活用ください。

地域ブランディング研究所では、全国各地の自治体やDMO、観光事業者等と連携し、高付加価値・持続可能な観点で滞在の在り方を議論し、各地で仕組みづくりをお手伝いしてきました。また、地域貢献や環境への配慮等の意識が比較的高い欧米豪の方々にも満足してもらえるように、サステナブルやGSTCの文脈に合った着地滞在企画を造成しています。国内観光・滞在においても、持続可能性という視点が必須となりつつある中で、現在も様々なプロジェクトを推進しておりますので、何かお役に立てることがあればご相談ください。

【開催概要】
観光を活用した持続可能な地域経営の普及・促進に関するシンポジウム
日時:令和3年12月8日(水)13:30~16:30
場所:ベルサール御成門タワー(東京) ※オンライン同時開催
主催:一般財団法人運輸総合研究所・国連世界観光機関(UNWTO)駐日事務所・観光庁
参加人員:会場58人、オンライン714人(国、自治体、DMO、観光関連事業者、大学、メディア関係者)

[出典] 国連世界観光機関(UNWTO)駐日事務所 ホームページ
https://unwto-ap.org/event/sp/ 

 

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