JIFセミナー『2021年のインバウンド戦略~コロナの向こうへ進め~』開催レポート【アドベンチャーツーリズム最前線 高付加価値ガイドの重要性】

はじめに

 2021年1月20日、私たちも幹事会社を務める(一社)日本インバウンド連合会主催で『2021年のインバウンド戦略~コロナの向こうへ進め~』を開催いたしました。
 withコロナの時代、コンテンツ造成においても様々なトレンドの変化がある中で、そうした変化に対して、いかに準備をしていくかが、かなり重要になってきています。
 今回は、「アドベンチャーツーリズム最前線 高付加価値ガイドの重要性」というテーマでアドベンチャー・ツーリズムの第一人者、株式会社ARCH ・ヒーローの高橋幸博さんにお話をいただいた第1セッションの開催レポートをお届けします。

アドベンチャー・ツーリズムの促進が求められる時代

 コロナ禍におけるコンテンツ造成では、これまでやってきた欧米豪向けのコンテンツを、いかに単価を上げて、地域らしさを出し、地域の方から愛される商品にしていくかという展望がより求めれています。そのとき、地域をしっかりとコーディネートするガイドが必要となってきます。また、コロナ禍における傾向として、感染症対策が徹底されているところと、良い観光地・特別な観光地が目的地になっています。そうした状況だからこそ、アドベンチャー・ツーリズムをいかに促進してくかということが、求められる時代になってきています。

 アドベンチャーツーリズムとは、「アクティビティ」「自然」「異文化」を掛け合わせて、その2つ以上で構成されたものをいいます。アドベンチャー・ツーリズムの市場は、非常に大きく、訪日観光客一人当たりの消費額は、エコ・ツーリズムやグリーン・ツーリズムの場合、15万円ちょっとというのに対して、アドベンチャー・ツーリズムの場合は33万円。地域での還元効果も高いといわれています。一方、日本では、文化コンテンツが豊富にある一方で、自然コンテンツの造成が追いついていない状況にあります。豊富にある文化的要素に、自然やアクティビティを少し掛け算していけば、十二分に、世界的に耐え得るものになっていくことでしょう。

 今回は、そんな観点を含めて、アドベンチャー・ツーリズムの自然活用やガイドの可能性について高橋さんにお話いただきました。

地方と世界をつなげる第一人者として

 高橋さんは、サイクルツーリズムのスペシャリストとして、全国各地で、サイクルルートの設定、ガイド養成、組織づくり、といった活動を手掛けられています。北海道のニセコ地域、倶知安町という街を活動拠点にし、冬はスキーガイド、夏はサイクリングガイドをしており、普段から世界の富裕層を相手に活動されています。今は、新型コロナウイス感染拡大の影響により、ほぼ9割以上のお客様が来られない状況ですが、そうした状況下でも、お客様と積極的にコミュニケーションをとり、夏はサイクリング、冬はスキーの魅力を海外にも発信していらっしゃいます。

 高橋さんは、もともとはスキースクールのコーチでした。幼いころにワールドカップスキーを見に行ったのを機に、地方と世界がスポーツでつながることを学び、20代から40代の間は、日本のスポーツ文化を海外に発信することの大切さを考えながら生きてきたといいます。カナダ、オーストラリア、アメリカでインストラクターの資格を取得、台湾とタイでサイクリングガイドの資格を取得するなど、マーケットとなる国に行って、サービスレベルを高める努力をされてきました。

「ローカルであること」「日本人であること」を全面に出すガイド

 オーストラリアが連れてきた欧米豪のマーケットはリピート率が高いそう。1週間の滞在の中で、スポーツをして、さらにその時間を家族で共有しようという方たちがいましたが、ニセコではコンドミニアムなど滞在型の宿泊施設がなかったため、オーストラリアの方たちが不動産投資をしたといいます。のちに、パークハイアットホテルやリッツカールトンホテルがオープンし、いわゆる富裕層のお客様が1週間ぐらいの滞在でスキーをすることが増えていきました。そこで高橋さんは、地元の日本人がガイドとなって、英語を使って海外の方に案内することを考えたそうです。マインドとして、ローカルであること、日本人であることを前面に出せないかなということを中心に考えられました。そして、カナダ、オーストラリア、アメリカでインストラクターの資格をとったり、台湾とタイでサイクリングガイドの資格をとられたそう。マーケットとなる国に行って、サービスレベルを高める努力をされ、そして、ヒーロー北海道という事業を立ち上げられました。

25人から600人のマーケットへ

 ニセコで冬の4か月はガイドをして、残り8ヶ月は何かしないと食べていけません。朝9時から15時まで6時間、7万円がプライベートガイドの売上になると言います。17年を経て、ニセコには600人のガイドが働けるマーケットができました。17年前にオーストラリアのインストラクターを誘致して始まったのが最初の事業だったそうです。25人しかいなかったガイドが、17年後に600グループに対応できるマーケットになりました。ガイドを1週間で担保できるようにして、レストランや宿泊、医療の仕事もどんどん増えていきました。そうした循環の中で土地の値段も上がっていったそうです。それはちょうど、日本ではスキーの人気が低くなっていた時期だったそうです。そのときにインバウンドがうまくハマっていったのですが、ガイドが価値あるものとして、国内でも認識されないといけないんじゃないかなという思いを持っていたそうです。

リピーターが好循環を生む

 北海道は食も大きな魅力ですし、観光は例えば富良野はラベンダー、ニセコ以外にもルスツリゾートやキロロスキー場などがあります。SNSでは、長野県の白馬、山形の蔵王、青森の八甲田など、日本のパウダースノー(JAPOW)を楽しもうというブランドイメージができています。それを魅力として、ハイエンドから若い方、子どもたちも日本の雪、さらさらした雪やホワイトスノーでクリスマスを迎えたいというようなニーズがあります。長期滞在化するお客様も増えていったそうです。1週間の滞在を3回繰り返すお客様もいるのだとか。ビジネスでも、スキー会議ができないか、家族を連れてきた後にビジネスパートナーや趣味の同好会の方を連れてくる、というようなお客様もいたということです。そして、そうした機会を活かすために、宿泊施設、会議室、レストランなどが必要になります。順序だてて、民間で運営されてきたのがニセコの状況です。

マーケットやニーズの変化に対応できるガイドが求められる

 リピーターの方が不動産投資をしていたり、1シーズンに3回来てくれることがニセコではよくあるそうです。中には、15年お付き合いのあるリピーターが一番長いお客様なんだとか。当時50代だった方が今は60代半ば、10歳だった子どもが25歳になっていると考えると、マーケットもニーズも変わってきます。そういったことに対応していくのがガイドの仕事だと高橋さんは考えているそう。17年経つと、宿泊、食の形態なども見合ったものを望まれます。

数世代続くお付き合い

 富裕層のお客様は、ライフスタイルを持っています。例えばファッション、食、スポーツなどです。贅沢をするという意味だけではなく、使う時には使い、抑えるときは抑える。それを楽しむために、年に何回も、毎年いらっしゃる。最初は男性グループで、次にファミリー、奥様、おじいちゃんおばあちゃんを連れて三世代となってくると、大きな別荘が欲しい、3 LDK から5 LDKが欲しいという状況になってくる。そういった方はスポーツの協会だったり、文化的な協会だったりの関係者にリーチできます。貯金するばかりではなく、資産を海外に持ちたいという方も多いそうです。スキーは団体ツアーのイメージがありますが、ハイエンドで、個人向けの旅行の方は、ショッピングや投資の意欲も高いです。そういった方が高橋さんたちのお客様になるのだそう。FIT(個人旅行)や、MICE(会議招へい)では50人から1500人のスキー会議、サイクリング会議になるところもあり、単価と数量がいっきに上がるのだそうです。ガイドコンシェルジュは主催となる方につないでいく、いろいろな役割をしていくことになります。そういった形で事業が大きくなっていたのだとか。

高級ホテルのオープンでガイドのレベルも向上

 リッツカールトン、パークハイアットがオープンしました。過去15年、個人投資家の口コミで宿泊の料金も5万~20万、1泊200万するような部屋もあります。ホスピタリティ、サービスに見合うように、ガイドのレベルも上がっているのだそうです。

「ガイド」はガイドだけでなく、「官民連携」そして「ローカル to ローカル」で

 高橋さんは、「ガイド」はガイドだけでなく、「官民連携」そして「ローカルtoローカル」で進めていく必要があるといいます。
 
 ニセコは倶知安町と合わさっている行政ですが、2つのスキー場があります。ニセコ町が5000人、倶知安町が1万5000人で合計2万人のなかに、4000人の季節雇用の外国人、常時住んでいる外国人が1500人。総勢5500人外国人が暮らし働いているのだとか。そして、30代40代の人口が増加、土地の価格上昇しました。5スターのプロジェクトが15年後にあり、G20の観光大臣の会議がパークハイアットで行われます。外資系のホテルアマンリゾートやシャングリラもこれからできていくことになっています。

 withコロナの時代、プロのガイドが稼げること、観光概念、プロを育成するといったことに対する認知が厳しい状況だからこそ、互いにアイデアを共有する必要があります。まちづくり、ビジョンづくりを「官民連携」でやること。さらにリスクマネジメントやガイド育成、共通する事業を、「ローカル to ローカル」で進めていくこと。それらが、ラグジュアリーマーケットやハイエンドにリーチする自信や安心につながるといいます。
 また、お客様と接点のあるガイドが持っている情報を、ガイドだけでなく、旅行会社、地域事業者に共有すること。そうすることによって、いろんな知見を入れて行きながら、少しでも課題を解決していくことが重要だと考えています。

 スポーツツーリズムやアドベンチャーツーリズムという言葉で行政も一緒に動いているものとして、2021年9月に札幌でATWS(アドベンチャーツーリズムワールドサミット)が予定されています。60カ国、600~800のエージェントが参加予定です。そういった接点に向けてどんな努力ができるのか、関係人口、関係値、継続、共有というサイクルをどんどん回していきたいと考えていらっしゃるそうです。

どの地域でも「ガイド」で稼げる

 高橋さんは、ニセコ地域を拠点に活動されていますが、ニセコ以外の他の地域でもガイドで稼げる可能性は大いにあるといいます。
 ガイドで稼ぐには、大きく2つの点が重要です。1つ目は、「事業としてしっかり立ち上げること」。それによって、視野、世界、情報量、ネットワークが変わってきます。
 2つ目は、「商品の売り方、パッケージの仕方を工夫すること」ターゲットをみて、商品の値段設定だけではなく、パッケージの作り方の工夫も必要です。そのために、DMOは、セールスマーケティングの専門的な知見とオペレーション現場でのプロフェッショナリズム、両方を勉強していかなければならないといいます。最初は思うように成果が出ないかもしれませんが、ネバーギブアップの理念でやり続けることが大切です。

ガイドが儲かる仕組みを作る

 ガイドひとりを雇うのに7万円かかるとすると、5日間で35万円になります。5人のお客様でも7万円なので、割ると1人1万4000円になります。例えば午前のラフティングツアーで6000円程度、1dayのサイクリングツアーで1万5000円程度なので、スキーガイド1日7万円は高くないと考えられます。高橋さんは、これを「売り方」だと考えているそうです。日本のプライベートスキースクールは3万5000円から4万円ぐらいで出ていますが、海外はスキースクールはもっと高いのだとか。マーケットリサーチをして、商品の値段だけではなくパッケージの作り方を変えると効果的だと言います。

 例えば、対象の人数が5人でも1人でも同料金。1名増えたらプラス5000円という細かい取り方もあります。ここで重要なのは、ターゲットです。ヒーローでは、ガイドにきちんと給料を払うために、ターゲットをよく見定めます。7万円のうち、ガイドの取り分は2万円。25日働いたら、月50万円の給与が可能になります。中にはチップを払うお客様もいますが、チップは会社の取り分にせず、ガイドにバックするようにしているそうです。海外では、チップで給料が倍になることもあるのだとか。高橋さんはこれをボーナスだと考えています。日本では、もらえないこともありますが、そこを励みにして頑張っていこうという文化がヨーロッパや北米にはあるのだそうです。

売り方とパッケージの仕方が重要

 高橋さんは、スキー1日1万2000円から1万5000円の単価は高くないと言います。ヒーローでは、グループレッスンで8000円から1万円程度で売っているのだそう。重要なのは、売り方、売るターゲットです。インバウンドは7万円で買っていただけるマーケットです。一方、日本国内をターゲットにする場合は、一人あたりの単価で出すといいと言います。

 ニセコでは、25人のインストラクターが、今や600人のマーケットになりました。1日4200万円、100日で42億のガイドビジネスが動いているということです。17年前はガイドは25人で、単価は5万円程度、1日125万円で控えめにつけていたそうですが、現在は100日で1億2500万円だそうです。ガイドビジネスを大きくしていくには、5年、10年、15年コツコツやっていくことが重要です。そこで、売り方、パッケージの仕方は大切になってくると言います。セールスマーケティングの専門的な知見と、現場のオペレーションのプロフェッショナリズムは全く違うもので、両方とも努力する必要があります。ガイド料金を設定し、それだけ作っても売れません。適正なマーケティングをする戦略を、DMC、DMOがしっかり両方勉強していくことが重要です。プロのガイドはそのノウハウも持っていると言います。

優秀なガイド、リピートされるガイドになるためには、積み重ねが大事

 優秀なガイドになるためには、ガイド会社や優秀なガイドのところで「修行をすること」がとても重要。ただ、プロのガイドは、ドアをノックするだけでは教えてくれないので、そう簡単なことではありません。プロの職人技なので、リスペクトすること、自分なりに目標と戦略を立てることが重要だといいます。また、修行を重ねることは、視野を広げるという意味でも必要です。
 まずは修行を重ね、自分なりにプランを立てて、実際にアクションをしていく、そういう流れが重要になります。

 また、お客様は、明確な目的を持ってガイドに料金をお支払いしているので、現場では、「お客様が求めていることを担保して、時間内に演出する」ことが重要です。動画や写真の撮影、それらをきちんとやってくれるガイドは、阿吽の呼吸、言わなくてもわかる関係値になるといいます。さらに、ガイドは事前のコミュニケーションでほぼ決まるといわれるほど、「事前の準備」が重要だといいます。事前にしっかりとお客様の声を聞きつつ、足りない部分は、自分で情報を集める。カメラワークの勉強をするなど、必要に応じて勉強をする。ガイド後は、口頭でしっかりとお客様の意見を聞いて、ダメ出しもしてもらう。そういったことを放置せず、やり続けていきましょう。

まとめ

今回の講演を受けて、

  • アドベンチャー・ツーリズムの促進が求められる今の時代、地域をコーディネートするガイドの需要が高まっている。
  • ガイドで稼ぐには、常に変化するマーケットやニーズに柔軟に対応していくことが重要
  • ガイドビジネスは「官民連携」「ローカルtoローカル」で展開していくことが重要
  • 地域に関係なく、努力を積み重ねれば、ガイドでしっかりと稼げる

 といった点を再認識しました。

 最後に、この大変な時代に、プログラム造成や地域の受け入れ体制強化にご尽力されている多くの方々に向けて、高橋さんからメッセージをいただきました。
 「コロナ禍であっても、雪を愛する人は前向きに情報をみています。情報発信をしっかり行い、コロナを機にさらにいいサービスやガイドラインを作り、チーム一体となって安全に受け入れられる地域にするためにがんばっていきたいなと思います。」

 新型コロナウイルス感染拡大によって、インバウンド事業は非常に大きな影響を受け、皆様大変ご苦労されていることかと存じます。厳しい今こそが、afterコロナに向けた貴重な「準備期間」であると前向きに捉え、コロナ後、さらにはもっと先の未来に残るような、持続可能な観光地づくりに向けて、共に努力していきましょう。

 

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