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「甘太郎」や「北海道」、日本人には馴染みのある居酒屋の名前である。
「居酒屋」は日本の文化として浸透し、海外から訪れる観光客は本場日本での居酒屋体験を楽しみの一つとしている。海外にも多くの日本風居酒屋が進出するほど話題である。近年徐々に外国人観光客のファンを増やし、人気店となっているのが、「甘太郎」や「北海道」である。
運営するのは、居酒屋大手のコロワイド。
数多くある居酒屋の中で、どう人気を獲得しているのか。
今回はその戦略に迫る。
【ポイントは4つ!】
- 専門部署の立ち上げ
- 海外・国内の旅行会社への営業
- 外国人向けメニューの開発
- 現場の声を逃さない柔軟性
昨対比151%!年々増加する外国人 人気

コロワイドでは、訪日外国人の誘客に力を入れており、様々な工夫を凝らしている。
その一つが専門部署の設立。
インバウンド課という新たな課を設置し、専任の担当者を置いた。
これまではツアーガイドなどのつながり等を通じてツアー客を取り込んできたが、外国人ツアー客を一気に取り込むように方向転換し、訪日客を多く抱えている旅行会社などへの営業を強化している。
また、ツアー客が宿泊するホテルや観光地に近い都内、関西地区に大型店を持つ強みを生かした受け入れを行っている。
ツアーガイドと海外旅行会社の両方からアタックする戦略が、訪日観光客増加の源泉となっていることは間違いない。
今後はこのノウハウを生かし、他エリアの店舗にも広げていく戦略だ。
飲食店の鍵、メニューにおける工夫

コロワイドが行っている戦略は、もちろんこれだけではない。
海外旅行の際、「現地の人が食べているものを同じように食べたい、同じような雰囲気を体験したい」と思う旅行客は多いだろう。おそらく訪日外国人もこの思いは同じであり、だからこそ居酒屋は人気が出てきた。
しかし一方で、「これは食べられない」といった国ごとの文化や宗教もある。
そのような顧客も逃さないのが、コロワイドが人気を集めている理由の一つだ。
日本人に提供しているメニューとは別に、これら訪日客の好みに合わせたメニューも開発している。
国別の需要をツアーガイドや観光客から聞き出しながら、インバウンド部署がその情報を、社内の知識・ノウハウとしてグループ店舗に伝承している。中でも、甘太郎の焼肉・しゃぶしゃぶの食べ放題や、北海道の海鮮鍋などは多くの外国人が好んでおり、価格設定も含めその需要を確実に取り込んでいる。
多様な要望も逃さない、現場の声を拾った柔軟な対応

来店の中心は中国や台湾。そのため注文用のタッチパネルは英語と中国語対応。
さらに、増えつつあるインドネシアなどの東南アジアからの来店客に向けて、イスラム教徒対応の豚肉を使わない料理の提供対応を進めている。
現場から拾い上げている声はこれらに限らない。
「東南アジアの方は食事の際にスプーンとフォークを使用する」など接客現場の方でなければわからない声や、メニューのアレンジ要望などにも柔軟に対応する。
「様々な要望に柔軟に対応してもらえる」という安心感が、ツアーガイドや海外旅行会社からの信頼となり、リピートに繋がっている。
訪日外国人を取り込むメリットと今後の展望
外国人ツアー客は300人前後と、非常に大きい団体もある。
これには入念な事前準備が必要であるが、これだけ多くの人数に来店してもらうのは、旅行会社への営業活動がなければ難しい。各国のツアー会社が引率していることを考えると、海外の旅行会社への営業は非常に重要であることがわかる。
また、これらの団体客は、通常のピーク時よりも早く来店し、滞在時間も1時間程度と短い。これは、店舗にとって運営効率が上がり非常に大きなメリットである。
4年後に迫る東京オリンピックに向けて、日本への関心は年々高まっており、これからも訪日外国人数は増えることが予想される。今後はより多くの店舗で同様の体制を整備し、今年の外国人来店客の数を昨年の16万人から20万人に伸ばしたいと考えている。
単純に日本人に提供する食事と同じではなく、細かな配慮という付加価値を付け加えた「日本の食事」の提供。これこそが「おもてなし」精神であり、リピーターや日本のファンを増加する大きな一因になるのではないだろうか。
多くの飲食店がインバウンドに乗り出す中、他店舗との差別化をいかに行っていくか、いかにブランディングしていくかの戦略が求められることになりそうである。
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