目次
世界各国のインバウンド状況を見る重要性
前年比20%前後の伸び率で訪日外国人数が伸長している日本ですが、世界の観光マーケットではどのような位置づけなのでしょうか?
自国の統計情報だけでなく、他国のデータと比較することで日本の強みや今後の課題が見えてきます。
今回は7月に発表された国連世界観光機関(UNWTO)の世界観光統計データを元に、世界目線で考察を行っていきます。
なお上位に入るトルコのデータが2016年版では公開されていないため、今回ご紹介するランキングに入っていないことを予めご了承下さい。
【参考】2017年データにアップデートした最新ランキング
2016年外国に旅行した人は12.4億人
まずは全体像を把握していきましょう。1990年には4億人程度だった外国旅行者数(国際観光到着数)は、四半世紀後の2016年には約3倍の12.4億人まで成長!
世界人口が約74億人ですので、単純計算すると7人にひとりが外国に出かけていることになります。

外国人観光客数が成長しているエリアはどこか?
次に内訳を見てみましょう。
先進国/新興国別
先進国・新興国という2つの切り口で見ると、新興国の比率が高まっています。ただ2010年以降は先進国が僅かですが盛り返して来ている状況です。

エリア別
さらに大陸レベルまで細分化すると、下記の通り。特に日本が属するアジア・太平洋(オセアニア含む)エリアの伸びが顕著です。全体に占める割合も25%になりました。

国別外国人観光客数ランキング
さらに国レベルまで細分化し、上位20位までランキング化したものを作成しました。※毎年10位以内に入ってくるトルコは2016年数値未確定のため除外
2016 国別国際観光到着数ランキング表(単位:万人)
2,404万人だった我が国日本は世界大15位でした。(トルコ除く)
3,000万人を突破すればトップ10入りも夢ではありません。
順位 | 国名 | 2015 | 2016 | 16/15伸び率 | 国民人口 (2016) |
対国民人口比 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | フランス | 8,445 | 8,260 | -2.2% | 6,461 | 1.28 |
2 | アメリカ | 7,747 | 7,561 | -2.4% | 32,330 | 0.23 |
3 | スペイン | 6,852 | 7,556 | 10.3% | 4,632 | 1.63 |
4 | 中国 | 5,689 | 5,927 | 4.2% | 138,271 | 0.04 |
5 | イタリア | 5,073 | 5,237 | 3.2% | 6,067 | 0.86 |
6 | イギリス | 3,444 | 3,581 | 4.0% | 6,557 | 0.55 |
7 | ドイツ | 3,497 | 3,558 | 1.7% | 8,273 | 0.43 |
8 | メキシコ | 3,209 | 3,496 | 8.9% | 12,227 | 0.29 |
9 | タイ | 2,992 | 3,259 | 8.9% | 6,898 | 0.47 |
10 | オーストリア | 2,673 | 2,812 | 5.2% | 869 | 3.24 |
11 | マレーシア | 2,572 | 2,676 | 4.0% | 3,166 | 0.85 |
12 | 香港 | 2,669 | 2,655 | -0.5% | 737 | 3.60 |
13 | ギリシャ | 2,360 | 2,480 | 5.1% | 1,085 | 2.29 |
14 | ロシア | 2,685 | 2,455 | -8.6% | 14,344 | 0.17 |
15 | 日本 | 1,974 | 2,404 | 21.8% | 12,690 | 0.19 |
16 | カナダ | 1,798 | 1,997 | 11.1% | 3,623 | 0.55 |
17 | サウジアラビア | 1,799 | 1,805 | 0.3% | 3,174 | 0.57 |
18 | ポーランド | 1,673 | 1,746 | 4.4% | 3,797 | 0.46 |
19 | 韓国 | 1,323 | 1,724 | 30.3% | 5,125 | 0.34 |
20 | オランダ | 1,501 | 1,583 | 5.5% | 1,703 | 0.93 |
前年比伸び率で分析
絶対数だけでなく伸び率も踏まえてわかりやすくグラグ化したものが下記グラフです。各国が数%台の伸び率であるのに対し、日本は +21.8% とかなり高い水準。世界的に見ても日本のインバウンド成長スピードは早いことが分かります。
また、中国との関係が ミサイル迎撃システム(THAAD=サード)で冷え込んでしまった韓国も、フタを開けてみれば前年比 +30.3% と大成長していました。
対国民人口比率で分析
次に当該国の国民人口とのバランスを分析したものが下記グラフです。(国際観光到着数/国民人口)
単純に考えてこの値が低いほど今後の受け入れポテンシャルが高いわけですが、我が国日本は0.19とかなり低い水準。国民人口の2割弱しか外国人観光客を受け入れられていません。
先進国であるフランスやスペインは1を越えていますし、ハブ的な役割を果たしているオーストリア・香港に至っては3を越えています。以上を鑑みるとまだまだ日本のポテンシャルは高いことがお分かり頂けると思います。

ちなみに中国はわずか0.04!。国土も広い上に人口もケタ違いに多いため、こちらも大きなポテンシャルを有しています。観光市場における東アジアの成長に大きく貢献するでしょう。
観光収入が成長しているエリアはどこか?
観光客数だけでなく、観光収入のランキングも分析してみましょう。
2016国別 国際観光収入ランキング表(単位:100万米ドル)
我が国日本はドルベースで11位に。1ドル=100円と単純計算すると、年間3兆円もの観光収入がもたらされています。このペースで成長が続いていけば、来年はトップ10入り間違いありません。
順位 | 国名 | 2015 | 2016 | 16/15伸び率 | 国際観光客 到着数 |
1人あたりの 観光支出(ドル) |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | アメリカ | 205,418 | 205,940 | 0.3% | 7,561 | 2,724 |
2 | スペイン | 56,468 | 60,346 | 6.9% | 7,556 | 799 |
3 | タイ | 44,922 | 49,871 | 11.0% | 3,259 | 1,530 |
4 | 中国 | 44,969 | 44,432 | -1.2% | 5,927 | 750 |
5 | フランス | 44,858 | 42,481 | -5.3% | 8,260 | 514 |
6 | イタリア | 39,449 | 40,246 | 2.0% | 5,237 | 768 |
7 | イギリス | 45,462 | 39,615 | -12.9% | 3,581 | 1,106 |
8 | ドイツ | 36,908 | 37,433 | 1.4% | 3,558 | 1,052 |
9 | 香港 | 36,150 | 32,860 | -9.1% | 2,655 | 1,238 |
10 | オーストラリア | 28,872 | 32,423 | 12.3% | 826 | 3,924 |
11 | 日本 | 24,983 | 30,678 | 22.8% | 2,404 | 1,276 |
12 | マカオ | 30,969 | 29,881 | -3.5% | 1,570 | 1,903 |
13 | インド | 21,013 | 22,427 | 6.7% | 1,457 | 1,539 |
14 | メキシコ | 17,734 | 19,571 | 10.4% | 3,496 | 560 |
15 | アラブ首長国連邦 | 17,481 | 19,496 | 11.5% | 1,491 | 1,308 |
16 | オーストリア | 18,218 | 19,300 | 5.9% | 2,812 | 686 |
17 | トルコ | 26,616 | 18,743 | -29.6% | – | – |
18 | シンガポール | 16,563 | 18,386 | 11.0% | 1,291 | 1,424 |
19 | カナダ | 16,558 | 18,213 | 10.0% | 1,997 | 912 |
20 | マレーシア | 17,584 | 18,074 | 2.8% | 2,676 | 675 |
前年比伸び率で分析
前年比伸び率で見てみると、日本が+22.8% と他を圧倒して高水準。他国と比較すると頭一つ抜けています。
観光収入のデータは確定しているトルコは約3割の大減少。イスラム国台頭による治安悪化が影響していると考えられます。

1人あたりの観光支出で分析
1人あたりの観光支出(国際観光収入/国際観光到着数)という切り口で見てみると面白い傾向が。
オーストラリアが約4,000ドルと他国を圧倒して高単価。続いてアメリカが2,700ドル。それ以外は2,000ドル以下です。
特に世界最大の外国人観光客数を誇るフランスが、1人あたりの観光支出ベースで見ると500ドルにすぎないことは注目です。

一方我が国日本は1,276ドルと中堅ゾーン。ただ、同じアジア地域で物価の安いタイよりも単価が低いことを考えると、まだまだ改善の余地はありそうです。
まとめ
世界の観光マーケット視点で日本のインバウンドを眺めてみましたが、他国と比べても遜色のない水準に近づきつつあることが分かりました。
ただ国民人口に対してまだ2割弱しか受け入れられていないことや、1人あたりの観光支出が物価の安いタイよりも低いことを考えると、まだまだ大きな伸びしろがあります。その開拓のお手伝いを進めるために、弊社も東奔西走します!
今日の一句
“来年は 10位に入る 勢いだ”
【2018-10-19追記】2017年版最新データを更新しました
最新データを元に更新!果たして日本はベスト10入りしているのでしょうか??
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