アドベンチャー・トラベル・ワールド・サミットを通じて見えた、アドベンチャー・トラベルのこれから

こんにちは。地域ブランディング研究所の佐藤です。

9月20日(月)から24日(金)の5日間、アドベンチャーツーリズムに関する世界的な商談会・イベントである「アドベンチャー・トラベル・ワールド・サミット(以下ATWS)」が、北海道にてオンライン形式で開催されました。

主催のアドベンチャー・トラベル・トレード・アソシエーション(ATTA)は、世界各国・地域のメディアや政府観光局、観光協会、DMOなど約100か国から1300会員が参加する世界最大のアドベンチャー・ツーリズムに関する組織団体で、地域ブランディング研究所も会員として参加しています。

今回のATWSのテーマとして掲げられたのが「共生」。これは、2つの要素が調和し、お互いに利益をもたらすことを意味します。北海道の先住民族であるアイヌの人々は、何千年もの間、自然を大切にし、尊重される場所として故郷を守り、共生を体現してきました。そんな北海道を舞台に、今後、旅行開発においてアドベンチャー・トラベルが果たすべき役割について、商談会やセミナーを通じて、欧米豪を中心とした世界各国の関係者らと議論しました。

今回がアジアでの初開催ということもあり、アドベンチャー・トラベルに関する商品が日本において注目されることが増えました。元々は、富裕層が好む旅行形態であることから、経済的効果が期待されていますが、それ以上に、旅行スタイルが自然の中での非接触型で、少人数のアクティビティであることが多く、アフターコロナの旅行スタイルとしても注目を集めています。

一方で、欧米豪市場ではすでに市民権を得ているアドベンチャー・トラベルに関するツアーは、日本ではまだまだ認知度が低いのも事実です。その意味で、今回のイベントは欧米豪からの誘客において重要なアドベンチャー・トラベルを改めて理解を深める良い機会となりました。

そこで今回は、ATWSを通じて再認識した、アドベンチャー・トラベルを日本で実現するにあたって必要なことやこれからの観光の変化について紹介します。

アドベンチャー・トラベルには「文化交流」も重要

ATWSと聞いて、まさに冒険的な旅行を扱う会社が参加するイベントだと思う方が多いかもしれません。しかし、主催のアドベンチャートラベル協会が定義している通り、アドベンチャー・トラベルは「自然とのふれあい」「フィジカルなアクティビティ」と合わせて、「文化交流」も重要な要素です。

実際に、今回参加していたエージェントが扱っている訪日観光商品には、その地域に根付く文化や社会を体験したり、熊野古道や中山道などの古道の歴史を見聞したりと、文化的要素の強い商品が数多く展開されています。

欧米豪の旅行者は“日本的な要素”を日本に求める

アウトドア系の旅行の本場、アメリカ・カナダ・オーストラリアは、国内に壮大な自然があり、国内外のアウトドア好きの旅行者から人気を誇っています。そのような方々に日本を訪れてもらうためには、同じ土俵に上がるのではなく、「日本でしか体験できないこと」に注力することでより一層、日本でのアドベンチャー・トラベルに価値が出てくるはずです。欧米豪からの訪日観光客の訪問理由の一つとして、「日本の文化社会の体験」が挙がるように、商品造成において“日本的な要素“を強調することは必須です。

ストーリーテラーとしてのガイドの役割

異なる文化圏を旅行先として選ぶ欧米豪からの観光客の多くは、ある程度高学歴の方が多く、アドベンチャー・トラベルに限らず、通常のツアーにおいても、政治・経済・歴史など社会全般に対する知的好奇心が旺盛な方が多いです。そのため、そのような観光客をガイドする人に求められることは多く、豊富な知識が必要とされます。例えば、先にあげた熊野古道や中山道で言うと、建物の歴史や、江戸時代に中山道がどのような立ち位置の道で、その地域に及ぼした貢献度はどうだったのか、など単なる観光ガイド以上の情報を求められ、言わばストーリーテラーとしての役割が必要となります。一方、サービス業に対する認識は日本と異なり、彼らは受けたサービスに正当な対価を払います。その意味でも、質の高いガイドの育成に力を注ぐ事は、アドベンチャー・トラベルを拡大していく上でも極めて大切です。

物見遊山的観光から交流・滞在型観光へ

現在、観光庁を中心に、旅行者の暮らす地域(発地)の観光業者がつくり、特定地域の魅力を押し出さない「発地型観光」から、旅行者の訪れる観光地(着地)が観光商品をつくる「着地型観光」への転換が叫ばれています。海外に目を向けても、そのような訪問先の観光業者が販売造成した商品が増えつつあります。これは、旅行者の間でも、着地側の目線で作られた、より本物嗜好の商品を好む傾向が高まっていること、及び、より「レスポンシブルツーリズム」(観光にあたり、観光客が責任を持つことで、より良い観光地を作っていこうとする考え方)に近い旅行を好む人が増えていることの反映であると考えられます。

レスポンシブルツーリズム ~旅行会社の社会的貢献~

SDGsの1要素である「社会的貢献」に関して、今回ATWSに参加したほぼ全ての欧米豪の会社では、彼らの方針及び具体的なプロジェクトをホームページ内で紹介しています。これは、企業の社会的貢献が当たり前だと考えている風土と、大いに関係があります。特に、アドベンチャー・トラベルを扱う会社は、遠い地域への旅行(欧州からすると米州やアジアへ長距離フライトが必要=環境面ではマイナス)を扱うことが多く、旅行先も自然豊かな場所だと開発の仕方によってはダメージを与えかねないので、いかに細心の注意を払って開発しているか、及び自分たちの旅行商品がいかに地元の発展に役に立っているかを、アクセスした人々が分かりやすいように明記しています。ちなみに、次回のATWSのホスト国であるスイスでは、スイスとサステイナビリティを掛け合わせた「Swisstainable(スイステナブル)」をモットーに、国家単位で更なる持続可能な旅行開発を目指しています。

最後に

アドベンチャー・トラベルの旅行者は富裕層が多く、かつ長期滞在者が多いため、経済的効果が大きい一方、今まで訪れる人が多くなかった地域への訪問があるため、やり方によっては自然環境へのネガティブな影響が出てくるのも事実です。スイスのケースを持ち出すまでもなく、サステイナビリティ(持続可能性)を意識した商品造成は必須である、ということを再認識しました。サステイナビリティは日本ではまだまだ認知度が低いですが、欧米ではすでに市民権を得ている分野であり、自然・社会環境を意識した開発を行うのは当然であるという認識が一般的なので、このギャップを早急に埋めていきたいです。

また、どのようなスタイルの旅行であれ、異なる文化圏の人々が日本への旅行に期待することは、“日本的な要素”です。その意味では、まず私たち自身がもっと日本を知ることが必要であり、知ったことを正しく伝えられる人材の育成が急務になります。さらに、今まで旅行先として見られなかった地域も、アドベンチャー・トラベルの訪問先として見なされることになるので、ガイドの育成という観点からも、旅行先の地域の理解と協力、そして、彼らがイニシアティブを取る旅行造成の形がこれからあるべき形でしょう。

今回、アドベンチャー・トラベルに関するサミットとしては、初めてオンラインで行われたこともあり、商談会のやりとりで多少トラブルが生じたこと、また、準備していた現地でのツアーが全てオンラインになってしまったこともあり、少し消化不良だったという声も参加者から聴かれました。それを反映してか、2年後の2023年のサミットを、もう一度北海道で行うことが今回の開催中に内定しました。今度こそは、世界中の観光業界の方々に、北海道及び日本の自然の魅力を十分に味わってもらえればと思います。

また、地域ブランディング研究所も、ATTAの会員であり、世界各国のアドベンチャー・トラベルに関するメディアや政府観光局、観光協会、DMOなどとのネットワークがありますので、ぜひ積極的にご活用ください。

 

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ABOUTこの記事をかいた人

千葉県千葉市出身、明治大学法学部卒。日本の旅行会社に2年勤務した後、英国へ移住し25年居住。その間、ロンドン大学院にて途上国における環境及び旅行開発論にて修士号授与。ロンドンにて21年旅行会社勤務、そのうち15年間は訪日旅行に携わり、英国における訪日旅行の黎明期から興隆期を目撃。世界49カ国訪問。海外エージェント・メディアとのコンタクト多数もっており、サッカー日本代表欧州遠征やラグビーW杯イングランドの訪日パケージに携わるなど、スポーツホスピタリティ関連や、MICEや商談会催行、FIT商品造成にも明るい。